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2014ワールドカップが開幕した。日本では全国各地に設置されたパブリックビューイングの前に大勢の人が集まって、試合を観戦していると聞く。日本代表戦が行われた6月15日、サムライブルーに染まった渋谷の光景を韓国メディアも紹介していた。
ワールドカップの応援といえば韓国も日本に負けていない。韓国代表チームの公式サポーターは赤い悪魔(Red Devil)。赤いTシャツを着た人達が街にあふれ、大いに盛り上がる。十数万人がソウル市庁前広場に集まり、ステージの上ではアイドルグループがワールドカップ応援ソングを歌い、お祭り騒ぎの中で韓国代表を応援する光景が海外メディアにもよく登場する。
住宅街の居酒屋、家電量販店などテレビがある場所に、いつの間にか人が集まり、ゴールが決まれば見ず知らずの人とも抱き合って喜ぶ。それが、これまでのワールドカップだった。ワールドカップ期間中はどの飲食店でもテレビのチャンネルはスポーツニュースか試合中継に固定、映画館やサッカー場、野球場などでもワールドカップの試合を中継し、ワールドカップの話題で盛り上がるのが当たり前だった――。
しかし、今年のブラジル大会はとても静かだ。赤い悪魔が例年主催していたソウル市庁前広場の街角応援も、今年は場所を変え、あまり騒がず小規模で応援することになった。全国各地の市庁前広場でも、自治体の協力の下、街角応援が行われていたが、今年は街角応援を一切しないと決めた自治体もある。FIFAの公式スポンサーであるコカコーラや現代自動車が主催する街角応援はあるが、どれも前回の南アフリカ大会に比べて規模を大幅に縮小している。
依然として続くセウォル号事故後の自粛ムード
韓国でワールドカップが盛り上がらない理由はいろいろある。何よりもセウォル号沈没事故後の自粛ムードが続いている。6月14日時点でまだ12人が行方不明のままだ。政府合同焼香所が、ソウル市庁前をはじめとする大都市の市庁前に今も残っている。事故の責任を巡る裁判も始まったばかりだ。セウォル号の事故を忘れて笑って騒ぐのは申し訳ない、焼香所の前で街角応援をするわけにはいかない、ということで、ソウル市庁前広場の街角応援は光化門(グァンファムン)広場に移動することになった。新聞社と官庁が集まっている狭い場所なので、これまでのように十数万人が集まることは難しい。
セウォル号沈没事故以降、韓国政府が抱える問題点が次々に明るみになっていることから、ワールドカップどころではないという雰囲気もある。いつもなら5月あたりから企業のワールドカップ便乗マーケティング合戦が盛り上がる。今回は企業も静かなマーケティングに徹している。
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