携帯電話の時計が一斉に狂った! 原因は北朝鮮のGPS妨害か?

3月4日午後から6日にかけて、韓国首都圏の一部地域で携帯電話の時計が突然14時間も遅れたり、直ったと思ったらまた8時間遅くなったり、時計の時間がおかしくなった。

 携帯電話の時計の時間は、衛星を使うので、どの時計よりも正確と信じられている。携帯電話を時計代わりにし、携帯電話で毎朝アラームをセットしている人がほとんどだ。金曜の夜から週末の間だったので何かがおかしいというだけで大きな問題にはならなかったが、もしこのような問題が平日に起きていたら、遅刻したり時間を間違えたりして一騒動起きていたかもしれない。


 通信事業者は携帯電話の時計が狂ったということに気付かず、コールセンターへの問い合わせが届いてから知ったという。放送通信委員会が原因究明に乗り出したところ、衛星から携帯電話に情報を伝えることを妨害する「GPS妨害電波」が発生していたことが分かった。妨害電波によって北朝鮮から近い仁川、ソウル北西地域、京畿道北部にある145カ所の基地局が影響を受けた。時計だけでなく音声通話に雑音が入りよく聞こえなくなる地域もあった。


 驚いたことにその妨害電波を発信した位置を追跡したところ、北朝鮮のケソン周辺地域だった。砲撃事件以降、北朝鮮がまた韓国を攻撃しようと準備しているのではないかという不安が国中に広がった。ちょうど2月28日から3月10日まで北朝鮮が反対した米軍との連合訓練が実施されているだけに、攻撃の前兆ではないかと思われた。韓国軍の計測器や一部の装備も障害が発生したというニュースがあったからだ。昨年8月にも米軍との連合訓練の間に、北朝鮮からGPS妨害電波が発信されたことがある。


 しかしGPS妨害電波は継続的ではなく途切れ途切れだったことや、電波がそれほど強くなかったことから、北朝鮮が海外から仕入れたGPS電波妨害装置をテストしていただけで、韓国に影響を与えようという意図はなかったのかもしれないと分析された。また韓国軍が「これぐらいのGPS妨害電波は十分制御できる範囲内なので問題ない」と話したというニュースもあったので安心した。


 毎日使っている携帯電話の時計が狂ってしまうなんて想像もしていなかったことなのに、それが北朝鮮からの電波妨害によって起きただなんて。分断国家といっても北朝鮮という存在をあまり意識することなく生きている中、一般の人にまでこういう影響が出るとはちょっと怖い。


 北朝鮮問題はこれで終わりではない。同じく3月4日にはDDoS攻撃(標的のコンピューターに大量のパケットを送りつけたりして障害を起こす)もあった。政府機関、国防部、統一部、国家情報院、金融機関、ポータルサイトなどが対象になった。2009年7月7日に莫大な被害が発生した「77DDoS大乱」のときも北朝鮮が背後にいるのではないかと疑われた。民間企業に対するDDOS攻撃は日常茶飯事だが、政府機関に対する攻撃はこの「77DDoS大乱」以来初めてということも北朝鮮背後説を煽っている。北朝鮮の逓信省が中国内で使っているIPアドレスが攻撃に使われたといったニュースもあったものの、正式には北朝鮮の仕業とは断定できないとされている。


 今回のDDoS攻撃によって、これといった被害はない。何度も攻撃された経験から万全を期していたからだ。P2Pサイトからウイルスをダウンロードしてしまった1万3000台のPCがゾンビーPCとして攻撃に使われた(2009年当時は11万台以上)。政府が早期に「サイバー危機注意報」を発令し、ポータルサイトらが一斉に注意を呼びかけたことで、一般のユーザーも無料のアンチウイルスソフトをインストールして自分のパソコンがゾンビーPCになるのを防いだ。


 面白いのは北朝鮮の砲撃を非難し、金正日パロディ画像などを投稿できる「挑発掲示板」を開設した「DCインサイド」(よく日本の2ちゃんねると比べられるコミュニティサイト)もDDoS攻撃の対象になったことである。民間のコミュニティサイトが国防部や国家情報院と一緒に攻撃されたのはやはり北朝鮮を非難したから? これじゃ犯人が誰なのか自分で明かしているようなものだよね。




趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年3月10日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110309/1030691/

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