第10回:『太王四神記』の紋章になった「三足烏」の秘密


予習してさらにハマる太王四神記

【第十回】

『太王四神記』の紋章になった「三足烏」の秘密






太陽に住む神聖な黒い鳥



済州島(チェジュド)の猫山峰(ミョサンボン)観光地区にあるドラマ『太王四神記』野外セットに行くと、ある鳥のマークが紋章として使われているのが目に入ります。この鳥は高句麗を象徴し、太陽の中に住んでいると言われる三足烏(サムジョッオ)です。もちろんデザインはそれぞれ違いますが、『朱蒙(チュモン)』や『淵蓋蘇文(ヨンゲソムン)』など、高句麗を背景にしたドラマには必ず登場する紋章です。
どうして三足烏が高句麗の象徴になったのか? それは1500年ほど前に建てられた高句麗時代の古墳壁画に、必ずといっていいほど三足烏が登場するからです。当時、高句麗の2番目の都市だった中国吉林省集安にある古墳の天井を見ると、右には太陽を象徴する三足烏が描かれた円が、左には月の神であるヒキガエルが描かれた円があり、東には龍、西には蛇、北には星が描かれています。太陽と月の間には、菩提樹が風に揺れているような絵も描かれています。このほかにも、高句麗の遺跡や遺物には、この三足烏が頻繁に登場します。


遥か古代から東アジアでは、この太陽に住む神聖な黒い鳥が神のメッセンジャーとして広く崇拝されていたので、これは高句麗だけの文化とは言い切れません。しかし、高句麗の三足烏は、ほかの国の三足烏とは違う特徴を持っているんです。三足烏は足が三本あるカラスだとよくいわれますが、高句麗の三足烏はカラスではなく、頭に冠がついた黒い鳥で、龍を餌にするほど強くたくましい最強の鳥なのです。高句麗人は、「我々は神に選ばれた民族だ」という自負から、この太陽の鳥を大事にしていたのではないでしょうか。





  • 高句麗時代の古墳壁画に描かれた黒い鳥「三足烏」(中央の円の中)。












高句麗の「三足烏」が日本に?



日本サッカー協会の紋章にも三本足のカラス「八咫烏(やたがらす)」が使われているため、「高句麗の三足烏と同じ鳥なのではないか?」、「三足烏は日本の象徴なのではないか?」と疑う意見もありますが、よく見ると日本の八咫烏は頭に冠がありません。日本の三足烏はカラス、高句麗の三足烏は想像の中の黒い鳥なので違うという説もあれば、高句麗を建国した朱蒙(チュモン)の息子、沸流(ビリュ)と温祚(オンジョ)が建てた国が百済なので、高句麗の象徴が当時百済と交流が活発だった日本にも伝わったという説もあります(ちなみにドラマ『朱蒙』の中では、沸流と温祚は朱蒙の子ではないという設定です)。一方では、古代東アジアで広く太陽を崇拝していたので、日本や中国でも同じく三足烏の伝説が残っているという説もあります。


1363年に韓半島の歴史記録をまとめた『ダングンセギ』には、「紀元前1878年、宮廷の庭に黒い鳥が飛んできたが、その翼の長さは三尺もあった」という記録があります。韓民族は、紀元前数千年も前から生命の象徴である太陽と月を崇拝していました。高句麗は、太陽の中に住む神鳥として、三足烏という想像の鳥を民族のシンボルにしたのかもしれません。





「三足烏」は天と地と人の象徴



高句麗の古墳壁画に頻繁に登場する三足烏。その冠は数字の1と水や太古の生命を、翼は数字の2と和合、均衡、夫婦、温かみを、3本の足は数字の3と自然の生命、循環、夫婦の間で生まれた子供、完成、力を象徴します。3は天と地と人を表わす天の数字でもあります。


一部には、三足烏は中国の象徴で、高句麗がそれを真似たという主張もありますが、高句麗は中国の唐と対立し何十回も戦を繰り返していただけに、敵のものを真似て自分の象徴にするのは可能性の低い説かもしれません。


「高句麗の黒い鳥はカラスだ」「いや、カラスではなく想像上の鳥だ」と意見は分かれるところですが、カラスに関しては、高句麗と今の韓国で認識が違うところがあります。韓国人はカラスは凶鳥として嫌い、都会では滅多に見かけることのない鳥となりました。一方、高句麗人は、カラスは死体を食べるので、霊魂を天へ導き来世で生まれ変われるようにしてくれる吉鳥と考えていたのです。高句麗を滅亡させた新羅にとって、高句麗を象徴する黒い鳥を好きになれるはずはなく、統一新羅時代から高麗時代、朝鮮時代と時を経る中で、いつしかカラスは縁起の悪い鳥だと思われるようになり、それが今でも影響を及ぼしているのではないかと推測されています。


『太王四神記』で登場する三足烏の紋章を見ていると、頭に冠がついた足三本の黒い鳥はとても神秘的で威厳に満ちていて、賢く潔かった高句麗人の魂を少しは分けてもらえないかな~と、ボーッとしてしまいます。アクセサリーにしてずっと身につけていたい! と思いませんか? 『太王四神記』公認グッズとして発売されるのが待ち遠しいですね。

  – BY  趙章恩

Original column
http://ni-korea.jp/entertainment/essay/index.php?id=10

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