第22回:離婚してもっと仲良くなるなんてあり得る? ソン・イェジン主演の『恋愛時代』





第22回 離婚してもっと仲良くなるなんてあり得る?

ソン・イェジン主演の『恋愛時代』

2006年4月25日


●韓ドラの制作現場が変わった!?

 今日はとっても天気がよく、どこかに出かけないと何だか損をするような気分になってしまい、行きつけの広い庭があるワインバーに行ってみた。そしたらなんと、ドラマの撮影中ではないか。興味津々で観ていたら何かがちょっと違う。あれ? これ今やっているドラマでもなさそうだし、何だろうと思っていたところ、お店の人によるとこの秋から始まるドラマの撮影だそう。えっ!

 作りながら放映し、視聴者の意見をばんばん聞いてくれるのが韓国ドラマの特徴じゃなかったの? それで早速知り合いの芸能記者に尋ねたところ、韓国の芸能業界では、韓流ブームのお陰でドラマ制作現場が変ったといわれているそうだ。

 台本が撮影当日ぎりぎりにメールで届くせいで、リハーサルどころかセリフを覚える時間すらなかったり、編集が放映時間に間に合わずに、通常だと9時50分から放映されるドラマが10時から始まったり、作りながら放映するなどというスリルから脱皮し、徐々にドラマをゆっくり事前制作する方向へと変わり始めている。

 ヨン様の「太王四神記」もそうだしね。韓流スターがアジアで大物としてもてはやされるようになってから、一週間も徹夜で撮影なんていう過酷な撮影スケジュールは絶対いやだとか、外国のように契約書に1日の撮影時間を明記しろとか、野外撮影でも専用の待機室を用意しろとか、こういう役はいやだとか、こういうセリフは私には言えないなど、細かい条件をきっぱり言う俳優が増えているんだって。韓流ブームのおかげで韓国の俳優達は自分たちの存在価値に目覚めたというか、もっと息の長い俳優になるためには消耗品のようなドラマは撮りたくないっていうのが正直な気持ちでしょうね。

●野沢尚の同名小説をドラマ化した「恋愛時代」







ドンジンとウンホの結婚式、でも二人は何かが理由で離婚することになる
(c)SBS
 製作現場が変わることによって、韓流スター達がどんどんドラマに復帰している。やはり韓流は映画ではなくドラマという事実もあるし、映画以上の待遇を受けるのも事実。その中でもこの春、SBSの「恋愛時代」は映画で大ヒットした演技派俳優二人を主人公にし、かなり味のあるドラマに仕上がっている。

 4月3日に始まったSBSの「恋愛時代」は、フジテレビの「眠れる森」の故・野沢尚の同名小説が原作。「4月の雪」でベッドシーンにチャレンジし大人の魅力を見せたソン・イェジンと、歴代ヒット映画の記録を塗り替えた「王の男」で再び注目されているカム・ウソンが主演。







離婚後もお互いが気になってしょうがない二人
(c)SBS
 離婚してからお互いに惹かれ始めた妙な元夫婦のドンジン(カム・ウソン)とウンホ(ソン・イェジン)を中心に4人の男女の偶然と行き違いを描いた作品。離婚したけどお互いのことがずっと気になって嫉妬もして、でも友達だからといい人を紹介してあげては後悔したりの繰り返しだ。

 ウンホは元水泳選手でスポーツセンターのインストラクター、ドンジンは大型書店のマネージャーという、ドラマの主人公にしては珍しい職業なのも面白い。ドラマの世界でありふれていた財閥2世を追い出し、ごく普通の職業をもつ人が登場するようになったのは新鮮だよね。


●ソン・イェジンの変身ぶりに注目







ちょっと悲しそうな表情と雰囲気が似合いすぎるソン・イェジン
(c)SBS
 特に「夏の香り」以降3年ぶりにドラマに戻ってきたソン・イェジンの変身ぶりに注目! 「4月の雪」と「私の頭の中の消しゴム」で韓流スターの仲間入りを果たし、清純でしなやかな女性らしさが魅力だった彼女が、髪を短くして、さっぱりした性格、正直いって棘のある性格のウンホをとても自然に演じているから観ていて気持ちいい。ソン・イェジンは、「恋愛時代」を「これも愛なの? と何度も考えさせられた作品で、大人の成長ドラマ」と評している。

 「恋愛時代」は離婚して2年目というところから始まる。ところどころにこの二人がどうして離婚したのか過去の回想シーンが入るんだけど、これが面白い。探している本が見つからなくてブックマスターのドンジンにウンホが尋ねたのが出会い。お互い一目惚れし、ドンジンは本の中に「いつかコーヒーでもいかがですか?」と書いたメモを差し込む。それを見つけたウンホは「ちょっと、名前が書いてないからわからないじゃないの。どうなるかわからないから電話番号も書いてよ」と、ぶっきらぼうにデートを承諾するシーンは面白かった。

 ウンホとドンジンが赤ちゃんの部屋を飾りとても幸せそうに見詰め合う場面に、赤ちゃんの超音波写真を取り出しては泣きそうになるウンホが交差し、「何かがあった」という秘密を暗示するシーンも多く、これからどうなるの? と、とても気になる仕掛けが多いのがこのドラマの特徴かもしれない。

●Blogで盛り上がる「名ゼリフ集」

 視聴者の間では「ストーリーよし、演技よし、ただ一つセリフが原作小説の日本語直訳って感じでなじめない」という不満もある。だけど、その独特の感性が漂う日本風のセリフまわしが20代にはとても共感を呼び、BlogやHompy(Blogのような個人のホームページ)に自分なりの「恋愛時代の名ゼリフ集」を掲載する人がとても多くなった。

 「写真を見ると悲しくなる。写真の中の私はとびっきり笑顔で…あの時の私は幸せだったんだなって勘違いしてしまう」、「生きるっていうのはどうせ寂しさに耐えること。誰かが言ったよね。地球に4億の人口がいるということは4億の孤独があるということだって」、「一度愛したことのある人ともう一度やり直すために、燃えるような愛なんてなくてもいいんです。ただ彼のお母さんになったと思えばいいんです。お母さんのような心で彼のだめなところまでかばえばいいんですよ」、「愛とは色んな理由で始まる。思いがけない愛や誤解から生まれる愛、いつ始まったかもわからない愛もある」、「二人ともまだ最後の最後まで行ってないから、底を見てないから未練が残るんだよ」などがBlogで人気の名ゼリフの一部。

 積極的にアプローチしてくるホテルオーナーの御曹司で年下のヒョンジュンを追っ払うためにウンホが言う、「私は本当の愛を経験しているから、それぐらいの感情じゃ足りないのよ」や、ドンジンのウンホに対する未練が残るセリフ「あの時はキレイだったのに、まぶしかったのに。いつまで年老いていく姿を見れるだろうか。いつまで年老いていくのを見せてあげられるだろうか。どうなろうが、幸せにな」などもお気に入り。







セクシーを武器にドンジンに猛アタックするウンホの友達で子持ちのミヨン
(c)SBS
 ウンホもいいけどドンジンもすごく魅力的で、ごく普通の韓国人男性を代表するキャラともいえる。別にカッコつけたりもしないし、お金持ちでもないし、会社の人気投票で下位になると急に部下たちにおごったり、いつも人間関係で悩んでばかり。女性ならだれにでもやさしくするから逆に優柔不断と思われてしまう30代の男性を上手く表現している。また突然思い出したように歯磨きの途中で電話をしては、「私、ドクター・ゴンのことが好きみたい」と告白するウンホの妹でかなり変わったキャラのジホと、出産恐怖症の産婦人科医者ジュンピョのオトボケコンビもいい味を出している。

 これといった悪役もなく、韓国ドラマにつきものの交通事故や記憶喪失、出生の秘密もないけど、時間が経つにつれどんどんファンが増えている「恋愛時代」。愛のためにすべてを捨てる財閥2世なんて笑っちゃうし、複雑な出生の秘密をもったシンデレラ物語なんてもう陳腐だよね、というクールな20~30代の女性に中毒者多し! 「恋愛時代」は思わず「これ、私のことじゃん!」とうなずいてしまう平凡な人々の日常と、恋をちょっとおしゃれに描いているところがいい。すごくいい。

By-
RBB TODAY : 趙章恩の現地直送「韓ドラ事情」  Link

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