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韓国政府は1月18日、ソウル市のど真ん中にある龍山米軍基地跡地に日本の六本木ヒルズをモデルにした50階建て高層ビルを8棟建てる計画を発表した。この跡地から近い梨泰院の国連司令部跡地にも20階建てビルを複数棟建てる。韓国政府とソウル市は、同跡地を公園、住居、オフィス、商業施設がうまく共存するソウル市のランドマークにすることを目指している。一連の開発は「投資活性化計画」と呼ばれる。
龍山米軍基地跡地は約265万平方メートルで、そのうち243万平方メートルに公園と高層ビルを建てる。残りは米軍基地のままだ。公園は動植物の生態観察、スポーツ、文化、芸術、歴史など色々なことを体験できるもので、ソウル市民の憩いの場とすることを目指す。公園の工事費だけで1兆2000億ウォン(約1300億円)、維持管理費は年間300億ウォン(約33億円)がかかる見込み。これは基本的に中央政府とソウル市が負担する。
「投資活性化計画」は元々あった「龍山駐韓米軍移転跡地開発計画」を4年前倒しで実行するもの。投資を促し景気回復につなげるのが狙いだ。本来は、駐韓米軍の再配置や移転が終わる2019年から龍山米軍基地跡地を一斉に開発する計画だった。だが、景気回復のため前倒しし、既に空き地になっているところの開発を先に進めることにした。
龍山米軍基地から駐韓米軍がすべて移転するわけではない。駐韓米軍は龍山に一部の機能だけを残して、最新設備の整った郊外の基地に移転し、韓国軍との連合防衛能力を増強する。
投資活性化計画によると、龍山米軍基地跡地再開発工事では、民間企業が2020年までに5兆ウォン規模(約5500億円)を投資することになっている。企業の投資を促すべく、費用対効果を上げるため、土地規制の適用を除外する。他の地域では厳しく管理している土地面積と建物の面積の比率、土地面積と建物の延べ面積比率に関する規制を緩め、高層ビルをたくさん建てられるようにした。
国連司令部跡地には、20階以下のビルしか建てないようにする。ソウル市の真ん中にある南山が遠くからでも見えるようにするためだ。同跡地はオフィス街にする計画で、企業ビルが立ち並ぶ予定だ。
既に空きオフィスが目立っているのに…
龍山米軍基地は1910~45年までは日本軍の本部があった場所だ。それ以前には清の軍隊が駐屯していた。ソウル市のど真ん中にあるのに、100年以上にわたって韓国人は足を踏み入れることができなかった。
韓国政府の業務内容を記録して公開している「国家記録院」のウェブサイトで検索すると、龍山米軍基地の移転は1990年から韓国と米国の間で話し合いが始まった。費用問題のために議論が一時中断したこともあったが、2007年には龍山米軍基地跡地を公園にする龍山公園造成特別法を制定。2015年1月18日にようやく具体的な開発計画を発表するに至った。ソウル市は、龍山米軍基地周辺の長年にわたる騒音苦情解決、地域差のない都市開発のためにも龍山米軍基地跡地の開発事業はとても重要なプロジェクトと位置付けている。
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