[日本と韓国の交差点] 韓国大統領選、安哲秀氏の支持率が上がった理由

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5月9日に行われる第19代・韓国大統領選挙まで、残り1カ月を切った。

 北朝鮮は弾道ミサイルを再び発射。米中首脳会談で、北朝鮮の核・ミサイル開発の解決に向けて協力を強化することに両国首脳が合意した。

 海の上の軍事基地と呼ばれる米海軍の航空母艦カール・ビンソンは4月8日、シンガポールからオーストラリアに向かう計画を変更し、再び朝鮮半島に向かった。北朝鮮に対して存在感を示すためだ。同空母は3月15日から2週間、韓米連合軍事訓練のために釜山港に入港していた。

 韓国内では、大統領不在による外交・安保の停滞が深刻に受け止められている。その影響からか、大統領候補の支持率にも変化が表れ始めた。

 19代大統領選挙には、各党から選ばれた5人が出馬している。進歩派は、共に民主党のムン・ジェイン(文在寅)候補と正義党のシム・サンジョン候補が。保守派からは、自由韓国党のホン・ジュンピョ候補と正しい政党のユ・スンミン候補が。そして進歩と保守の間にある中途派からは国民の党のアン・チョルス(安哲秀)候補が立った。

 各新聞とテレビ局が4月9日に行った世論調査では、文在寅氏と安哲秀氏の支持率がほぼ拮抗。安哲秀氏の支持率の方が高いと報道するメディアもあった。今までは文在寅氏が圧倒的な支持を集めていた。

 複数の韓国メディアは、「20~40代が支持する文在寅氏と50~60代が支持する安哲秀氏の競争になった」と報道している。完全な進歩派か、保守と進歩の間にある中途派か、の選択になった。

 50代以上の根強い保守支持層が安哲秀氏を支持し始めたことから、同氏の支持率が急上昇しているという。保守派支持層は、保守派の候補が当選する可能性はないので、次善の選択として安哲秀氏を支持している。進歩派だけど、文在寅氏は支持しないという人達がこれに加わった。

 文在寅氏は学生時代に民主化運動に参加した。弁護士出身で、故ノ・ムヒョン大統領の秘書室長、共に民主党の党代表を歴任した。安哲秀氏は元医者。パソコンのウィルス退治ソフトを開発しベンチャーを立ち上げた起業家でもある。KAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)・ソウル大学教授、国民の党の元共同代表を歴任した。

 2人とも2012年の大統領選挙には、進歩派の大統領候補として出馬した。進歩派支持層の票が分散するのを避けるため候補を一本化しようと安哲秀氏が選挙前に候補を辞退。朴槿恵前大統領と文在寅氏の一騎打ちとなった。進歩派候補だった2人が今回、ついに大統領選挙でぶつかることになった。

 文在寅氏と安哲秀氏は12年には同じ進歩派の候補だったが、現在は正反対のイメージになった。文在寅氏はセウォル号事件の被害者家族と一緒に断食をしたり、ろうそく集会に熱心に参加したり、庶民の味方というイメージを築いた。

 保守支持層からは「親北で過激な人」と見られている。「財閥改革」「積弊を清算する」「大統領になったら金剛山観光を再開、開城公団を拡大する。北核問題を解決するためには対北経済協力が必要で、これは韓国企業の利益にもなる」などを主張してきたからだ。

 一方の安哲秀氏は成功した起業家で学者、エリートのイメージが強い。保守派の「『正しい政党』とも手をつないで協治する」と発言したことから保守支持層にとって受け入れやすい人物といえる。

By 趙 章恩

 日経ビジネス

 2017年4月

-Original column

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/215834/041100062/

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