減少する日本のパソコン市場を支えるのは観光客かも? [2007年11月21日]


知人の一人が先週、「秋葉原で新品同様の中古のVAIOノートを韓国の販売価格より8万円も安く買えた!」と大喜びしていた。


 韓国は部品を輸入に頼っているせいか、ノートパソコンを初めとするデバイスは総じて高い。だから、韓国人は日本に行くと、真っ先にノートパソコンを買って帰りたいと思っている。その知人は同時に私にこう勧めた。「趙さんも日本に行くたびに買ってくればいいのに。数台買ってきてオークションで売ればこれは儲かるよ!」 円安の影響ももちろんあるが、確かに日本の方がノートパソコンや周辺機器は安い。だから、日本に行くたび、知人にはデジカメだとかイヤホンだとかをよく頼まれる。


 でも、韓国人には大人気なのに、日本ではパソコンの人気が落ちているようだ。AP通信によると、日本は過去25年間の中で初めて、パソコン市場規模が減少している国となったという。IDCの調査によると、日本のパソコン販売台数は5期連続で減少していて、2007年第2四半期の販売台数もデスクトップが4.8%、ノートパソコンが3.1%減少している。NECの2006年のパソコン販売台数は前年比で6.2%減少。ソニーのパソコン販売台数も2006年は前年比で10%ほど落ち込んだまま回復の兆しが見えないという。


 パソコンが家庭にないといけない理由が見当たらず、パソコンを会社でしか使わない傾向が年々高まっているからではないだろうか。日本ではメール、ネット検索、ゲーム、映像、コミュニティー、バンキングなど、ほかの国の人がパソコンでやっていることを携帯電話で済ませられる。携帯電話だけでなく、ネットにつながるゲーム機やハードディスク録画機がある。海外ユーザーのように動画のダウンロードに必死になることもないのだろう。


 韓国では、携帯電話と言えば「ネット=携帯電話」と考える日本人が多いことに驚く。携帯電話はあくまでも音声通話が目的で、その他の機能はパソコンとの間を埋め合う存在だと韓国人は考えているからだ。もちろん、日本人のように、携帯電話でSMS(ショートメッセージサービス)ではなくeメールを送受信するようなことはしない。日本人が、家にパソコンもなく携帯電話だけで生きていけるなんて、外国人から見ると不思議な現象なのである。

日本のパソコン市場とはうらはらに、韓国のパソコン市場、特にノートパソコン市場の成長が続いている(
「ウォン高?個人主義?ノートPCの需要が急増」を参照)。サムスン電子とLG電子の2007年7~9月のノートパソコンの売り上げは、それぞれ前年比で台数は9.8%と12.8%、売り上げは63.6%、48.5%も成長している。パソコン全体の市場の好調で、サムスン電子とLG電子が市場の48.7%を占めている中で、ヒューレット・パッカード、デル、東芝、富士通の販売数量も増えている。


 とはいえ、韓国のパソコン市場が好調な理由は、家庭向けが増えているわけではなく、企業や役所が予算を使い果たすためにパソコンの入れ替えを始めからではないかとも分析されているから楽観ばかりはしていられない。


 それに、パソコンはネットが使えるぐらいで十分、動画はインターネットテレビを申し込んでテレビから見るという家庭も徐々に増えている。以前はパソコンを買う理由に、Eラーニングを利用して子供の教育に役立てるとか、株の取引をして財テクしたいとか、ドラマの再放送や動画が見たいとか、オンラインゲームがしたいとか、パソコンでしかできないものが色々あった。しかし、通信と放送の融合が進み、映像コンテンツをパソコンからもテレビからも携帯電話からも利用できるようになった今では、テレビの代わりにパソコンを利用したり、テレビからパソコン機能を利用したりと、パソコンと家電の融合も進んでいる。今やテレビとセットトップボックス、あるいは携帯電話だけでもパソコンを代替できるようになってきている。


 通信会社のKTとHanaroTelecomのインターネットテレビ競争は漸入佳境、街角で派手にパフォーマンスをしたり、面白いテレビ広告を流したり、本業のブロードバンドインフラより、映像関連事業にもっと興味を持っているようにも見える。パソコンからインターネットを利用するよりもテレビからインターネットを利用する人が増えてくると予想しているからだろうか。


 あまりパソコンは使わない。でも1台はあった方が便利。となれば、高品質の製品を韓国より安く買える日本でノートパソコンを買って帰る人がますます増えるかもしれない。秋葉原の大型家電売場なんて中国語と韓国語の案内を書いてあるところも多いし、羽田空港の免税店でも韓国人の店員がノートパソコンを売っていたし。


 そうそう、余談だが、秋葉原で安くノートパソコンを買った知人は、秋葉原のおかげで日本嫌いが直ったとも話していた。中古ショップの店員も、カレー屋の店員も、道を歩く人たちも、あまりにも親切で感動したとか。客引きして強引に売り込もうとしたり、売ったら態度を変えてささっと出て行けとばかりに凄んだりする韓国の電気街とは比べにならないと絶賛していた。


 「『日本は韓国を侵略して植民地支配した国だから悪者。日本人はみんな裏表があって冷酷な人たち。』なんて思っていたのに、全然違うね~。また東京に行きたくなっちゃった」と話していた。そういう話を聞くとまた一つ誤解が解けたようで嬉しくなる。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

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