火災原因は不明のまま、韓国政府がEV恐怖症払拭に躍起

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前回の本コラムで、2024年8月1日早朝、韓国・仁川市のマンションの地下駐車場にあった電気自動車(EV)の発火による火災が発生したことを報告した。被害額は100億ウォン(11億円、1ウォン=0.11円で換算、以下同)を超える見込みだという。発火したEVはドイツMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)の「EQE」である。

前回の記事

中国製バッテリー搭載EVが韓国マンション地下駐車場で全焼、約1580世帯に被害

 EQEの発火の原因はまだ調査中であるが、韓国法人のメルセデス・ベンツコリアは人道的立場からこのマンションの住民のために45億ウォン(約5億円)を寄付した。8月14日と20日にはメルセデス・ベンツコリアの最高執行責任者(CEO)であるMathias Vaitl氏が避難所を訪問し、住民らと今後の支援について話し合った。さらに、メルセデス・ベンツコリアは自社EVの無償点検を行うことにした。ドイツ本社からも韓国へ技術者を派遣し、国立科学捜査研究院の発火原因調査に協力しているという。メルセデス・ベンツコリアはEQEのリコールについては、発火の原因が明らかになってから決めたいという立場を示した。

 今回の火災をきっかけに、韓国国土交通部(部は省に当たる)は韓国でEVを販売するメーカーに特別安全点検を実施するよう勧告した。8月13日から韓国Hyundai Motor(現代自動車)、同Kia Motors(起亜自動車)、メルセデス・ベンツ、ドイツBMWなど、全てのEVメーカーがバッテリーの状態や外部損傷などの点検を行っている。8月16日には韓国国土交通部の長官が現代自動車の「EV特別点検センター」を訪問しその進行状況を確認したほどである(図1)。

図1 韓国国土交通部の長官による現代自動車の「EV特別点検センター」視察の様子

図1 韓国国土交通部の長官による現代自動車の「EV特別点検センター」視察の様子

(出所:韓国国土交通部)

 大統領室は8月25日、消費者の知る権利とEV恐怖症をなくすための対策として韓国で販売する全EVのバッテリー情報公開を義務化することにした。既に8月16日から国土交通部の勧告により全22のEVメーカーが全69種のモデルについて、どの会社のバッテリーを搭載しているのかを国土交通部の自動車リコール情報ポータルサイトで公開している。

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 また、一部自治体はEVを100%充電してはならないとして90%以上充電したEVは地下駐車場に入れないというルールを作ろうとした。これに対して、EVメーカー側からもともとバッテリーの総容量から安全マージンを取ってあるので100%充電しても安全だと緊急発表がなされた。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト) 

(NIKKEI TECH) 

2024. 9. 

-Original column 

火災原因は不明のまま、韓国政府がEV恐怖症払拭に躍起 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

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