.
2011年9月15日15時過ぎ、韓国のあちこちで予告なしの停電が起きた。筆者の住むソウルのマンション団地は停電にならなかったので、友人のTwitterのタイムラインを見て初めて知った。友人がソウル江南付近をクルマで走っていたところ、道路の信号がすべて消えてしまい、大混乱が起きているというのだ。また銀行にいた別の友人は、ATMが停止し、窓口業務も突然中断されたという。「何事なのか」とつぶやいた。
電力需給を担当する知識経済部(日本の経産省に当たる省庁)は停電が発生して2時間近くたった16時50分に「停電が起きた」と公式発表した。それまでは警察も消防も国民も、全国各地で何が起きたのか分からず、右往左往するしかなかった。
消防防災庁によると、エレベーターに閉じ込められた人からの救助要請が全国で944件、「交差点の信号が消えた」という通報が全国で2877件あったという(15日18時時点)。
停電は全国各地で20時頃まで続いた。停電は地域によって30分~1時間ほど続いた。病院や銀行は自家発電、非常電力を稼働させてなんとか業務を再開した。
知識経済部によると停電の被害に遭った地域はソウル、仁川、釜山、江原、忠清、全羅など広範囲にわたった。被害戸数は、15時10分時点で全国52万戸、16時10分時点で162万戸、19時20分時点で83万戸が停電。19時50分にはすべて停電から復旧した。
厳しい残暑のため電力需要が予想を上回る
どうして突然、全国各地で停電が発生したのか。知識経済部が、停電から3日たった18日に発表した停電報告によると、残暑のせいで電力の使用が急激に増えたからだという。
韓国では今年9月、残暑としては異常なほどの暑い日が続いた。テレビでは熱中症に注意するよう呼び掛けていたほどである。停電した9月15日の気温はソウルが32度、ほかにも幾つもの地域で30度を超す暑さだった。14時から15時の間、電力使用はピークに達した。
韓国電力は9月15日の電力使用量を6400万キロワットと予想したが、実際の電力使用はこれを321万キロワット上回る6721万キロワットだった。本来は予備電力が400万キロワット以上ないといけない。しかし15日は、夏の電力使用ピーク期間(6月27日から9月9日)が過ぎたため、定期点検のため全国23の発電所――830万キロワット――の稼働を停止していた。この他に2つの発電所が故障中だった。
さらに韓国電力は「予定通り点検を続ける」として、この高気温にも関わらず発電所を再稼働させなかった。このため、供給不足を補うための電力をすぐに確保することができなかった。
9月15日の午後、電力需要が増えるに従って、予備電力はどんどん減っていった。電力取引所は予備電力が24万キロワットを下回った15時から、地域別に30分ずつ予告なしで強制的に停電させる循環停電を始めた。全国で一斉に停電が起こるブラックアウトを防ぐためだ。電力取引所は韓国電力の一部で、発電所が生産する電力の量を決め電力需給を調整する役割をしている。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。
By 趙 章恩
2011年10月12
-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20111011/223123/