中国が脱北者を不法入国者として逮捕し、北朝鮮に強制送還している。韓国政府は「これは国際条約違反だ」として、中国に初めて実質的な抗議をした。しかし韓国にも課題がある。「すべてに脱北者を韓国が受け入れられ…
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北朝鮮から逃げてきた脱北者の強制送還が、外交問題になろうとしている。
中国の公安は脱北者を難民ではなく不法入国者として逮捕し、北朝鮮に強制送還している。北朝鮮は、2011年12月に金正日氏が死亡して以降、3月末までを哀悼期間と決めた。この期間に脱北する者は「家族3代を滅族する」と発表している。中国から強制送還された人は政治犯収容所に送られ、見せしめに公開死刑に処せられるだろう。
韓国のメディアは2月13日、以下のニュースを一斉に報じた――韓国に住んでいる脱北者が韓国国家人権委員会に対して、「中国の公安が脱北者10人を逮捕し、北朝鮮に強制送還しようとしている、助けてほしい」と緊急救済を求めた。韓国に先に定着した脱北者が、北朝鮮に残っている家族を脱北させたところ、この脱北者グループの中に中国公安のスパイがいたという。金正恩体制になってから脱北者が集団で逮捕されたのは、これが初めてである。
脱北して中国に向かう人が多数いるのは、昨日今日の話ではない。1990年代から食糧を求めて増えていた。韓国のマスコミが「コッジェビ」――中朝の国境地帯で物乞いをする北朝鮮の子供たち――がいると、大々的に報道したこともあった。中国は、北朝鮮との関係を意識して、脱北者をある時は見逃し、ある時は逮捕して北朝鮮に強制送還した。しかし今後は、徹底的に脱北者を逮捕して北朝鮮へ強制送還するのではないかとみられている。金正日氏が死亡した後、中国は北朝鮮の後見であると公言しているからだ。
中国による脱北者の強制送還が厳しくなっている
韓国では、脱北者が海外にいる間は外交部、韓国に入国してからは統一部が担当する。韓国の統一部は1999年、韓国行きを望む脱北者は、人道主義と同胞愛から全員受容すると発表した。1997年に制定された「北朝鮮離脱住民の保護及び定着支援に関する法律」によると、北朝鮮に籍があって外国の国籍を取得していない者は大韓民国の国民と見なす。
ちなみに、この法律が制定される前は、脱北した人を越南帰順勇士と呼んでいた。だが、この頃から食糧難から脱北する人が増えたため、脱北者と呼ぶようになった。
韓国の統一部(部は省)の調査によると、海外から韓国へやって来る脱北者の数は、1998年以降2万3100人に上る――2011年2737人、2010年2379人、2009年2927人。脱北者を性別で見ると70%が女性。年齢別に見ると、20~30代が59%を占める。統一部は、女性の脱北者が多いのは、家族の生計のためではないかと分析している。北朝鮮の男性は体制に順応する傾向がある。だが、女性は家族の生計を担っているので、食糧難を逃れるため、子供を連れて脱北するケースが増えていると見ている。
By 趙 章恩
2021年3月8
-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20120306/229498/