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韓国政府が11月29日、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加への関心を表明した。関心表明に至るまでは長い時間がかったが、決めたら後はパリパリ(早く早く)精神が稼働。韓国政府はTPP交渉に参加するための手続きを猛スピードで進めている。
具体的には、既にTPP交渉に参加している国との2国間予備協議を始めた。12月3~6日にはインドネシアで開催された世界貿易機関(WTO)閣僚会議の場で、12月7日からはシンガポールで開催されているTPP閣僚会議の場で、いくつかの国と接触した。韓国がTPP交渉に参加するためには、先にTPP交渉に参加している12カ国の同意を得る必要がある。
12月5日には、TPP交渉参加国であるオーストラリアとの間でFTA(自由貿易協定)について合意した。2010年5月以降、交渉が中断していたが、2013年11月から交渉を再開し、1カ月余りで妥結した。韓国とオーストラリアの国会が批准すれば、正式にFTA締結となる。
オーストラリアとのFTAによって、韓国は牛肉市場を開放する代わりに、自動車と家電をオーストラリアに輸出しやすくなる。産業通商資源部は、交渉が続いているニュージーランド、カナダとのFTAもなるべく早く締結する方針だ。同部は「特にカナダとのFTA交渉はもうすぐ妥結しそうだ」と発表した。
韓国政府は、TPP交渉に参加している国と韓国がFTAを締結すれば、韓国のTPP交渉参加を断ることはないと判断したようだ。韓国はTPP交渉に参加している多くの国――米国、ペルー、チリと2国間FTAを、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、マレーシアとは韓=ASEAN FTAを締結している。TPP交渉参加国でFTAを結んでいないのは日本とメキシコだけだ。
中国の反応を慮かってきた
韓国政府はこれまでTPP交渉に参加するかどうか、なかなか決められずにいた。韓国は、安全保障は米国に、経済は中国に依存している。同政府としては、中国がけん制するTPP交渉に参加することで中国の機嫌を損ねるのではないか、という悩みがあった。
韓国の複数のメディアは、「韓国政府は2013年3月ぐらいから米国の勧誘を受けて交渉参加を決めた。10月には、TPP交渉に参加することを中国に知らせた」と報道している。
次のように分析する記事もある。
「2013年4月、日本がTPP交渉に参加することが承認された。多くの国とFTAを締結している韓国より日本の方が、有利な条件で貿易ができるようになる。これをけん制するために韓国もTPP交渉に参加することにした。このままでは韓国だけ取り残されてしまう」
「韓米同盟を確固たるものにするため、バイデン米副大統領の訪韓前にTPP交渉参加への関心を表明した」
「中国が防空識別圏を設定したことを受け、中国に抗議するため、米国が主導するTPP交渉参加への関心を表明した」
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趙 章恩2013年12月10日
-Original column