3月5日の午前7時40分頃、リッパート駐韓米国大使が講演会場で襲撃され、顔や手に大けがをする事件が発生した。同大使が出席した講演会は、民族和解協力汎国民協議会が主催したもの。この団体は1998年の設立。北朝鮮に対する人道的支援や韓国と北朝鮮の統一に向け社会各層の人々が話し合える場を作ることを目的に政党、宗教団体、市民団体が会員となり活動する協議体である。韓国警察は同大使を刃物で切りつけた男を現場で取り押さえ、捜査を進めている。
同警察は3月9日午前、捜査状況を説明する記者会見を行った。キム・ギジョン容疑者は「韓国軍と米軍が行っている合同軍事演習に抗議するため襲撃した。2010年7月に駐韓日本大使に向けてコンクリートの破片を投げたことがあるが、あまり脅しにならなかった。なので今回はナイフを用意した。殺害するつもりはなかった」と話しているという。
3月5日付の聯合ニュースによると、キム容疑者は「南北対話を妨害する演習を中断せよ。戦時作戦統制権(戦争時に軍隊を総括的に指揮、統制する権限のこと)を韓国に奪還せよ」と書いた印刷物を会場に持ち込み、参加者数人に配った後、突然、リッパート大使を襲ったという。
韓国警察はキム容疑者を殺人未遂だけでなく、国家保安法違反の容疑でも取り調べていると明かした。「目撃者が、キム容疑者は果物ナイフを使ってあごの近くを2回以上切りつけたと証言している。このため、同容疑者に米国大使を殺害する意図があったと判断している」と説明した。
同警察は、「キム容疑者の犯行の動機や背後に関係者がいるかどうかを調べるため同容疑者の自宅を捜査したところ、北朝鮮体制を擁護する資料が10点見つかった。国家保安法第7条で定める利敵表現物所持の容疑でも集中的に捜査している」「米連邦捜査局(FBI)とも積極的に協力している」とも語っている。
韓国メディアは、警備体制に問題があったのではないかと指摘している。招待状を持たないキム容疑者が講演会場に入れた、重要人物である大使がいるにもかかわらず荷物検査がなかった、しかも大使のすぐ隣のテーブルに座れた、ことなどが明らかになったからだ。これに対して韓国警察は、当日の警備体制に問題はなかったとしている。
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米国務省のハーフ副報道官は3月6日、駐韓米国大使の襲撃事件に関して「それでも米韓同盟が揺らぐことはない。これからも堅持する」と述べた。
警備に関しては「参加者名簿がどのように作成されたか、参加者はどのように入場したのかなど事実確認を行っている。駐韓米国大使はソウル警察庁が24時間フルタイムの警護をしていた。ソウルはとても安全で危険地域ではない。襲撃事件については捜査中で、セキュリティーの強化が必要な場合は警護を追加する」と説明した。襲撃事件をテロと見なすかという質問に対して「この事件はひどい暴力行為である。それ以上の言葉でこの事件を規定することはしない」と答えた。
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