次世代はリチウム硫黄電池か全固体電池か、EV火災で安全性に脚光

.

2020年10月21~23日、韓国最大の電池関連の展示会「InterBattery 2020」がソウル市内のSeoul COEXで開催された。新型コロナウイルス感染症の影響を受けつつも、過去最多の198社が出展した。電気自動車(EV)を巡って電池の重要性がますます高まる中、「ビッグ3」と呼ばれるLG Chem(LG化学)、Samsung SDI(サムスンSDI)、SK innovation(SKイノベーション)の3社が展示や技術戦略発表でも激しい争いを繰り広げていた。

 EV用電池で世界シェア1位のLG化学は、冷却機構一体型電池モジュールや安全性強化分離膜「SRS」の技術について展示した。前者は、電池モジュール全体の構造が簡素になり、電池容量を増やせるという。韓国では、Hyundai Motor(現代自動車)のEV「Kona Electric」の火災事故を意識した展示ではないかと見る人が多かった。

 LG化学は、SRSの米国特許3件と正極材の米国特許2件をSKイノベーションが侵害したとして米International Trade Commission(国際貿易委員会、ITC)と米国デラウェア州の連邦地方裁判所に訴訟を起こした。20年12月10日に最終判決が下される予定である。韓国企業同士の特許訴訟だけに韓国ではとても注目されており、韓国メディアはLG化学とSKイノベーションの展示内容の比較や、SKイノベーションの役員がLG化学のブースを見学したことなどを大きく報じていた。

 LG化学は、重量エネルギー密度が410Wh/kgのリチウム硫黄電池2種類、高分子固体電解質、硫化物系固体電解質も公開した。同社によると、リチウム硫黄電池は25年に量産予定で、20年8月には韓国航空宇宙研究院の高高度長時間滞空太陽光無人機「EAV-3」に搭載され、テスト飛行に成功した。

27年に全固体電池セル量産へ

 一方、サムスンSDIの展示で最も注目されたのは、全固体電池の開発ロードマップだ。具体的には、20年に素材開発完了、23年に小型セル検証、25年に大容量セル検証、27年以降にセル量産という目標を掲げている。同社は、全固体電池の技術に関して20年3月にNature Energy誌に論文が掲載された。

 SKイノベーションは、自社ブースで「SKイノベーションの電池火災事故0件」を強調した。これは、SKイノベーションを特許侵害で提訴したLG化学への対抗を狙ったものとみられている。同社のブースには、同社の電池を採用した韓国Kia Motors(起亜自動車)のEV「Niro EV」も展示されていた。Niro EVは、Kona Electricと同格のEVである。SKイノベーションのブース担当者は「10年からエネルギー貯蔵システム(ESS)やEVに向けてバッテリーを供給しているが1度も火災は起きていない」と、火災に焦点を合わせた説明をしていた。

 SKイノベーションは、次世代電池として「Ultra Long Multi-tab Cell」も公開した。各極に1つずつだったタブをもう1つずつ追加したもので、タブを2つずつにすると性能低下を引き起こす内部抵抗を減殺する効果があるという。実用化は未定である。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2020. 11.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00018/


Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *