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Twitter上で伝統文化に関する議論が沸騰
日本ではこの春、震災に配慮して、卒業式も入学式もしない学校が多かった。私が留学している東大は毎年、安田講堂で卒業式、武道館で入学式を行う。今年は学生代表だけが参加する形で行った。去年の卒業式では、留学生も袴を着て、日本の卒業式を思う存分楽しんだ。大学や大学院の卒業式では、ほとんどの女性が袴を着る。こうした伝統がまだまだ続いていることにとても感動した。
韓国でも10年ほど前までは、修士や博士の学位授与式で韓服を着ていたが、今では誰も着なくなった。「韓服」は伝統衣装で「ハンボク」と読む。「チマチョゴリ」は「スカートと上着」という意味。「ハンボク」の砕いた言い方だ。
そういえば、韓国ではお正月やお盆でもない限り、韓服を着た人をあまり見かけない。お正月やお盆ですら伝統衣装を着る人が少ないので、故宮や博物館では韓服を着た人を無料で入店させるイベントまでやっている。韓服を着るのは、結婚式、親族の結婚式、子供の1歳の誕生日くらいだろうか。
それでも結婚するときに、嫁入り道具の一つとして韓服一式は必ずそろえる。結婚式の前の「ハム」をもらう日は、韓服を着て、新郎の友達がハムを担いでくるのを待つ。ハムは、新郎の家から新婦の家へ送る婚書紙や手紙を木箱に収めたもの。今は婚書紙と一緒に新郎からの贈り物を箱に入れて届ける。新婚旅行から戻り夫の実家に行く時は、韓服に着替え、両親に礼をする。この伝統はまだ残っている。
日本では、成人の日の振袖、卒業式の袴、花火祭りの浴衣はもちろん、普段の日でも着物を着て出かける人をよくみかける。夏になるとユニクロでも浴衣を販売していて、安く手軽に買えるのが面白い。「伝統衣装は値段も高く厳かで楽に着られる服ではない」という先入観があったので、日本では伝統衣装がまだ身近な存在であることに驚いた。
え、韓服は韓国名門ホテルのドレスコード違反!?
韓国で4月12日、「韓服」をめぐって「え~、嘘~」としか思えない出来事があった。それはTwitterからBlogを経て、インターネット新聞の記事になり、ついにテレビのニュースも取り上げた。
韓国を代表する高級ホテルの新羅(Shilla)ホテルで、韓服を着た女性がビュッフェレストランに入ろうとした。彼女に対してレストランの支配人が「ドレスコードがあり、韓服とトレーニング服(日本でいうジャージー姿、だらしない服装という意味もある)はNG」、「韓服は危険なので入店できない」「韓服は他のお客様に迷惑」と言ったというのだ。
自分の国の伝統衣装を「入店できない服」と決めている新羅ホテルのドレスコードにびっくりしてしまった。
新羅ホテルは格調高いホテルで、韓国人の憧れの的である。もちろん五つ星だ。サムソンが経営している。その名前は、三国時代の「新羅」にちなむ。建築物としても、伝統と現代のデザインをうまく調和させているとしてとても高い評価を得ている。ホテルの建物は伝統的な瓦屋根を採用している。韓屋(伝統家屋)として建てられた迎賓館は、結婚式場や宴会場としてとても人気が高い。財界の有名人や芸能人の中でもトップクラスの人、例えば日本でも有名なチャン・ドンゴン、クォン・サンウが迎賓館で結婚式を挙げている。韓国式床暖房を採用した「オンドルスイート」は、日本人観光客にも人気が高い。
それほどのホテルで、韓服を着ているだけでお客さんを追い返すようなことがあったなんて、驚かずにはいられない。
拒否されたのは韓国伝統文化の擁護者だった
しかも、入店を拒否された女性は、韓国で有名な韓服デザイナーのイ・ヘスン氏であった。韓服デザイナーのプライドをかけて、韓服の良さを伝えるため、20年間毎日韓服で過ごしているというデザイナーに対して「韓服は危険」「ドレスコードNG」という発言をしたのだ。
イ・ヘスン氏はヨン様主演映画『スキャンダル』、チョ・インソン主演映画『霜花店(サンファジョム)-運命、その愛』など、韓流スターが出演し日本でも上映された映画の衣装をデザインした人でもある。
イ・ヘスン氏は新羅ホテルのビュッフェレストランで入店を拒否されてから、「ここは韓国なのに『韓服はNG』という発想自体おかしいではないか」とニュースサイトのWikitreeや知人に訴えた。イ・ヘスン氏は後にマスコミのインタビューで「入店を断られて怒ったというより唖然とした」「韓服を着ているだけで入店できない場所があること、それに抗議しなければならないこと自体が問題」だと話した。
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By 趙 章恩
2011年4月20
-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110419/219502/