第07回:高句麗が発祥の韓国代表料理「シルトク」


予習してさらにハマる太王四神記

【第七回】

高句麗が発祥の韓国代表料理「シルトク」






高句麗で発展した蒸し器「シル」



ヨン様ファンにはなじみ深い、ロッテ百貨店 本店14階にある韓国伝統デザートカフェ「Tea Loft」。ガラスのドーム天井で、夕暮れや雨の日にはとってもステキなここの名物メニューは「一人前シルトク」です。注文してから蒸し始めるから、熱々ほかほか。粒々の小豆がたっぷりのったパッシルトク(「パッ」は小豆、「トック」は餅という意味)と、かぼちゃが入ったホバッシルトク(「ホバッ」はかぼちゃという意味)。ままごとのようなかわいい土器に入った伝統餅だけれど、初めて見たときはこの素晴らしいアイデアに感嘆せずにはいられませんでした。このまま10倍ほどの大きさにすると、韓国のお餅の基本、お祝い事がある日に台所でお母さんが大きな「シル」を取り出してはお米の粉に小豆や栗、かぼちゃなどを入れて蒸して作ってくれた「シルトク」になります。


このシルトクのシルは青銅器時代から韓国で使われていた調理道具のことで、簡単に言うと下に小さな穴がいくつか開いて取っ手が二つついた、土で作った蒸し器です。直接火にかけず、下に鍋をおいてお湯を沸かすと、シルの下の穴から湯気が入り中のものを蒸してくれるもので、昔はこの中にお米や穀物の粉を入れて蒸し、ご飯の代わりに食べたといいます。穴から穀物の粉がこぼれないよう、穴の上に大根、かぼちゃなどの野菜を薄くスライスしたものや山菜を敷きました。このシルが日常的に使われ始めたのが三国時代初期。その中でも、高句麗でその使い方が発展したと言われています。





  • デザートカフェ「Tea Loft」のパッシルトク。












熱々の食べ物が生み出した匙と箸の文化



高句麗時代の主食は米、豆、麦、粟などの穀物で、後期になるにつれて高級穀物である米の消費が増えました。高句麗初期には、お米よりは粟が主食でした。粟はお米に比べ粘り気がないため調理が難しく、食べやすいよう他の穀物と一緒に粉にして土器に水を入れて過熱し、お粥のようにして食べました。後期なるにつれ湯気で蒸して餅のようにして食べるようになり、鉄の鍋で穀物を炊いて食べる方式に変わりました。蒸して食べるという方式はそれ以前からもありましたが、高句麗時代からシルと鉄鍋の両方を利用してご飯や餅、お粥など好きなものを作って食べるようになったということです。3世紀から6世紀にかけて、高句麗は民の豊かな生活を得るため、お米の産地で有名な漢江(ハンガン)から南の忠清道(チュンチョンド)までをも高句麗の領土にします。そのため、他の国に比べ早い時期からお米を主食にしていたようです。


高句麗の古墳には鍋の上にシルが置いてある台所の壁画があり、発掘された高句麗の遺物の中にもシルがあります。韓国は昔からシルを使って作る熱々の食べ物が多かったので、東南アジアのように手で食べるよりスッカラッとジョッカラッ(スプーンと箸)を使って食べる文化が発達しました。


今ではシルトクも家で作らず街のお餅ショップで注文するか、100g単位で測り売りしているものを買って来ますが、お祝いには欠かせません。シルトクも色んな種類があって、どんなお祝いなのかによって違うシルトクを作ります。





  • 高句麗時代の壁画に描かれた「シル」。












お祝い事に欠かせない「シルトク」



特に結婚式前の結納の日には、このシルトクは重要な意味を持ちます。韓国では結納を「ハムが入る日」と呼びます。これは大きな桐の箱、または旅行用トランクに、新郎側からの贈り物と新郎の父から新婦の父へ婚礼を願う内容を書いた婚書紙やお祝いの手紙を入れて新郎と友達が新婦の家に騒がしくやってくる日で、この贈り物を入れる箱を「ハム」と呼ぶのです。それが家に到着すると、まずシルに入ったままのシルトクの上に赤いボジャギ(風呂敷)を敷いて、その上にハムを載せて礼をし、それからハムを開けて家族みんなで祝います。新婦はシルトクの上にある栗やなつめを食べ、それからシルトクを切って近所にも配ります。栗となつめは、「子宝に恵まれますように」という願いを込めて食べるのです。


引越した日や新しくお店をオープンする日は、小豆シルトクを近所に配ります。赤い小豆が魔よけになるため、悪い気運を消してくれると言い伝えられているからです。韓国では、餅はみんなで一緒に食べるものなので、挨拶にぴったりのお土産でもあります。また、子供が生まれて100日目を迎えると、お米だけで作った白くてほんのり甘いシルトクであるペクソルギを配ります。ペクは「白い」という意味と、同時に「百」という意味もあるので、子供が元気に百寿するようにという家族の願いが込められたお祝いの食べ物です。


最近は忙しい朝、パンの代わりにトックを食べた方が腹持ちも長くカロリー少な目で健康にもよいというWELL-BEINGブームから、淡白なシルトクの人気に再び火がつきました。大量に買って冷凍庫に入れておけば、朝にレンジでチンするだけなので便利ですよね。最近は「Tea Loft」の成功に刺激されてか、トックカフェといって、餅を中心に伝統飲料やデザートを出すカフェが仁寺洞(インサドン)清譚洞(チョンダムドン)を中心に増えています。


また、餅で作るトックケーキも人気が高く、子供のお誕生日にシルトクの具を果物にしたり、生クリームで飾ったトックケーキでパーティーを開くお母さん達も増えています。高句麗から始まったお祝いの日にシルトクを作って食べる習慣は、今でもしっかり韓国人の日常生活に根付いています。韓国にいらしたときにはぜひシルトクの味を確かめてみてください。


韓国のドラマは食事の場面が多いことでもよく知られてますが、『太王四神記』ではどういう料理や食事シーンが登場するんでしょうか。ドラマのストーリー以外でもチェックしておきたいところがいっぱいですね。

   – BY  趙章恩

Original column
http://ni-korea.jp/entertainment/essay/index.php?id=07

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