[日本と韓国の交差点] 韓中FTAが発効、韓国経済に吉となるか

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2015年12月20日0時、韓中FTA(自由貿易協定)、韓越FTA、韓ニュージーランドFTAが同時に発効した。これで韓国は米国、EU(欧州連合)、中国、東南アジアという主な経済圏すべてとFTAを発効させたことになる。

 20日早朝、韓中FTAの恩恵を受ける輸出第1号が仁川港から中国に向けて出発した。中小企業のジアシンコリア社が硫黄2650トンを中国に輸出した。韓中FTA発効により1トン当たり1.2ドル、合計3180ドルの関税がなくなり、その分安く中国に輸出できた。

 韓国の産業通商資源部(韓国の「部」は日本の「省」)によると、対中輸出では医療機器や石油製品など958種目の関税が撤廃される。この958種目の対中年間輸出額は2014年時点で87億ドル(約1兆440億円)に上る。

 産業通商資源部は12月20日、「韓中FTAによって韓国の製品が中国内で関税分安くなる。価格競争力が高まるので、2014年に1453億3000万ドル(約17兆4000億円)だった対中輸出が、FTAにより年間約13億5000万ドル(約1620億円)増加する見込みである。中国に支払っていた関税も年間54億4000万ドル(約6500億円)ほど節約できるようになる」と発表した。韓中FTA発効によって節約できる関税支払額は韓米FTAの5.8倍、韓EU FTAの3.9倍に上るという。

 韓国のサービス産業も中国に進出しやすくなる。韓国の法律事務所が中国の法律事務所と合弁会社を設立すれば、中国でも法律サービスを提供できる。その他、芸能プロダクション、建設会社、ゴミ処理会社、流通会社も合弁会社を設立できる。FTA対象品目は48時間以内に通関させるし、700ドル(約8万4000円)以下の製品は原産地証明の提出を免除する。

NZへの人材輸出活発化も見込まれる

 韓ニュージーランドFTAでは2013品目の関税が20日に撤廃された。対ニュージーランド輸出は小型家電、オフィス用品など韓国製の消費財が伸びる見込みだ。人材輸出も活発になる。ニュージーランドで働けるワーキングホリデイビザの発行を年間1800人から3000人に拡大する。韓国のエンジニア、漢方医など10職種の専門職は、ニュージーランドで働ける就労ビザを取得しやすくなる。

 ベトナムとの間に結んだ韓越FTAでは272品目の関税を引き下げる。韓越FTAは、2007年6月に発効した韓ASEAN FTAよりも対象品目を拡大した。

 ベトナムは今注目されている新興市場である。韓国政府はベトナムとのFTAで、ベトナムに進出した韓国企業の投資が守られる利益が大きいことを強調した。ベトナムに進出した韓国企業も4000社を超えた。韓国企業による対ベトナム投資は、2014年末までの累積で89億ドル(約1兆680億円)に上る。韓越FTAにより韓国企業は、ベトナム政府の政策によって損害を受けた場合、訴訟を起こせるようになる。さらに、ベトナムに投資して得た利益を韓国に送金しやすくなる。

中国の「海淘族」に期待

 中国、ベトナム、ニュージーランドの3カ国は韓国にとって重要な貿易相手国で、韓国の輸出全体の30%を占める。産業通商資源部は3カ国とのFTAで、2025年まで輸出が年平均50億ドル(約6000億円)ずつ増加すると推算している。同年までに、国内総生産(GDP)は1%上昇し、雇用は5万5000人増える見込みだ。

 韓国メディアによると、輸出が大きく伸びるのは化粧品だという。中国とベトナムでは韓国ドラマの人気が高い。韓国旅行のお土産人気1位は韓国の女優が宣伝している韓国産化粧品だそうだ。化粧品の対中輸出は6300億ウォン(約700億円、2014年)。この額は2012 年以来、毎年80%ずつ増えている。

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By 趙 章恩

 日経ビジネス
 2015年12月23
-Original column

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