熱気ムンムン、W杯もスマートフォンもヒートアップする韓国

「Again2002!」韓国は今年もワールドカップの街角応援準備で大忙し。ソウルではどこを歩いても赤い悪魔(公式サポーター)のTシャツを着た人や、ワールドカップを応援する企業広告に出会う。赤いTシャツや国旗をリフォームした若いお姉さん達のへそ出しルックも、ワールドカップ期間中はあまりとがめられない。企業が運営する真っ赤な応援ブースが街のあちこちに作られ、代表選手らへのメッセージで埋め尽くされている。携帯キャリアによる独自の動画サービスとして、携帯電話で見られる試合中継も決まり、後は開幕を待つのみといったところである。

 しかし、今年の夏はワールドカップに負けず熱く盛り上がっていることがある。それはスマートフォンとiPad向けのアプリケーション。「アプリ長者」の神話はまだ続いていて、学生も社会人も、話しのネタは「どこそこのアプリケーションがもうかっているらしい」、「どこそこの会社がアプリケーション市場に新しく参入した」ということばかり。スマートフォンといううずまきに全国民が巻き込まれていて、それはもう、とりつかれたような盛り上がりなのだ。ワールドカップの応援だって、スマートフォンのアプリとして応援歌が登録され、Twitterやマイクロブログを使って街角応援の日程を決めている。



スマートフォンのワールドカップ応援アプリ

 スマートフォンが生活に本格的に根付き始めた今日この頃、キャリアが中心となってぽつぽつ開催されていたアプリケーション制作教育を政府機関がまとめて無料で実施し、創作を支援するという制度が始まった。中小企業庁が音頭を取ってキャリアとベンダー、大学を集めて「アプリケーション創作支援協議会」を結成し、キャリアや携帯電話端末会社が個別に実施していた開発者向け教育をまとめて全国の大学で行うことにしたのだ(大学10校と産業振興院合わせて11機関がアプリケーション創作センターに指定された)。ここにはなんと“韓国の東大”、国立ソウル大学も含まれている。


 Android、iPhone OS、Windows Mobileだけでなく、サムスンのOSであるBADA向けアプリケーション開発教育も実施される。第1回には700人を募集し、基本教育120時間、OS別に分けて15時間の講義を行う。誰でも参加可能というわけではなく、C言語やJavaなどのプログラミングをある程度は知っている人が対象となる。地域住民が参加する「アプリケーション創作サークル」の育成も支援するというから面白い。


その昔、90年代後半のIMF経済危機でリストラされた人たちがPCバン(ネットカフェ)をオープンしてブロードバンドとオンラインゲーム普及に大きく貢献したように、今度は就職難の若い人達を個人のアプリケーションデベロッパーに育てて、スマートフォンやiPadのようなタブレットPC、WebTVなどの端末市場はもちろん、モバイル市場活性化と競争力を強化するのが狙い。


 また、ソウル市も通信事業最大手のKTと提携し、ソウル市が持つ公共DBを応用して誰もがアプリケーションを開発できるよう支援している。このアプリケーションさえあればソウルでの生活が楽しくなるといった内容のPRもしていて、優秀なアプリケーションを積極的に支援していくとしている。ソウル市の3カ所にアプリケーション開発センターをオープンし、OS別スマートフォンやテストサーバー、Appleのノートパソコンを利用できるようにするという。海外のアプリケーションストアに登録する前のテストも行い、海外進出もサポートしてくれるという。


 中央省庁の文化体育観光部と行政安全部は6月14日より政府主催のアプリケーション公募を始める。公共DBを応用したアプリケーションも審査対象となるため、自治体にも公共DBをアプリケーション向けに公開するよう呼びかけている。プログラミングは分からないけど、こういうアプリケーションがあるといいといった企画だけの応募も受け付けているので、主婦や中高生の参加も期待される。賞金総額は日本円で1000万円ほど、ホームページ(www.koreaapps.or.kr)で公開して宣伝もしてくれる。





アプリ公募を受け付ける政府の
Webサイト

政府主導でアプリケーション開発を支援し、世界を舞台にしたアプリケーション販売で利益を上げられるようにすれば、韓国のモバイル競争力も高まり同時に就職難も解決!めでたしめでたしというわけだが、そう上手くいくものかな? アプリケーションって技術よりもアイデア勝負だったりするので、プログラミングの腕よりは「ひらめき」の方が大事なのではないだろうか。そういう「ひらめき」って大学の無料講座を履修しただけでぽんぽんわき出るようなものでもないし、結局予算の無駄使いになったりして。


 筆者の懸念をよそに、デベロッパーを目指す大学生の間では「Appleのパソコンを持っていないとApple向けのアプリ開発は難しいので高いパソコンを使えるようにしてくれるのは助かる」、「サムスンのBADA向けにもApple向けにもアプリを開発できるように学校の中で教えてくれるので時間の節約になる」と好評のようだ。


 ワールドカップの応援にアプリケーションブームに、韓国の6月は熱気ムンムンです。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年6月10日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100609/1025444/

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