,自然に恵まれたチェジュに海軍基地の建設計画 韓国のチェジュ島で、海軍基地の建設が進んでいる。反対派の住民は「日本の沖縄のようになってしますのでは?」と懸念している。米艦船も停泊する予定だ。天然記念物と絶滅の危機にある動植物への影響も心配の種だ。
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2010年、韓国でも日本でも、ハーバード大学マイケル・サンデル教授の「Justice: What’s the Right Thing to Do?」が大ヒットしてベストセラーになった。韓国では「正義とは何か」というタイトルで翻訳出版され、同年の販売で第1位になった。日本ではNHKが『ハーバード白熱教室』(Justice with Michael Sandel)という番組にして放映した。殺人に正義はあるか? 愛国心と正義はどちらが大切か? といった究極の選択をめぐって、学生たちが討論する講義内容が人気を博した。
この番組で討論されたような究極の選択に、韓国の国民は今、直面している。それはチェジュの海軍基地建設問題である。
チェジュの南海域は、原油をはじめとする韓国の輸出入物量の99%が通過する。年間50万隻の船が通行する。さらに、天然ガスなど230種の地下資源が地下に眠っている。海洋科学基地もある。国防部は、経済的にも軍事的にも要地であるこの海域を守るため、チェジュに新しい海軍基地を建設することを1993年から検討してきた。
そして2007年6月、国防部は、チェジュ西帰浦(ソギポ)市カンジョン村を基地の建設予定地に選定した。カンジョン村の海岸はロシア、日本、中国、台湾に囲まれる位置にある。沖縄からも近く、上海からは490キロしか離れていない。
チェジュは天然記念物と絶滅の危機にある動植物が住む“自然の島”
カンジョン村は2007年8月に住民投票を行い、海軍基地建設に反対することを決めた。宗教団体、環境保護団体が賛同し、基地建設反対運動が始まった。
チェジュには、韓国の他の地域にはない自然と遺跡がたくさん残っている。「平和の島」をうたう観光都市でもある。特に、海軍が基地の建設を予定しているカンジョン村の海岸にはグロムビ岩がある。グロムビ岩は30万~10万年前にできた亀の甲羅のように割れた黒い溶岩で、長さ1.2キロメートル、幅250メートルの巨大な一つの岩である。一つで1.2キロメートルもある溶岩の塊は、全世界にカンジョン村にしかない。
グロムビ岩の周辺には天然記念物である軟珊瑚と、絶滅の危機にある9種類の動植物が住んでいる。ユネスコは2002年、この周辺を生物圏保全地域に指定した。
カンジョン村の海はチェジュの中でもイルカが多い。海軍基地を建設するためにはグロムビ岩を爆破する必要がある。イルカも住む場所がなくなる。
By 趙 章恩
2021年3月23
-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20120321/230085/