2012年5月2日と3日、ソウル市清渓川広場に、ろうそくを手にした人たちが集まった。「ろうそく集会」が再び起こったのだ。発端は4月25日に、米国でまたBSE感染牛が確認されたことだった。
日本では動揺する人があまりいないと聞くが、韓国の主婦らは敏感に反応した。大手スーパーであるEMARTは次のように発表した――ソウル市内主要3店舗の4月26~28日売上を分析したところ、米国産牛肉販売がその前の週に比べて半分に減った。主婦コミュニティサイトでは「見た目や味で原産地を見分けることができないので、牛肉は食べない方が安全」という書き込みが増えている。
MBC放送局は5月5日夕方のニュースで、米BSE問題により、韓国の大手スーパーで牛肉の売り上げが激減していると報じた。米国産牛肉を扱う卸売店の社長はインタビューの中で「売上が前月の3分の1にもならない」「これからどうしたらいいのか。仕事を変えるべきなのか」と嘆いていた。ニュースは「米国牛に対するBSEへの懸念が、韓国産の牛肉にも飛び火し、畜産物そのものを買わなくなっている。焼肉食堂も客が減っている。それでも2008年に比べればまだ落ち着いている雰囲気だ」と報じた。
KBSは5月5日朝、「メディア批評」という番組(視聴者からKBSに寄せられた意見を報道する番組)で、米国産牛肉の輸入に反対するろうそく集会が4年ぶりに行われたことを報じた。そして、マスコミを批判した――「科学的に安全」「やっぱり安心できない」と両極端な見出しばかりつけて国民を混乱させている。いろんな側面から、科学的根拠を持って報道すべきであると主張した。
同番組によると、与党寄りの朝鮮日報と東亜日報は、「韓国は米BSE問題の影響を受けない。安全だ」と主張する学者ばかりにインタビューし、記事を掲載している。他方、野党寄りのハンギョレ新聞とキョンヒャン新聞は、韓国も危険だと主張する学者ばかりインタビューしている。
牛肉の検疫を担当する農林水産食品部(「部」は日本の「省」)は、米国のBSE感染牛は、韓国が輸入しない月齢の牛なので安全だとしている。しかし韓国ではBSEそのものよりも、BSE問題をめぐる国民のメディア不信、政権不信の方が問題である。
5月2日、ろうそく集会が再燃
5月2日と3日に起きたろうそく集会には、大学生、野党の民主統合党議員、ナコムス(政治批判ポットキャスト)を支持するネット同好会の会員、労働団体、子供を連れた市民らが参加した(関連記事「「笑い」が社会を変える」)。このろうそく集会は、韓国農林水産食品部が2008年の約束を守り、米国産牛肉の輸入を直ちに中断するよう求めるものであった。
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By 趙 章恩
2021年5月9
-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20120507/231721/