[日本と韓国の交差点] TPP進展受け「韓国は参加しなくていいのか」の声

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TPP(環太平洋経済連携協定)交渉に参加する12カ国は10月5日、大筋合意に達したと発表した。韓国はこれまでTPP交渉参加にそれほど関心がなかったはず。だが5日の発表を受けて、韓国メディアは火がついたようにTPP特集を組み始めた。

 「超巨大貿易市場TPP妥結、一歩遅れた韓国」「TPP参加国のGDPは世界の4割、韓国はTPPに参加しないのかできないのか」「米日が安保に続いて経済同盟も強化、韓国は疎外」など、TPPに参加しなかった韓国政府を問い詰める見出しが続いた。

 米国は2011年から2013年4月まで、TPP交渉に参加するよう韓国に繰り返し呼びかけていた。韓国は一度断ったものの、2013年末には交渉に参加したいと米国に打診した。しかし既に時遅し。韓国がTPP交渉に加わるには、先にTPP交渉に参加している12カ国の同意が必要となった。

 韓国は、TPP交渉に参加している国と韓国がFTA(自由貿易協定)を締結すれば、これらの国が韓国のTPP交渉参加を断ることはないとして、熱心にFTA締結に取り組んだ(関連記事「韓国TPP交渉への参加~「実質的には韓日FTA」との批判も」)。

 複数の韓国メディアによると、米国通商代表部のウェンディ・カトラー代表補は、「韓国がTPPに参加するのは自然な流れだ」として、積極的に参加を呼びかけた。しかし、韓国政府は2013年4月、中国とのFTAを大事にして、TPPに参加しない方針を表明した。

 ところが、その3カ月後に、韓国外交部(「部」は日本の「省」に相当)はTPPが韓国の国益になるという分析結果を発表。2013年末になると韓国政府は「TPPに参加したい」と立場を変えた。今度は米国側が韓国のTPP交渉参加を断った。韓国メディアはそれ以降、TPPのことをほとんど報道しなくなった。

TPP交渉に参加しなかったことを与党が批判

 TPP交渉の大筋合意が報じられた翌日の10月6日、チェ・キョンファン経済副総理兼企画財政部長官は、「(韓国政府は)どんなかたちであろうとTPP交渉には参加する方向で検討している。ただし、米(コメ)市場は開放しない」「FTAに集中していたのでTPPは疎かにしていた」と発言した。韓国メディアは「韓国の経済政策を担当するトップがTPPに参加できず焦っているような姿を見せた」と大々的に報道した。

 10月7日、国会で外交関連の国政監査が行われた。国政監査とは年一度、国会議員らが行政機関の仕事ぶりを評価し、政策や予算の使い道などを監査するもの。議員らは国政監査の場に長官を呼び出して質問攻めにする。長官はうろたえ、議員が「そんなことも答えられないのか」と叱るのがお決まりの展開だ。

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By 趙 章恩

 日経ビジネス
 2015年10月13
-Original column

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