[日本と韓国の交差点] 空気清浄器と民間療法頼る日々

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中国で発生した大気汚染が、日本に影響を与えるほど深刻な状態になっている。ソウル市も2月24日から3月1日まで、「微小粒子状物質(PM2.5)」注意報と注意報予備段階を繰り返し発令した。注意報は、PM2.5の濃度が2時間以上持続して1立方メートル当たり85マイクログラムを超えると発令される。注意報予備段階は、1立方メートル当たり60マイクログラムを超えた場合だ。PM2.5が1立方メートル当たり45マイクログラム以下になると通常状態と判断して注意報を解除する。

 ソウル市は2月中旬以降ずっと、濃い霧が発生したような天気が続いている。10メートルぐらいしか離れていない向かい側のマンションが見えないほどなので驚いた。ソウルは幸い花粉は飛んでいないが、春になれば中国から飛んでくる黄砂がひどくなるので、これからが心配だ。

 中国からやってくる大気汚染物質を空の上で止めることはできない。PM2.5は肺にまで届き呼吸器疾患の原因になるとして、日本でも韓国でも、濃度の高い日は外出を控えるよう政府や自治体が注意を呼び掛けている。しかし、PM2.5注意報が出ても家庭では「マスクをする」「頻繁にうがいをする」「窓を開けずに空気清浄器をつける」ことぐらいしかできない。PM2.5から完全に身を守ることはできないのだ。

 PM2.5を対象にした民間療法も流行っている。テレビのニュースによると、大手スーパーEMARTで2月、サムギョプサル(豚の腹肉で脂身の多い部位)の売上高が前年同月比50%増になったという。韓国では、体内にたまった有害物質をからめ取って排出する効果が豚の脂身にあると言われている。気管支を強くするという理由で梨も売れている。

 大手スーパーのロッテマートでは2月、空気清浄器が前年同月の10倍も売れたという。1家に1台ではなく、リビング、キッチン、寝室などに1台ずつ空気清浄器を置く家庭が増えたからだそうだ。デパートではより高性能な空気清浄器を求める顧客向けに日本製、スイス製、ドイツ製の空気清浄器を輸入販売している。韓国のサムスン電子は超微細ほこりを吸引できるという高額な掃除機も売り出した。

注意報をより便利に

 ソウル市は、PM2.5 注意報が発令されている間は災害が発生しているのと同じだとして、道路掃除用の車両を1日2回派遣して市内のほこりを吸引したり、道路を水で洗い流したりしている。PM2.5の濃度を少しでも下げるため、ソウル市は官用車1500台の運行を中断した。同市は区役所にも同様の措置を取るよう呼びかけた。同市は大気汚染に関する制度を改訂し、大気汚染が基準値を超えた場合は、一般市民のクルマの運行も制限できるようにした。同市は大気汚染問題を解決するため、北京・上海などPM2.5の発生元である中国の都市と業務提携し、共同で対策を立てようとしている。

 注意報以外の対策も進めている。環境部は、電気自動車の購入に対する補助金を増額することにした。排気ガスの排出量が多い古い車に対しては排気ガスの量に応じて環境負担金を徴収する計画もある。焼却設備の大気汚染物質排出量もより厳しく取り締まる。

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2014年3月6日

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column

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