業績好調の韓国電池3社が参加、官民共同の協議体で「2030年に次世代電池で世界1位」

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2023年7月13日、韓国で「2030年に次世代電池で世界1位の国家になる」ことを目指した「次世代二次電池官民協議体」が発足した。この協議体は「国家戦略技術育成に関する特別法」の具体策として2023年4月に発表された3大主力分野の超格差研究開発戦略によるものである。世界的に技術覇権競争が熾烈(しれつ)になる中、先端産業の発展と安全保障のために国家の総力を結集して対応する必要があるとして、韓国政府は「半導体」「ディスプレー」「二次電池」を研究開発の3大主力分野に指定、今後5年間に官民合わせて160兆ウォンを投資する。さらに、産業界のニーズと意見を反映して積極的に新規研究開発を進め、人材養成と国際協力の基盤をつくるため、それぞれ協議体を発足して産学官が力を合わせることにした。

 次世代二次電池官民協議体は、韓国のLG Energy Solution(LGエナジーソリューション)、Samsung SDI(サムスンSDI)、SK On(SKオン)のいわゆるKバッテリー3社と、科学技術情報通信部(「部」は日本の「省」に当たる)、産業通商資源部、韓国バッテリー産業協会、韓国電気化学会など、産学官を代表する企業と機関が参加する。科学技術情報通信部は「協議体の発足により産学官が常時協力し、次世代電池の世界1位国家を2030年よりも前倒しで実現できることを願う。政府も戦略的に研究開発支援を強化する」とコメントした。

 発足に当たっての記念イベントではLGエナジーソリューションのソン・グォンナム次世代電池開発センター長が開発状況について発表した。同社は、高容量リチウム硫黄電池や高分子系半固体・全固体電池の開発に重点を置いており、2030年までの商用化ロードマップを発表済みである。例えば、2028年には液体電解質を最小限にした高分子系全固体電池を量産、2030年には硫化物系全固体電池を実用的な水準に高めて商用化する。

 高容量リチウム硫黄電池に関しては、2027年に重量エネルギー密度が500wh/kgのセルを開発し、アーバンエアモビリティー(都心航空モビリティー)に適用する計画である。プラスチック素材の高分子を活用した全固体電池は既存のリチウムイオン電池の製造工程をほぼそのまま活用できることから、新規工程開発の負担が軽くなる。高分子固体電解質と酸化物系固体電解質をハイブリッド化することで性能向上を狙った取り組みもあり、液体電解質を一部混ぜた半固体電池を開発中である。安定性を高めるため液体電解質の割合を減らす研究を進めているという。

 全固体電池の商用化に向けて素材の研究にも力を入れていて、固体電解質の価格をより安くするために様々な企業と協力している。バッテリー分野のスタートアップに投資するバッテリーチャレンジや、世界の大学や研究機関を対象に開発費を支援するバッテリーイノベーションコンテストも実施している。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2023. .7

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00090/

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