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地上波のソウル放送(SBS)が7月4日、日本のドラマ「深夜食堂」の韓国リメイク版第1話を放映した。同時間帯で視聴率1位を獲得し好調な滑り出しとなった。ところが、深夜食堂の原作のファンらは、SNSに「SBSは『深夜食堂』の世界観を壊した。がっかりした」という内容のつぶやきを大量に残した。日本のドラマ「深夜食堂」は2012年に韓国のケーブルテレビで放映された。今年6月には映画版も公開され人気ランキング4位になったほど根強い人気を誇っている。
日本版のファンらが指摘したのは、ゲイバーを営む小寿々とストリッパーのマリリンというメインキャストの二人が韓国版には登場しないことである。SBSは7月3日に行った制作発表会で、「ゲイとストリッパーといった性的マイノリティーは韓国の状況を考慮して登場させないことにした」と説明した。複数の韓国メディアは、「『深夜食堂』は社会の中心部から一歩離れた人々が登場するドラマ。職業や年齢に関係なく食堂の中ではみんなが仲間になれる共同体意識を見せる作品だ。韓国版の制作者は原作のもっとも重要な部分を消してしまったのでファンが反発している」と紹介した。
原作ファンらは、「韓国版深夜食堂は性的マイノリティーに対する差別を助長している」としてSBSを批判している。韓国で性的マイノリティーとは、同性愛者、両性愛者、トランスジェンダー(心身の性が一致しない人)を指す。
このような議論が広がったのは、性的マイノリティーに対する差別をなくすことを目的にしたイベントが開催されたことも影響している。韓国ソウル市庁前広場で6月28日に行われた第16回Korea Queer Festivalだ。約3万人(主催者側推定)が参加したこのフェスティバルでは、「愛し合おう、抵抗しよう、Queer Revolution!」をキャッチフレーズにブース展示、バンドによるライブなどが催された。参加者らは2.6キロメートルの街角行進なども実施した。
同フェスティバルがソウルの中心部であるソウル市庁前広場で開催されたのは今年が初めて。これまでは、ソウル市内の大学街で行われていた。
16カ国の駐韓大使が性的マイノリティーを支持
韓国Queer文化祝祭組織委員会は、6月9~28日までをKorea Queer Festival期間に指定し、性的マイノリティーと法律に関する国際シンポジウムなどを開いた。6月9日にソウル市庁前広場で行われた開幕式では、EU(欧州連合)代表部大使をはじめ、ベルギー、フランス、アイルランド、ノルウェイ、スイス、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ドイツ、スペイン、イスラエル、カナダ、イギリス、米国、ブラジル、アルゼンチンなど16カ国の駐韓大使館関係者らが参加し、韓国の性的マイノリティーを支持すると表明した。
6月28日のフェスティバルでは13カ国の大使館がブースを出した。大使館ブースはクイズに答えると記念品がもらえるイベントなどを開催した。
28日にはマーク・リッパート駐韓米大使がフェスティバル会場を訪問し、米国大使館のブースを観覧した。米国の連邦最高裁判所が6月26日、男性同士または女性同士が結婚する同性婚をすべての州で認める判断を下したこともあり、リッパート大使のKorea Queer Festival参加は大きな話題になった。リッパート大使は6月29日、野党・新政治民主連合のムン・ジェイン代表と会合。ムン代表からフェスティバルの感想を聞かれ、「韓国の人々が普遍的人権を支持し意見を表明しているのを見てうれしく思った。Korea Queer Festivalはとても意義のあるイベントだと思う」と応じた。
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