第18回 韓ドラの新しいジャンルを切り開いた『宮』<その1> 美少年皇太子とお調子者の女子高生が政略結婚 |
2006年1月27日
●お正月はお盆と並び2大憂鬱連休!?
1月29日はいよいよソルナル(お正月)。おじいちゃんの家や宗家(その家の代々長男家系)に集まり、朝早くハンボク(韓服、伝統衣装)着てセベ(両親や親戚にひざまずく礼をしてお年玉をもらう)して、チャレ(お正月とお盆の朝にするご先祖さまの法事)して、トックッ(楕円形にスライスした白いもちを入れたスープ、お雑煮)を食べると、やっと1歳年を取ったことになる。
それから親戚中の家を回り、セベしてお年玉をゲットする儀式が続くので、大人たちは5,000ウォンや1万ウォンの新札と白い封筒をいっぱい用意しないといけない。前年に結婚した叔父や叔母なんて格好のえじき! お年玉支給先が増えたぞ~とセベにやってくる子供たちが後を絶たない。結婚したことでやっと大人と認められるので、お年玉をあげる資格がもらえるんだけど、そんな資格ちっとも嬉しくないわい。
主婦にとって、お正月なんてお盆と並び2大憂鬱連休だ。旦那の実家でこき使われて肉体的に疲れるのは我慢できるけど、兄嫁の自慢話に付き合わされたり、顔も知らない親戚の子供が卒業だからと金銭を要求されたり。また、未だに「法事をしてくれる、家系を継ぐ男の子を絶対産まないといけない」ときっぱり言う姑がうじゃうじゃいるもんだから、精神的にすごく疲れちゃうのよね。お正月連休に海外旅行に行ける人が羨ましい!!!!
●ストレス解消はドラマ『宮』で
左から皇太子の元彼女ミン・ヒョリン(ソン・ジヒョ)、皇太子イ・シン(ジュ・ジフン)、皇太子妃シン・チェギョン(ユン・ウンヘ)、王子イ・ユル(キム・ジョンフン) (c)iMBC(※ 画像はクリックで拡大) |
でも先週なんてびっくり! 夜10時のドラマの時間にいきなり大統領新年演説なんていうのが入って、全チャンネルが一斉に40分も大統領の顔を流しているではないか。チャンネルの選択権というものがない。視聴率が高い時間帯に映像を流したい大統領の気持ちはわかるけどさ~こんなこと日本ではあり得ないと思う。
まあ、落ち着いて『宮』の話に戻るとしよう。不況の漫画市場で唯一60万部も売れた人気漫画が原作で、ドラマ出演は初めてというアイドル歌手とモデルが主人公に起用。この2つの事実だけで1年以上もネットで論争が絶えなかった『宮』がついにヴェールを脱いだ! とすごい盛り上がり。2年間の制作準備を経て9月から撮影を開始し、1月11日初放映の視聴率は16%台とまずまず、ネットの検索順位や掲示板での盛り上がりは熱々。新人ばかり登場するので演技には期待していなかったが、とんでもない。なかなかやるじゃないの!
論争の中心となった主人公の皇太子妃シン・チェギョン役のユン・ウンヘは、セクシー路線のアイドルグループ「ベビーボックス」のメンバーで、1999年に中学3年でデビュー。ぽっちゃり体型なうえ、お笑い番組でバカ力を披露したせいでニックネームは「ソニョジャンサ」(ソニョは少女、ジャンサは力持ちの意味)。そんな彼女が、原作ではのっぽの女子高生チェギョンを演じることになり、原作ファンは「絶対ドラマ観ないから!」と大騒ぎ。そのストレスからか物凄く痩せて、ドラマでは物凄くキレイになっていた。
視聴!<宮(グン)>
『宮』(MBC、毎週水・木夜10時から)を視聴するには、ドラマ視聴ページ(VOD)から。海外VODは300kbpsストリーミング・ダウンロードが1話1,000ウォン。
MBCのインターネットでの視聴方法について詳しくは第3回:無料で楽しむ韓国ドラマ 入門編3<有料でも見たい!MBC>を参照。
MBCのインターネットでの視聴方法について詳しくは第3回:無料で楽しむ韓国ドラマ 入門編3<有料でも見たい!MBC>を参照。
●豪華なセットや衣装も見所
朝鮮時代と変わらない華麗な伝統衣装やドレスも数多く登場するのも見所 (c)iMBC |
「韓国が植民地支配や戦争を経験しない平和な国で」「イギリスや日本のように立憲君主国で皇室が維持されていて」「今では誰も住んでいない景福宮に、国民から尊敬される皇帝と皇后、カッコいい皇太子様が住んでいて」「伝統様式の部屋の中には大型TVや最新のホームネットワークが完備されていて」「チャングムのような厳しい試験をパスした国家公務員の宮女がいて、この時代にもみんなが羨む職場である活気あふれる宮殿が残っていたら」皇族の生活はどんなものだっただろうか、という想像から生まれた『宮』は、宝塚の舞台のような華麗な宮殿と、21世紀の最新設備を備えた高級マンションが合体したような、今時の皇室の部屋を見事に表現していて、ストーリー以外でも楽しめる要素がいっぱいある。
●新たなジャンルのラブコメが人気
2005年から徐々に韓国ドラマの公式――交通事故、記憶喪失、出生の秘密、三角関係、財閥2世、人気がないと突然留学に行ってしまう登場人物、すったもんだの末のハッピーエンドなど――を脱皮した新たなジャンルのラブコメが人気で、『宮』も、高貴な美少年皇太子とお調子ものでおてんば娘の結婚から物語が始まる。しかし、決してシンデレラでもキャンディ・キャンディでもなく「シムチョン(沈清)」だそうだ。
1、2話のセリフに頻繁に登場する、この「シムチョン」についてちょっと解説しよう。シムチョンは昔話に登場する、貧しいが心優しく働きものの孝行娘。お寺に供養米300俵を出してお祈りすると盲目の父の目が見えるようになると聞き、そのお米と引き換えに自ら海のいけにえになると志願し、父のために自分の命を捨てる。だが親孝行な娘に感動した海の王様の竜王様はシムチョンを自分の妻にし、娘を亡くしたものと嘆き悲しむ父を探し出し、海の底にある竜宮で仲良く暮らしました、という物語。
『宮』の主人公シン・チェギョン(ユン・ウンヘ)も、家族のために皇太子との結婚を決意するのだ。
●美少年皇太子とお調子者の女子高生が政略結婚!?
父が友人の保証人になってしまったばかりに銀行から全財産を取り上げられ、いよいよすべてが競売にかけられるそのとき、宮内庁から人がやってくる。
先王と、先王の命を助け親友になったチェギョンのお祖父さんは、皇太子とチェギョンを結婚させようと約束し、その証拠に指輪を取り交わしていた。しかしチェギョンの家では「お祖父さんはボケているのよ」と誰もその話を信じていなかった。
だが、それが本当だとわかったとき父は、「娘が皇太子妃になれば家は競売にかけられなくて済む」と考えるが、「皇太子妃になったら、まだ高校生の娘に自由に会うこともできなくなる」と葛藤する。そんなときチェギョンは決意する。「私はシムチョン!結婚するよ。でもこれは私の選択だから心配しないで」。
一方皇太子イ・シン(ジュ・ジフン)には好きな女性がいた。同級生でチェギョンとは比べものにならない優雅な美少女で、バレリーナを夢見るミン・ヒョリン(ソン・ジヒョ)。高校を卒業したら結婚しようとプロポーズまでしていた。
皇太子妃の部屋にはアンティーク家具やかわいい小物がいっぱい (c)iMBC |
最愛の女性を一生宮殿の中に閉じ込めておきたくはないと考えた皇太子は、「おっちょこちょいのチェギョンが皇太子妃になれば皇帝と皇后は毎日心配事が絶えないだろう。これは仕返しになる」と考え結婚することに。ヒョリンは傷つきバレエのコンクールに専念する。
チェギョンは学校にも行けず宮殿で妃勉強。何とか礼儀や宮廷用語を学び結婚式の準備も整う。強気に皇太子妃になるとは言ったものの家に帰りたい、友達にも会いたいと心細くなるいっぽう。しかし、徹底的にチェギョンを無視する皇太子に怒り、自分も負けじと皇太子を「シン君!」と呼び捨てにし、相手にしない。
10キロを超えるかつらに皇族だけが着られる見事な伝統衣装に身を包み、結婚の儀式とソウル市内のパレードまで無事済ませたその夜、チェギョンは大臣との挨拶の席でおじぎをしたとたん、かつらを大臣の後頭部にポタッと落としてしまう。慌てるが、重くて首が回らない。そんなチェギョンを皇太子は見て見ぬ振り。
また未成年者ということで初夜の代わりに一緒に食事をすることになるが、ここでも「これからよろしく」と泣きそうなチェギョンに対して、皇太子は冷たく「かまってやれないけど同じ年の友達として人生相談ぐらいだったらなんとか」と握手しようと手を差し出す。ついに爆発したチェギョンは皇太子の手を思いっきり噛んでしまう。
●2人の美少年に注目!!
皇太子のイ・シン(ジュ・ジフン)。ドラマに登場する白いテディーベアは主人公たちの心情を代わりに表現してくれる重要な役割をもつ (c)iMBC |
いつも笑顔が素敵で気配り上手なユルは、王子ということを隠しチェギョンのよき相談相手として仲良くなる。チェギョンの孤独な宮殿生活を少しでも癒してあげようと、こっそり皇太子にあれこれアドバイスしたりもする。
一方ヒョリンは、不倫でも構わないと皇太子の周辺から離れない。皇太子もまたヒョリンのことが好きでたまらない。チェギョンはユルのことも気になるが、わがままで自己中でいつも寂しそうな表情をしているのに、公式の場ではとてもおおらかで我慢強い皇太子のことも気になるのよ。この4人の関係はいよいよ本格的に絡んでくる気配なので、今日も家でじっとしてなきゃ!
特にお勧めなのは、皇太子役のジュ・ジフンとユル役のキム・ジョンフン。この2人の美少年に注目してほしい。もううっとりするほどカッコいい!
キム・ジョンフンはUNという男性デュオでデビューし、日本でもファンクラブが結成されているほどの人気者。26歳とは思えない童顔で、高校生役でも違和感ない。包容力オーラ出しまくりで、彼だけはユル役にぴったりと原作ファンも納得のキャスティングだった。
ジュ・ジフンはモデル歴3年目、ドラマ初出演で主人公という大抜擢。すらっと伸びた長い脚、スタイル抜群で何を着ても「皇太子様~」とため息が出てしまうほど。だけど、インタビューでは「モデルの時のくせが抜けなくて場面ごとにロボットみたいにポーズを決めている自分が恥ずかしい。初放送を観た感想は、カラオケで録音した自分の歌声を聞いたみたいに死にたくなるほど恥ずかしい。毎週少しでも演技がよくなったねと言われるようにがんばります」と、はにかんだ笑顔がまたかわいい~。
次回その2では、韓国女性のハートを虜にした『宮』のロケ地や、その後の展開、漫画が原作のドラマシリーズなどをお伝えします。
By-
RBB TODAY : 趙章恩の現地直送「韓ドラ事情」 Link