[日本と韓国の交差点] 韓国で2011年末、いじめを苦に中高生が連続自殺

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2012年は、日本では「辰」年、韓国では「龍」年である。韓国では「黒龍」の年とも言われている。黒龍年に生まれる子供は、財産にも社会的地位にも恵まれるという俗説がある。

 出産率がどんどん落ちている韓国で、「黒龍」年こそ出産率を高めようと、自治体がいろんな出産奨励策と打ち出している。出産支援金を支給したり、子供の予防接種を無料にしたり。託児所の設置を会社に義務づけてもいる。


 しかし2011年末、ますます子供を産みたくなくなる出来事が連続して起こった。

ネット代を支払わせる、ネットに悪口を執拗に書きこむ



 2011年12月だけで、3人もの中高生が「いじめ」を苦に自殺したのだ。大田では女子高生が、大邱と光州では男子中学生が自殺した。


 韓国語には、「いじめ」に相当する単語がない。なので、「多数から仲間外れにされる」という意味を持つ造語「ワンタ」を使うことが多い。一部のマスコミは、日本語の「イジメ」をそのまま使っている。


 具体的ないじめ方法として、「パンシャトル」「Wifiシャトル」などが挙げられる。「シャトル」は「お遣い」の意味。いじめっ子たちの命令を受け、売店に行き自分のお金で買い物をするのが「パンシャトル」。「Wifiシャトル」は、いじめっ子がスマートフォンを使ってタダでインターネットにアクセスできるようにすることだ。


 ネットでは「○○学校□年□組△△(名前)のアンチカフェ」という掲示板をつくり、特定の子に対して集団で執拗に悪口を書き込む“仲間外れ”が行われている。中高校だけでなく小学校でもいじめが問題になっている。


 12月には、あるいじめられた女子の父親が、いじめっ子である同級生の男子小学生を殴り社会問題になった。男の子は、女子をいじめ、数十回にわたって彼女を脅迫するショートメッセージを送信していた。父親は、学校側がいじめ問題に真剣に取り合わないことに腹を立て、“実力行使”に出た。「どんなことがあっても大人が子供を殴るのは間違い」という意見と、「自分が父親だったら同じことをしていた。学校が悪い」という意見がネット上で対立した。1月時点で、いじめっ子の男子は学校に残り、被害者の女子は心療内科でカウンセリングを受けている。その父親は大学教授だったが、この件が問題となり職を失った。



エレベーターの中で何度も迷った女子高生



 大田の女子高生のケースでは、彼女が住むマンションの防犯カメラに彼女の最後の姿が残っていた。これがネットに公開された。防犯カメラは、自宅のある4階でいったんエレベーターを降りた女子高生が、またすぐエレベーターに乗って最上階の14階に向かう姿を録画していた。エレベーターの中にある鏡でじっと自分の顔を見つめていた彼女は、14階に着くと、エレベーターから降りるかどうか何度も迷った。数分後、防犯カメラから姿を消した彼女は、14階から飛び降りて自殺した。


 警察の捜査によると、女子高生は自殺した日、いじめのことで悩んでいると担任教師に相談した。しかし、「いじめ問題は学生同士で解決しなさい」と言われ、相手にしてもらえなかったことが警察の捜査によって判明した。また教員室から出てくるところをいじめっ子らに見つかり、さらにひどくいじめられたと、他の学生が証言している。担任教師は、「体調が悪いので相談は別の日にしてくれないかと言っただけ。自殺するほど悩んでいるとは気づかなかった」と弁解した。



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By 趙 章恩

2021年1月18

-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20120116/226160/

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