[日本と韓国の交差点] 近隣騒音トラブル、韓国では政府機関が仲裁

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共同住宅の上の階や下の階に住む人との騒音トラブルが高じて、日本でも放火や殺人事件が起きている――こんなニュースを見て驚いた。日本人は他人に迷惑をかけないことを大事にするから、住民同士の騒音トラブルなんてあり得ないと思っていたからだ。

 日本でいう騒音トラブル、近隣騒音は、韓国では「層間騒音」と呼ぶ。足音、子供の叫び声、犬の鳴き声、シャワーやトイレの水音、掃除機・洗濯機の音、運動器具の音、椅子を引きずる音、楽器演奏の音などが大きすぎて、下の階や近くに住む住民が日常生活ができないほど苦しむことがある。90年代に入ってから深刻な問題になっている。

 韓国では「層間騒音」が原因でトラブルとなり、放火や殺人事件に発展したケースがいくつもある。最近は、自治会やマンション管理事務所が解決するレベルを超え、社会問題として政府機関が解決法を探っている。

 韓国の検索サイトに「層」の文字を入力するだけで、「層間騒音 解消法」「層間騒音 仲裁」「層間騒音 上の階に復讐する方法」などの関連キーワードがずらりと並ぶ。2月19日のお正月(韓国は旧暦でお正月を祝う)連休の際には、テレビのニュース番組が「親戚が集まるお正月連休は層間騒音に気を付けましょう」「大勢の人が集まる際には事前に下の階の人に挨拶しておきましょう」と何度も繰り返していた。

 特にソウル市の場合、市民の83%がマンションや多世帯住宅(2世帯住宅のように一戸建て住宅に複数の世帯が住むこと)などの共同住宅に住んでいる(2012年時点)。人口密度が高いせいか、「層間騒音」に悩む人が多いようだ。韓国の新聞記事を検索すると、層間騒音トラブルのほとんどが共同住宅で起きている。その他の騒音トラブルは、住宅街にある工事現場の騒音や、ゴルフ練習場の騒音がひどいとして訴訟になるくらいに留まる。

 「層間騒音」は経験してみないと、その苦しさが分からないかもしれない。筆者も「上の階の住人の足音ぐらいで苦情を言うなんてやりすぎじゃない?」と思っていたが、知人が住むマンションに遊びにいった際に「層間騒音」を経験した。上の階の部屋に住む子供が走ると、天井が揺れるように足音が響く。掃除機の音は、まるで旅行用キャリーバッグをガラガラ引きずっているように頭の上で聞こえる。椅子を引っ張った時に床と擦れて鳴る、キーッというあの嫌な音まではっきり聞こえるのだ。知人の話では上の階の住人は床の上にカーペットを敷いて足音がしないように気を付けているというが、あまり効果がないようだ。

層間騒音を解決する5つの方法

 韓国で「層間騒音」を解決する方法は大きく5つある。1つ目はマンションの管理事務所にどのような騒音に悩まされているのか説明し、マンションの管理規約に則って仲裁してもらう方法だ。

 2つ目は、国家騒音情報システムにアクセスし、「層間騒音イウッサイセンター」に調査を申し込む方法。同センターは騒音による近所トラブルを解消するため環境部(部は省)が2012年に設立したもの。イウッサイはお隣同士、近所同士という意味だ。騒音が発生する時間帯、騒音の種類、今までの経過(マンション管理事務所を通して注意したが聞いてくれないなど)などを詳しく記載して同センターに調査を申し込むと、騒音の専門家が自宅に来て騒音を測定し、騒音を出している住民に説明してくれる。仲裁サービスは全て無料で利用できる。

 「層間騒音イウッサイセンター」は500世帯以上が住むマンション団地を対象に「共同住宅層間騒音集中管理サービス」も実施している。「住民を対象にアンケート調査や公聴会を実施して騒音トラブルの実態を把握する」「騒音を防止するための管理規約を制定する」「騒音管理委員会を結成して騒音に関する管理規約を住民に説明する」といったサポートを行なう。

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By 趙 章恩
 日経ビジネス
 2015年2月23
-Original column

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