[日本と韓国の交差点] 韓国民の不安を高めた「4日間」

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韓国の原子力発電所は安全?


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韓国の春は黄砂と共に訪れる。中国からやってくる黄砂は年々ひどくなっている。駐車場に置いてある車が、まるで砂漠を走ってきたような埃をかぶる。家の中でも空気清浄機が必要なほどだ。

 それに今年は福島原発から漏れ出した放射性物質が風に乗って世界中に広がっているというニュースも流れている。日本と同様に韓国も3月から4月にかけては花見のシーズンである。だが、黄砂と放射性物質への不安から花見客が減りそうだ。



韓国民の不安を高めた「4日間」



 韓国気象庁は「風向きから判断して福島原発の放射性物質は韓国まで届かない、韓国は安全だ」としてきた。ところが3月27日、韓国原子力安全技術院は「韓国の東北部にある江原道で、極微量ではあるが、放射性キセノン(Xe-133)が大気中から検出された」と発表した。続いて28日には環境放射線監視センターが「ソウルの大気中から極微量の放射性ヨード(I-131)が検出された」と発表した。


 韓国内には、政府機関のこうした発表を信頼できないという不満が目につく。江原道の放射性キセノンは23日に検出されていたが、韓国原子力安全技術院はこれを4日経ってから発表した。健康に影響のない数値であっても、「4日も隠した」ことが韓国民の不安につながっている。韓国民は「放射性物質が検出されたことを政府は今後も隠すのではないか」と疑っている。


 ソウルの放射性ヨード(I-131)については「検出されていない」という報道もある。だが、政府がはっきりした情報を公開しないので、韓国民は不安に思っている。


 放射性物質が怖いのは、目に見えないから、そして、直ちに人体へ影響を与えることはなくても将来的に影響を及ぼすかもしれないからである。しかし、それより怖いのは「情報が当てにならない」からではないだろうか。


 韓国のテレビにコメンテーターとして登場する“専門家”の発言も、人によって異なる。「微量であっても放射性物質は人体に影響を与えるので注意すべき」と言う人もいれば、「韓国は安全なので全く問題ない」と言う人もいる。原発の状況や放射性物質がどれぐらい広がっているのかについて、曖昧なことばかりで、何を信じればいいのか分からない状況が2週間以上続いている。


 ネットで「福島原発の放射性物質が韓国に届くのは○○日」といったデマを広げた人を追跡して逮捕したというニュースがあった。「正確な情報」がないからデマがどんどん広がってしまう。



政府の発表は信頼できる?



 多くの韓国民がこう思うようになっている――韓国政府は国民を安心させるために情報を隠している。「実は○○だった」という報道で実態を知るのではないか?


 東亜日報が3月28日に発表した世論調査(20歳以上男女3000人を対象)では、韓国政府による「福島原発事故による放射性物質は韓国までは届かない、安全だ」という発表に対して「政府が発表した通り安全だと思う」と答えた人は5.9%しかいなかった。「絶対に安全なはずがない」26.3%、「短期的に安全でない」12.4%、「長期的に安全でない」55.4%と、不安に思っている人が圧倒的に多かった。



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By 趙 章恩

2011年3月31


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110330/219224/

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