[日本と韓国の交差点] 韓米による連合訓練開始、史上最大規模へ

.

韓国の新聞とテレビニュースは3月7日と8日、韓米軍の連合訓練「キー・リゾルブ(Key Resolve)」と「ドクスリ練習(Foal Eagle=鷲)」が始まったと大々的に報じた。この訓練は毎年行われるが、今年はこれまでで最大規模だという。

(YONHAP NEWS/アフロ)

 韓国軍約30万人、米軍約1万7000人が参加し、3月7日から4月30日まで約2カ月間訓練を行う。今年は「作戦計画5015号」に取り組む。

 「作戦計画5015号」は米太平洋軍司令部が立てた作戦で、韓国のチェ・ユンヒ合同参謀本部議長とカーティス・スカパロッティ韓米連合司令官が2015年6月に合意し署名した。敵(北朝鮮)が韓国を攻撃する姿勢を見せたり、局地的な挑発を行ったりしたときに先制攻撃する(北朝鮮の軍事設備を先に攻撃して全面戦になることを防ぐ)という内容だ。去年までの訓練は「作戦計画5027」と呼ばれる全面戦争を想定した訓練だった。北朝鮮が韓国を攻めてきたら韓国の北部で韓国軍が阻止、その間に、米軍を増員して反撃する内容だった。

 朴槿恵大統領は3月7日、大統領官邸で首席秘書官会議を開き、「史上最大規模の韓米連合訓練が始まる。(訓練を通じて)安全保障に対する国民の信頼を高めるとともに、北朝鮮には、追加挑発をすると相応の対価を払うことになることを確実に理解させてほしい」と述べた。

 韓国の公営放送KBSが3月7日に伝えたニュースによると、米軍は最先端武器を続々と韓国に輸送している。垂直に離着陸できる攻撃機6機と各種ヘリコプター、強襲揚陸艦のボノム・リシャール(USS Bonhomme Richard、LHD-6)とボクサー(USS Boxer、LHD-4)、航空母艦ジョン・C・ステニス(USS John C. Stennis、CVN-74)とB-2ステルス爆撃機などである。KBSは、北朝鮮が韓米連合訓練に強く反発していることから、韓国をとりまく緊張感が一層高まったとも報じた。

防衛から先制攻撃にシフト

 ケーブルテレビの報道専門チャンネルYTNは3月8日、次のように報じた。「作戦計画5015号」は4D作戦訓練でもある。4Dとは探知(Detect)、崩壊(Disrupt)、破壊(Destroy)、防衛(Defense)を順番に行うもの。まず、北朝鮮の動きを探知する。異常が認められれば、金正恩第1書記を含む指導部を崩壊させる。金第1書記は、攻撃の最終命令を下す朝鮮人民軍最高司令官でもある。次に北朝鮮の武器を破壊し、韓国を防衛する。この4つを繰り返し訓練する。

 「作戦計画5015号」の採用は、韓米連合訓練の目的が韓国の防衛から北朝鮮の指導部に対する攻撃に変わったと理解することもできる。YTNのニュース番組に出演した軍事専門家は、「北朝鮮が核兵器を使った場合、攻撃されてから反撃するのでは遅すぎるので防衛のために先制打撃をする必要がある」と解説した。

 加えて韓米の海兵隊は今年、例年とは異なり上陸訓練を行う。最新鋭の強襲揚陸艦を使って兵士が速やかに上陸。北朝鮮の奥地まで進軍し、指導部を制圧する訓練を行う。このため、北朝鮮は敏感になっているようだ。海兵隊の上陸訓練には韓国と米軍だけでなくオーストラリアとニュージランドの海軍も参加する。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。





By 趙 章恩
 日経ビジネス
 2016年3月11
-Original column

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *