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韓国の主な新聞が11月19日、韓国にたどり着いたシリア難民の受け入れの実態を1面トップで取り上げた。
韓国国家情報院は11月18日、韓国にもシリア難民が200人いると国会情報委員会の会議で明かした。同院は大統領直属の情報機関である。パリで起きた同時多発テロの実行犯の一人が「シリア難民」を装っていたのを受けて情報を公開した。
国家情報院によると、2015年1~9月の間に、シリア難民200人が仁川空港に到着した。出入国管理局はこのうち80人に「準難民地位」を認め、「人道的滞在者」として韓国内に入国することを許した。人道的滞在資格は、難民と認めたわけではないが、人道的な保護が必要として、韓国内の滞在を許可する制度である。出身国で拷問や非人道的待遇を受けたり、生命や身体の自由を侵害されたりする可能性がある外国人に適用する。
残りの120人は空港の外国人保護所に滞在して、入国審査を受けているという。外国人保護所には家族室もあり、食事が提供され、弁護士との接見も認められる。
韓国は難民法に従って難民を定義している。難民とは、人種、宗教、国籍、特定社会集団の構成員であることや政治的見解を理由に迫害を受けると認めるに十分な根拠がある人のことだ。
難民申請者、人道的滞在者、難民認定者は、国連難民協約に規定により、本人の意志に反して強制送還されることはない。シリアから逃れて来た人は、入国審査に時間がかかり空港内の施設に長期間留まらざるを得ないことはあっても、シリアに返されることはない。
法務部(韓国の「部」は「省」)の説明によると、シリア難民たちは内戦を理由に韓国に難民認定を申請している。しかし内戦は個人の属性ゆえに被害を受けるわけではないので韓国の難民法が定める難民の定義に当てはまらない。そのためシリア人は、人道的滞在者として内戦が終わるまで住むことはできるが、難民として認められるのは難しいという。
11月20日付の聯合ニュースと毎日経済新聞によると、1994年1月から2015年9月までの期間に、韓国に難民申請をしたシリア人は884人、韓国が人道的滞在者として入国を認めたシリア人は631人。難民として認められた人は3人。残りの人はまだ審査中である。パリのテロ事件が発生した直後にも、シリア人1人が人道的滞在者として韓国に入国した。
難民申請詐欺も発生
韓国の難民法や難民申請者に対する支援を悪用した事件も起きている。韓国検察は2015年8月、韓国に住むエジプト人難民ブローカーを摘発し、出入国管理法違反で逮捕したと発表した。逮捕されたエジプト人は、韓国の中小企業が招待したと偽ってエジプト人12人を入国させた。12人のうち9人は韓国に入国してすぐに出入国管理局に難民申請をした。
難民申請をすると、審査が終わるまで、わずかではあるが韓国政府が生活費を支給する。最初に韓国に入国する際に取得した在留資格の期限が切れても不法滞在にはならない。難民申請をして6カ月が過ぎると韓国内で就労することも自由だ。難民として認められれば生活保護者となり、住居費、医療費、教育費など生活に必要な最低限の費用が韓国政府から支給される。海外旅行も自由にできる。
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