独自開発タブレットから教育ロボまで! スマートラーニング花盛り

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 韓国で「KUMON」や訪問先生が学習管理をしてくれる「赤ペン」、子ども向け科学雑誌など学習誌サービスを提供する大手教育企業のKyowonは2012年6月4日、教育用10.1型タブレットPC「MyPad」を発売すると発表した。MyPadからは、スマートラーニング向けに画面を作り直したKyowonの全学習誌と科学雑誌、Eラーニング講座とラーニングマネジメントシステムを利用できる。


 教育会社がキャリアと提携してEラーニングやアプリを制作して販売することは今までもあったが、タブレットPCまで自前で作ってしまったのはこれが初めて。MyPadはAndroid OSで16GBのタブレット。カーナビ会社のティンクウェアが製造した。Androidタブレットが持つ機能も使えるが、Kyowonの教育コンテンツはMyPadからでないと利用できない。Kyowonは教育コンテンツと端末をセットにして囲い込みを始めたわけだ。





Kyowonの「MyPad」Webサイト。同タブレットを使わないとコンテンツを利用できないようにし始めている



 同社は、MyPadを使えば、効率良く学習したものなどが管理できるようになり、誰かに教えてもらうより、子どもが自ら探求して楽しく勉強するようになることを期待しているという。


 教育用タブレットPCといえば、キャリアのLGU+も「EduTAB」という7型のAndroid端末を2010年12月に発売している。教育アプリ、電子辞書、ネット検索機能がついたシンプルな端末で、大学受験勉強には欠かせない教育放送(EBS)の講座をWi-Fi経由で簡単にダウンロードして受講できる。スマートフォンとタブレットPCが登場する前の2000年代、高校生の受験勉強必需品であった小型の動画再生端末「PMP(ポータブルマルチメディアプレイヤー)」を販売して大ヒットしたi-StationがEduTABを製造した。


 EduTABは、安い費用で有名講師の講座をいつでもどこでも受講できるようにする、低所得層や過疎地に住む子どもたちにも良質な教育を提供して教育格差を改善する、という目的で始まったという経緯がある。



キャリアのKTは幼児から小学生向けのロボットと教育コンテンツを販売している。「キーボット2」という名前の動き回るロボットは、Android OSに7型ワイド画面と最大60型プロジェクター、500万画素カメラ、音声認識、通話、Wi-Fi、遠隔操作によるホームモニタリングなどの機能が付く。キーボット2はMP3プレーヤーで有名なアイリバーが製造している。



KTが販売する教育ロボット「キーボット2」。キーボット2と教育コンテンツをセットにしてサービスしている




 コンテンツはロボット経由でダウンロード販売する。幼児向けには韓国語や英語、数学の概念を覚えられる学習アニメとゲームが8300件、小学生向けには学校の勉強をサポートしてくれるデジタル参考書、科目別学習講座動画などが3400件登録されている。


 ロボットの頭の後ろにはプロジェクターが付いていて、学習コンテンツを60型の大画面で見られるのも好評である。幼児向け英語ゲームの場合、カメラが子どもの姿を撮影して合成し、ゲームの世界の中に子どもがいるような画面に切り替わる。画面を見ながら体を動かして歌で流れる英単語を手で捕まえるゲームなので、楽しんで体を動かしながら英語も覚えられる一石二鳥を狙った。


 コンテンツを利用できるほかに、子どもが保護者に電話をかけられる、遠隔操作で保護者が外出中も子どもの様子をモニタリングできるといった機能がある。KTは低所得層、過疎地の子どもには安い費用でキーボット2を利用できるように支援する。LGU+と同じく、教育格差を改善するためである。


 プリンターと教育コンテンツがセットになったものもある。学習ドリルで有名なアイテンプルは、米ヒューレット・パッカードと提携して、プリンターとプリンター用アプリケーション「AnySchool」の1年利用料をセット販売している。プリンターにWi-Fiとタッチスクリーンが付いていて、パソコンを経由せずプリンターからコンテンツを選択して、オリジナルのドリルを印刷できるのが特徴だ。


 決まった時間に国語、英語、数学のドリルを印刷するようにも設定できる。ドリルだけでなく、塗り絵、紙工作用の用紙もプリントで作れる。アイテンプルによると、オリジナルのドリルをお手製で作り、直接子どもを教えられると喜ぶお母さんが多いという。


 韓国では毎週のように新しいスマートラーニングサービスが登場する。スマートフォンのCMすら、優等生はスマホを使って効率よく勉強しているといった内容が多い。日本ではまだスマートラーニングという言葉に馴染みがないが、韓国ではコンテンツだけでなく端末まで自前にするほど、スマートラーニング分野の競争は激しい。


 日本でもデジタル教科書導入に向けて教育の情報化が進められているだけに、韓国のスマートラーニングサービスの試行錯誤を参考にして、いいところだけ取り入れてもらいたい。




趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年6月8日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120608/1051720/

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