[日本と韓国の交差点] 韓国史上初、停電に備えた訓練を全国で一斉に実施

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韓国電力取引所の予測によると、8月2~3週目にかけて、予備電力が147万キロワットにまで落ちる可能性がある。雨も降らず、連日異常高温が続き、予備電力が常に「深刻」状態になる可能性もあるという。

 こうした事態を踏まえて6月下旬、行政安全部と知識経済部、消防防災庁が共同で「停電に備えた危機対応訓練」を行った。



8月の電力不足に備えて訓練を実施



 午後2時、予備電力が200万キロワット未満になったと想定して「警戒」警報を発令した。「警戒」は、全国で循環停電(日本の計画停電のように地域を分けて停電すること)をする直前の段階を意味する。「警戒」警報を受けて、オフィスビル、公共機関、大手ショッピングセンター、コンビニなどが訓練に参加した。


 ソウル市内で最も人が集まる明洞のロッテデパートや地下ショッピングセンターも参加した。警報が鳴ると、ショッピングセンターや大手スーパーは、停電対応訓練の実施を知らせるアナウンスを流がした。最小限の照明だけを残して消灯し、冷房、エレベーターやエスカレーターを停止させた。ロッテマート九老(クロ)店では、停電に合わせて自家発電を始め、20分以内に冷蔵庫・冷凍庫・照明を点ける訓練をした。デパートもスーパーも営業しながら訓練に参加したが、安全に問題はなかった。


 病院、地下鉄、マンションのエレベーターなど33ヶ所も停電対応訓練を行った。マンションでは、停電によってエレベーターに閉じ込められた人を消防隊が救助した。病院では、救急隊員が、救急患者を他の病院に移送した。地下鉄の駅では、非常用の灯りを頼りに、乗客を駅の外に避難誘導した。道路では、信号が消えたという想定で、警察が交通整理を実施した。


 警報は電力取引所が発令する。電力取引所は2011年9月15日、予告なしの循環停電を実施した。このため全国各地で大混乱が起きた。これをきっかけに電力取引所と知識経済部は警報マニュアルを改善した。予備電力の容量に応じて、段階別に警報を発令する。
500万キロワット未満:準備
400万キロワット未満:関心
300万キロワット未満:注意
200万キロワット未満:警戒
100万キロワット未満:深刻
 それぞれに応じた節電、断電などの処置を取る。


 電力取引所は2時10分、予備電力がさらに急減して100万キロワット未満に落ちたと想定して「深刻」警報を発令。2回目のサイレンを鳴らした。ここからはマンション、商業ビル、工場、学校など7都市28ヶ所で、完全に電気をとめて救助訓練を行った。協力したのは事前に自発的に訓練に参加すると手を上げたところである。



20分の訓練で548万キロワットを節電



 韓国は1972年に、毎月15日を「民防衛の日」に指定した。それ以来、全国で15~20分ほどの訓練を毎月行っている。80年代までは、北朝鮮による攻撃を想定していた。毎月15日の午後2時になると全国でサイレンが鳴り、車はその場でストップ、通行人は建物の中に入って15分ほどじっとしていなければならない。90年代に入ってからは地域ごとの特性を生かした災難対応訓練に変わり始めた。例えば海の近くなら津波避難訓練、土砂崩れの危険性がある地域は周辺の点検、といった具合だ。



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