[日本と韓国の交差点] 韓国がTHAADの配備を星州に決定、住民が猛反発

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韓国国防部のリュ・ジェスン政策室長は7月13日、「THAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)の軍事的効用を極大化するとともに、地域住民の安全を保障しつつ健康と環境に影響を及ぼさない最適の配備用地として慶尚北道星州(ソンジュ)にTHAADを配備することを韓米共同実務団が提案。韓米両国の国防長官がこれを承認した」と発表した(参照記事)。


 星州は韓国の南東にある農村で、ソウル市から200Km以上離れている。中国やロシアからも遠い。住民は寝耳に水と猛反発している。

 星州の特産品は夏の果物である黄色いチャムウェ(甘いウリ)。この時期は韓国全土のどこででも、星州のチャムウェがスーパーに並ぶ。ネットでは早速「THAADの電磁波が星州の農作物をだめにする。星州のチャムウェを食べると癌や白血病になる。健康被害が発生する」という書き込みが広がり、THAAD恐怖論が広がった。

 国会では7月19日、ファン・ギョアン国務総理とハン・ミング国防長官に対する「THAAD配備に関する緊急懸案質疑」が行われた。星州の住民代表らも国会でのやりとりを参観した。

 野党である「国民の党」や「共に民主党」議員からの「国会の同意なくTHAADを配備していいのか」という質問に対しファン国務総理は、「THAADは駐韓米軍の武器であり国会の同意が必要な事項ではないと判断している。韓米相互防衛条約に基づく武器配備である」と説明した。

 個別に見ると、国民の党は「THAAD配備反対」の立場を強く主張した。

 共に民主党は実は意見が分かれている。一方は「THAAD配備に反対はしないが慎重に検討すべきである。まずは韓国政府が星州住民の意見を聞くべき」という議員。もう一方は「韓半島(朝鮮半島)の平和と東アジアの未来のために、THAAD 配備を撤回し、再検討すべきである。韓国のためにTHAAD は本当に必要なのか。韓国を守るどころか世論の分裂を招き韓国は混乱に陥った。THAAD配備は周辺国との冷戦を招くだけである。軍備競争が最善の選択とはいえない」と主張している。

 与党であるセヌリ党は以下の前向きな内容をファン国務総理に確認しようとした。
「THAADによる住民の健康被害はない」
「中国との外交や経済協力関係も揺るがない」
「THAADが配備される星州やその周辺地域を積極的に支援する」
 同国務総理は「今後環境評価をする、支援も今後考える」と言葉を濁した。


By 趙 章恩

 

 日経ビジネス

 2016年7月20

-Original column

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/215834/072000044/

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