.
日本のメディアも大きく取り上げた大韓航空の「ナッツリターン」事件。韓国社会に衝撃を与えたこの事件は、検察が捜査に乗り出す事態に発展した。
ナッツリターン事件のあらましはこうだ。大韓航空のチョ・ヒョンア副社長(当時)が12月5日、ファーストクラスに乗った。大韓航空はファーストクラスの乗客にマカデミアナッツをサービスする。同副社長は、乗務員がナッツを皿に盛りつけず袋のまま自分に出したとして激怒。動き始めた飛行機をゲートに戻し乗務員を降ろした。その結果、ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港発、韓国仁川空港行きのKE086便は、何の案内放送もないまま離陸が46分遅れ、到着は16分遅れた。ナッツを袋に入れたままサーブしたというだけの理由で、動き始めた飛行機をゲートに戻し、乗務員を降ろしたのは前代未聞の事件である。
チョ・ヒョンア氏は大韓航空オーナーの長女であるため、乗務員も機長も彼女の命令に逆らえなかったという。もし同氏がオーナー一族ではなく一般乗客だったら、機内で騒動を起こしたとしてすぐ警察に通報されていたに違いない。乗務員ではなく、彼女が飛行機から降ろされていただろう。
ロイター、CNN、BBCなど海外の主なメディアはこの事件を「Nut rage」、「Nut incident」という見出しを付けて大々的に報道した。「nut」には「ナッツ」という意味に加えて、「バカげた」という意味がある。
袋を開けないのはマニュアル通り
この事件が表沙汰になったのは、大韓航空社員だけが利用できる掲示板アプリへの書き込みがきっかけだった。これがネットに流れ、韓国メディアが12月8日、一斉に報道した。
大韓航空側は「前副社長が指摘したにもかかわらず、乗務員がマニュアル通りにせず嘘をついた」「乗務員が飛行機から降りたのは機長の判断だ」と釈明する謝罪文を発表した。だが、韓国メディアは大韓航空側の主張とは全く違う内容の目撃談を報道した。
事件当日、オーナーの長女が乗るというので客室乗務員は全てベテランに代えられた。乗務員は、マカデミアナッツを食べるかどうか、袋に入ったまま乗客らに見せて回った。これはマニュアル通りの対応だ。乗客が「食べる」と答えたら皿に盛りつける。答えを聞いてから皿に盛りつけるのは、ナッツアレルギーがある人もいるからだ。それを知らずチョ・ヒョンア氏は袋に入ったままナッツを出したと怒り、機内で騒ぎを起こした。同氏は、「乗務員はマニュアル通りにした」と説明し乗務員をかばった事務長(パーサー)を飛行機から降ろした。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。
By 趙 章恩
日経ビジネス
2014年12月16
-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20141216/275222/