[日本と韓国の交差点] 日本とTPPで合意できなかった分を韓米FTAで取り戻す?

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米国のバラク・オバマ大統領が4月25日、日本に次いで韓国を訪問した。オバマ大統領の韓国到着後すぐ行われた韓米首脳会談で、両国の大統領は北朝鮮の核実験、韓米FTA(自由貿易協定)とTPP(環太平洋経済連携協定)、2015年に予定している戦時作戦統制権の韓国軍への返還延期について話しあった。

米国への投資を呼びかける


 経済協力に関しては、韓米FTAの完全履行を条件に韓国のTPP参加について協議する――という米国の立場を再確認した。朴槿恵大統領はオバマ大統領に、2012年3月に発効した韓米FTAの取り決めを完全に履行することを約束した。その第一弾として、原産地証明を簡素化し、米国で生産した米国以外の国のメーカーの自動車も韓国に輸出しやすいようにした。これによって米国は、自国のメーカーによる輸出増加だけでなく、生産拠点確保による雇用拡大、法人税収入の増加といった経済効果を得られるようになる。


 韓国のメディアは米韓首脳会談後、日本とのTPP交渉に失敗したオバマ大統領は、韓国に対して一層の圧力をかけるだろうと分析した。各紙の紙面では次の見出しが踊り、韓国政府が米国に引きずり回されるのではないかと心配する記事が目立った。



  • 東亜日報:「日本で経済的実益を上げられなかったオバマ、韓国で背水の陣」

  • ソウル経済新聞:「米国は自動車と農産物輸出拡大、韓国はTPP加入を期待、米に有利な合意だという声も」

  • 韓国日報:「TPP交渉、落ち着いて利益の極大化方案を探そう」

 オバマ大統領は26日午前、駐韓米国商工会議所が主催した経済人懇談会に出席した。サムスン電子のイ・ジェヨン副会長、現代自動車のチョン・モング会長など、韓国財閥企業の代表の前でオバマ大統領は、「韓米両国の同盟と同じぐらい重要な経済協力関係を強固なものにする」「韓国企業が米国への投資を拡大すれば(ビジネスしやすいよう)手助けする」と強調、米国への投資を増やすよう呼びかけた。


「北朝鮮への武力行使を辞さない」


 オバマ大統領は核実験をやめるよう北朝鮮に警告もした。オバマ大統領と朴大統領は26日午後、韓米連合司令部(韓国軍と駐韓米軍を指揮する軍事機関、司令官は駐韓米軍大将、副司令官は韓国陸軍大将が担当)を訪問した。両国首脳が韓米連合司令部を訪問したのはこれが初めてである。


 同司令部で駐韓米軍向けに演説したオバマ大統領は、「韓米同盟は軍事だけでなく、経済や政治など色々な面で成功を収めている」「北朝鮮の核実験はより一層の孤立を招くだけ」「(北朝鮮に対して)軍事力の使用を躊躇しない」と発言した。4月27日付の聯合ニュースによると、北朝鮮は「(韓米首脳会談は)南(韓国)による北朝鮮への宣戦布告にほからない」と反発したという。



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2014年4月30日



趙 章恩=(ITジャーナリスト)



日経パソコン

 



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