旅行需要旺盛な韓国 ドラマ俳優らによるロケ地ツアーで呼び込みも

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新型コロナウイルスのワクチン接種が着々と進む韓国では、規制の緩和や経済の回復に伴い、コロナ終息後を見据えた動きが活発化しているという。ソウル在住のKDDI総合研究所特別研究員・趙章恩さんがリポートする。

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 コロナのワクチン接種が進む韓国では、足元では感染者の増加が見られるものの、人々の警戒感の薄れとともに、街の活気も少しずつ戻ってきている印象だ。現時点でのワクチン接種率は、総人口に対して3割(1次新規接種者)程度にとどまるが、医療関係者や高齢者だけでなく、アプリから申し込めば「ノーショー(当日キャンセル)」分を誰でも接種できる仕組みになっており、今後も着々と接種が進むと見られる。一時大きく暴落した株価もその後は上昇を続け、旅行代理店や航空会社の株価も回復、2020年1月のコロナ前の水準を上回っている。

 経済の回復とともに、早くも海外旅行再開への期待も高まっている。韓国政府はこれまで、ワクチンを接種していても入国時に2週間の厳格な隔離期間を設けていたが、7月からは海外でワクチン接種を完了した人が韓国内の投資や技術協力のために入国する際の隔離を免除することを発表。韓国入国前と後で4回実施していたPCR検査も入国72時間前に1回、入国1週間後1回に緩和し、防疫アプリで14日間移動や動線を確認するなどして対応するという。

 また、韓国中央災難安全対策本部は6月8日、オーストラリアとニュージーランドの間で行っているような、相互の入国者の隔離措置を免除する「トラベル・バブル」制度をワクチン接種が進んでいる他の国と結ぶことも発表した。ワクチン接種を完了した人に限り、早ければこの7月から仁川空港発の海外旅行を許可する方針で、既に6月29日にはサイパンと合意。世界的に感染力の強いデルタ株の変異ウイルスが広がるなかでも、ワクチンの接種が進むにつれ、韓国内では「海外旅行が出来る日も近いのでは」と期待する人々の声も多く聞かれた。

 特に、韓国の若者の海外旅行需要は旺盛だ。フランス観光庁が5月、韓国人8129人(うち7割は20~30代)を対象に行った調査によると、海外渡航制限解除後1~4か月以内に海外旅行に出かけたいと答えた人は29%にのぼり、6か月以内も28%、1年以内でも24%と8割以上の人が海外旅行に前向きだった。「コロナ終息後に最も行きたい国」ではヨーロッパが68%と圧倒的に多く、日本、東南アジアの人気は低かった。若いうちにできるだけ遠い国に行ってみたいという願望が反映された結果なのかもしれない。

 一方、50~60代の韓国人600人を対象にしたインパクトピープルスの調査(2021年3月)では、「コロナ終息後に最も行きたい国」1位は日本(11.5%)で、「過去に旅行した最も良い国」でも日本が1位(31.8%)となった。「距離が近く移動の負担が軽い」、「近いのに韓国とは異なる文化を体験できる」ことが主な理由だ。

 韓国のオンライン旅行代理店インターパークが、海外渡航制限解除後1年以内に使用可能な日付未指定の往復航空券を販売したところ、約1か月で1万2000人が購入。閑散期の割安価格でいつでも好きな時に利用できることが人気を集め、購入者のほとんどが1人2枚以上購入したという。最も売れたのはグアム、ベトナムのダナン、札幌行きで、飛行時間が短く、都会よりリゾート、家族で楽しめる地域が好まれているようだ。

韓国ドラマ出演俳優らによるオンラインツアーも

 日韓の政府や自治体などが行っている、観光客誘致のための活動も活発だ。日本政府観光局の韓国語公式YouTubeチャンネル「J Route」が今年1月に公開した、日本の観光地を紹介した動画は200万以上の再生回数を達成。長崎県や愛媛県、鹿児島県、青森県など韓国語の公式SNSを運営する自治体も、定期的にフォロワーに特産品をプレゼントするイベントを開催し、地域観光情報を提供し続けている。

 韓国観光公社も済州観光公社と協力し、「インセンコリア ぬいぐるみ旅in JEJU」と題した面白いイベントを実施。大事にしているぬいぐるみを日本から済州島に送り、自分の代わりに旅をさせるという企画で、済州島の空港到着から始まりあちこちの名所でぬいぐるみの集合写真をSNSに掲載した。ユニークな企画で、日頃から愛着のある自分のぬいぐるみが旅する様子が何とも可愛く話題を呼び、筆者も実際に目にして、ぬいぐるみ達の観光コースをそっくりそのまま廻りたくなった。

 さまざまな取り組みの中でも、特に注目度が高いのが韓国ドラマにフォーカスした企画だ。韓国観光公社は、日本で大ヒットしたドラマ『愛の不時着』、『梨泰院クラス』、『サイコだけど大丈夫』の俳優らによるオンラインツアー「K-DRAMA WEEK」を開催。出演者が撮影秘話を語りつつ、自らロケ地や韓国の観光地を案内するという韓国ドラマファンには堪らない企画で反響を呼んだ。

 ソウル市も、ホームページに韓国の大人気ドラマ『ヴィンチェンツォ』のロケ地の行き方や楽しみ方をたっぷり紹介している。劇中の主な舞台となった建物「クムガプラザ」や、主人公・ヴィンチェンツォがソウル中心を東西に流れる川「漢江」を見下ろしながら悩むシーンで登場する「セッカン生態公園文化橋」など、こちらもファン必見の内容だ。コロナ終息後に向けて、今からこうした取り組みをチェックしてみてはどうだろうか。

【趙章恩】
ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。

NEWSポストセブン》

2021. 7.

-Original column

https://www.news-postseven.com/archives/20210706_1673601.html?DETAIL

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