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2月7日の午前9時半ごろ、北朝鮮が「人工衛星の打ち上げ」という名目で南に向けて長距離弾道ミサイルを発射した。韓国メディアは北朝鮮の情勢に関する情報を速報し続けるとともに、状況を分析する特番を流した。北朝鮮が核実験を実施してから1カ月あまり。「今度はミサイル発射だ」とメディアが騒ぐのとは裏腹に、ソウル市内はいたって普通のお正月(旧正月)を過ごした。
朝鮮日報や聯合ニュースなどによると、北朝鮮がミサイルを発射した7日の午後、全国の高速道路は帰省ラッシュで大渋滞だった。遊園地も連休らしく大にぎわい。北朝鮮からほど近いスキー場にさえ2万人を超える人が集まった。
延坪島にも普段と変わらず連絡船が運航した。ここは、2010年11月に朝鮮人民軍が砲撃を加え犠牲者が出た島だ。北朝鮮を見渡すことができる江原道(韓国の「道」は日本の「県」に相当)の複数の展望台も普通に営業している。韓国本土より北朝鮮に近い白翎島の周辺だけは北朝鮮がミサイルを発射したのを受けて避難所を開放した。
ミサイルの1段目の推進体が落ちてくる可能性があると言われた西海(黄海)沿いの群山市と済州周辺では、船舶が港に緊急避難するなど緊張感が漂う場面があった。ただし、お正月連休で漁民の多くは自宅にいたため被害はなかった。韓国軍が北朝鮮のミサイルから落ちたとみられる物体を無事に回収した。
「北朝鮮がまたやりましたね」
ソウルにある繁華街の明洞は春節連休を韓国で過ごす中国人観光客でごった返した。そんな中、テレビのニュース番組が行き交うソウル市民に北朝鮮のミサイル発射についてどう思うかインタビューしていたが、ほとんどの人が重く受け止めてはいない様子だった。
- 「北朝鮮がまたやりましたね」
- 「いつものことだから不安はない」
- 「北朝鮮は毎年挑発を繰り返しているのでなんとも思わない。北朝鮮との間で戦争が起きるなら、もうとっくに起きているはず」
- 「北朝鮮は関心を持ってもらいたいのかな」
一方、韓国の政府省庁と軍は非常勤務体制に入り、北朝鮮に対して厳しい姿勢を見せている。
北朝鮮と韓国の陸上の軍事境界線付近を見渡すことのできる坡州市の臨津閣展望台では、北朝鮮を故郷とする人たちが集まり、先祖に礼をする茶禮(チャレ)を行った。これに参加した韓国統一部(北朝鮮対策を担当する省庁)のファン・ブギ次官は、「北朝鮮は核兵器とミサイルを開発した。時代に逆行する間違った道を進んでいる」と強く批判するコメントをした。
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