第34回:日韓見比べの楽しみ! 韓国版『白い巨塔』魅力炸裂!







第34回
日韓見比べの楽しみ!

韓国版『白い巨塔』魅力炸裂!

2007年2月20日



●お正月は徴兵制のようなもの!?

 2月18日、韓国はそろそろ2度目の本当のお正月を迎える。日本と同じように12月はずっと忘年会、1月はずっと新年会で明け暮れるので、新年を迎えたなぁという感じはするが、1月は元旦1日しか休めないのでお正月という盛り上がりに欠ける。一方、旧暦のお正月は3日間の連休だし、前後して休む人も多いので祝日ムードを満喫できる。テレビでは1月から2月までのお正月が終わるまで新年特集で大騒ぎしているし、お正月が2度あるのもいいなぁと思う。

 お正月になると、また旦那さんの実家にお嫁さんが集まり法事の準備だ。嫌だと思っても避けて通れない儀式なので「これは徴兵制のようなものだ」「旦那を愛すための税金」と思うようにしたらかなり気が楽になった。旦那とも協定を結び、法事の後1週間は、掃除と皿洗いを免除してもらっている。

 韓国では「奥さんには家にいてもらいたい」「奥さんの手料理じゃなきゃ嫌」というような男性は滅多にいない。もちろん、まだ欧米のように育児も家事もきっちり分担する、なんてことにはまだ程遠いけど、「女のくせに」「女だから」というようなことはなくなってきてるなぁ、とつくづく感じる。司法試験や教員試験、国家公務員試験の合格者は女性が圧倒的だ。そのお陰でスーパーウーマンが増えている。

 その結果、仕事も家事も全部完璧にこなさなければ! と思い込みすぎて、女性をいじめる女性が増えてしまった。ドラマにもよく登場するのが、部下の女性社員をいじめる女性役員。「子供が熱を出したくらいで早退だなんて、会社辞めたら?」と嫌みを連発する登場人物が結構いるんだよね。

●男性まで外出を控えるほどハマるドラマが登場

 そんな韓国でついに出ました。女のドロドロがないドラマが。これは韓ドラファンとして義務的に観るべきとしか言いようがない。1月に始まった韓国版『白い巨塔』。なんて面白いの! なんてステキな俳優さんが多いの! 特に声! 主人公達の声がラジオドラマにしてもいいくらい、明確な発音と鳥肌が立つほどの演技力なのだ。このよさは、韓国語ができなくてもわかるはず。ぜひ声にも注目してほしい。

 最初は、日本版に比べて「財前と里見教授の対立が弱すぎる」「里見教授のカリスマがなさすぎ」なんて言われていたが、2月に入ってから医療訴訟問題に話題が移り、韓国版の里見教授であるチェ・ドヨンを演じるイ・ソンギュンと、財前教授であるチャン・ジュンヒョクを演じるキム・ミョンミンの絡みがヒートアップしている。

 私なんてTVの前にどんどん近づいて「かっこいい~ステキ~」と叫んでは旦那にひんしゅくを買っている。韓国では30~50代男性までもが虜になり、「週末の夜は、白い巨塔を見逃したくないから外に出ないことにした」なんて言う人も周りに多い。ドラマの話は、病院をそのまま会社に変えてもおかしくないほど。韓国の会社組織も、出世のため人脈学閥総動員で、水面下での競争がすごいからね。









韓国版・里見教授であるチェ・ドヨンを演じるイ・ソンギュン 韓国版・財前教授であるチャン・ジュンヒョクを演じるキム・ミョンミン

 原作はフジテレビのドラマではなく小説の方なので、日本版ドラマとは若干違う展開もある。日本より2話短い20話完結なので、かなりスピーディーに物語が展開される。

 ケーブルテレビではフジテレビで放映された日本版『白い巨塔』も同時放映しているので、韓国では毎週視聴者掲示板に「見比べ感想」がドバッと掲載され、「日本は女優がみんな40代以上なのに韓国では20代ピチピチ」「日本版はセリフが早すぎてどのシーンでも喧嘩しているように聞こえる」「韓国の大学病院は課長がそんな権力者ではない、日本の物語をそのまま韓国に置き換えただけなので理解しがたい場面も多い」「韓国版で東課長の娘は市民運動家という設定で、やること話すことすべて大袈裟なのが気に入らない」など、
2ch並みの盛り上がり。ドラマのキャプチャーや画像を使って名場面、名セリフ集を投稿する視聴者コーナーも人気で、日本だと肖像権の問題で絶対あり得ないと思ってしまうパロディも多い。


視聴!<白い巨塔>

 『白い巨塔』(MBC、毎週土・日夜9時40分から)を視聴するには、ドラマ視聴ページ(VOD)から。MBCのインターネットでの視聴方法について詳しくは第3回:無料で楽しむ韓国ドラマ 入門編3<有料でも見たい!MBC>を参照。


●手に汗握る手術バトルは必見

 私のお気に入りはというと、チャン・ジュンヒョクに課長になる野望を抱けと言う義父が、「強いものが生き残るのではなく、生き残ったものが強いものなんだ」と言う場面があるのだけど、このセリフだ。そうなのかぁと頷いてしまった。

 原作は小説といっても日本版ドラマの影響がまったくないとは言い切れないだろう。主人公のキム・ミョンミンも「日本版ドラマは22話すべて観たが、観なかった方がよかったのかもと思ったりもした。似たような場面を演じるときは、やっぱり日本の俳優の演技を思い出してしまうので、最大限日本版ドラマは忘れることにした」と映画雑誌とのインタビューで漏らしていた。

 もちろん違うところもある。日本版では出番の少なかった菊川教授だが、韓国版では課長の座を狙うノ・ミングクという名前のジョンホプキンス病院から来た名医という設定でチャ・インピョが演じる。原作にもないノ・ミングクとチャン・ジュンヒョクの共同手術のシーンは見もので、ここでチャン・ジュンヒョクがノ・ミングクのミスを見つけバトルに勝つという設定なのだけど、本当に手に汗を握った。










韓国版・菊川教授であるノ・ミングクを演じるチャ・インピョ 手に汗握る手術バトル

 ノ・ミングクを演じるチャ・インピョは、夫婦揃って寄付やボランティアに積極的な素晴らしい人柄。血縁を何よりも大事にする韓国で、「これ以上子供達を海外へ養子に行かせてはならない」と女の子を養女にした勇気のある人だ。作品選びにも慎重なタイプで、作品さえ良ければ役柄は関係ないと考え、『白い巨塔』でも数話しか登場しないノ・ミングク役を選択したそうだ。

●“韓国ドラマらしくない”ところが魅力!?

 そして、このドラマの人気の秘密は“韓国ドラマらしくない”というところにある。ドロドロの三角関係や複雑な家族関係、姑のいじめや初恋の人との不倫、記憶喪失、そして交通事故もない。韓国人ですら「もうそんなドラマはいらない」と思っているためか、このごろは時代劇や、ロビストや空港安全要員などの特別な職業をもつ人の物語をドラマ化する「専門職ドラマ」傾向が強くなっている。

 『白い巨塔』のもう一つの人気の理由は、出演人の演技の調和が見事だというところ。トップスターが登場しない代わりにみんながいい味を出している。演技がド下手でチャンネルを変えずにはいられないタレントも登場しない。

 日本の小説が原作でヒットしたドラマといえば、SBSの「
恋愛時代」が代表作。ドラマファンの間では伝説の名ドラマとして語り継がれている。日本は距離が近い分、感情的な部分や情緒的な部分もとても近いと思う。

 韓国って中国に近いように思われているけど、中国人は苦手という人も多い。考え方が違うし、アメリカやヨーロッパなど語学研修や旅行先で出会ってすぐ仲良くなるのは韓国人と日本人というケースも多数。最近、韓国男性と日本女性の結婚もすごく増えてるのを実感する。私の周りですでに5組。韓国の男性はいいですよ! 当たり外れがあまりないから安心してお付き合いできると思いますよ。あれ? 話題がそれてしまったけど、結論は、かっこいい俳優さんが大勢出演する日韓『白い巨塔』をぜひ見比べてください、ということです!

By-
RBB TODAY : 趙章恩の現地直送「韓ドラ事情 
Link

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *