第37回:視聴率No.1はやっぱり「ドロドロの不倫劇」 人気女優が大胆悪女に初挑戦!















第37回
視聴率No.1はやっぱり「ドロドロの不倫劇」

人気女優が大胆悪女に初挑戦!


2007年6月7日


 5月5日は子どもの日、8日はオボイ(両親)の日、14日はローズデイ、15日は先生の日とイベントが多い韓国の5月。プレゼント費用でごっそりまとまった出費をしなくてはならない月でもある。

 子供の日と両親の日があるせいか、韓国では「5月は家庭の月」といってテレビでもよく特番が組まれる。両親を亡くした子供の健気な生活や大家族のほのぼの生活などが定番だが、それとは裏腹にこの5月、月曜から日曜まで、朝ドラも1日ドラもミニシリーズ(月火・水木・土日週2回のトレンディードラマ)も金曜ドラマも、どうして不倫ばかりなんだろう。







「私の男の女」今年40歳になったとは思えない抜群のプロポーションでファッションリーダーとして人気のキム・ヒエ。俳優生活25年で初の悪女役に挑戦
(c) SBS
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●女同士で殴る蹴るの壮絶なシーンが人気!?

 視聴率1位のSBS「
私の男の女」は、端正で淑やかな女優の代表格であるキム・ヒエが、親友の夫を奪う悪女に初挑戦ということでも話題だが、女同士で殴る蹴るの壮絶なシーンが続き視聴率が一気に上がった。

 キム・ヒエは、韓国で有名なベンチャー会社の社長と結婚し2児の母でもある。そんな彼女がヌード同然の衣装を着て派手なラブシーンまでこなすという、あまりにも大胆な役に挑む理由は、夫のビジネスが上手くいかないせいではないかという憶測まで生んだ。それぐらい破格的な変身である。

 このドラマでは、夫の浮気に苦しめられる、格闘技が趣味という主人公のお姉さんが裏主役で、妹の夫を奪うキム・ヒエを何度も思いっきり殴りとばす。

お金持ちのマダムなので、妹の憂さ晴らしに何でもしてあげようとするお姉さんに主婦の視線は釘付け! 「こんなお姉さんがいたらいいな~」とストーリーの展開に関係なく、お姉さん役のハ・ユミの人気は急上昇している。









「私の男の女」これです。妹の親友が妹夫と浮気をしたなんて! 怒り狂ったお姉さんの殴り込み、壮絶なバトルシーンから視聴率は一直線に上昇 「私の男の女」専業主婦で無邪気で大人しい妻と色気たっぷりで激しい女医の間で揺れる夫

●ユン・ソナの韓国復帰作もやっぱり不倫

 SBS金曜ドラマでユン・ソナの韓国復帰作でもある「
恋人よ」も、それぞれ結婚した元カップルが隣の家に住みながら不倫をする。

 MBCの「
悪女善女」では、痴呆症の祖母に姑、そして自分の初恋の女性が産んだ娘を実の子以上に大事に育ててくれた奥さんを捨て、その初恋の女性と6年もの浮気の末、家出。果ては、海外へ逃げようとする夫が登場する。






「幸せな女」左には再婚相手のキム・ソクフン、右は元夫のジョン・ギョウン。これは幸せだ。刑事役のキム・ソクフンは久々にいい役にめぐり合えた感じでいい演技を見せている

 KBS「幸せな女」は、夫の成金両親が浮気を公認、「お前のような身分の合わない嫁はいらない」と離婚を催促する始末。妻は夫に知らせず離婚してから出産、いい人と出会い再婚しようとするが、そこに元夫が現れ「やっぱりお前しかいない」とすがりつくというストーリー。どのチャンネルも不倫ドラマだらけだ。

 そうそう、不倫ドラマといえばこれも見逃せない。日本でもケーブルチャンネルで放映されているKBSの「夫婦クリニック-愛と戦争」は、1999年放映開始以来、金曜日の夜の時間帯では13~15%と最高視聴率を維持している。

 離婚を前提に裁判所に来た夫婦の「どうして離婚したいのか」を、夫の立場、妻の立場から再現するドラマだ。韓国ドラマにしてはかなり過激なベッドシーンや暴力シーンもあり議論になったりもしたが、根強い主婦ファンのおかげで長寿番組になっている。“不倫”“経済的な問題”“夫または妻の家族のいびり”の3点セットによる離婚が多い中、これはもしかしてあの人のこと? と思わせるような「財閥の御曹司と女優の離婚」「大学教授のセクハラ騒動」「年下彼の結婚詐欺」といったエピソードも登場するから目が離せない。

●私はもっと幸せになってやる!

 韓国の視聴者は、この頃の不倫ドラマに関して以前とは違う反応を示している。「夫が家庭に戻って来るのがハッピーエンドではない。浮気をした夫を許し家庭に戻らせるというストーリは陳腐すぎる。若くて健康だったときは浮気ばかりして歳をとって病気になったら奥さんに戻ってくるという設定は気にいらない」と。ドラマの内容も「女性」を主人公にしたものが多くなったので、「夫が浮気? あ、そう。それなら私はもっと幸せになってやる!」とばかりに自分の人生をリセットする。

 SBS「私の男の女」では、夫を寝取られた不幸なはずの妻も、通帳と家を慰謝料にもらい、すっきりした表情で離婚する。離婚を知らない夫の両親や知人の集まりには妻の顔をして参加し、不倫の末に男を勝ち取ったはずの親友キム・ヒエが腸を煮えくり返らせるようなこともよくする。それに離婚を待ってましたとばかりに長年自分に想いを寄せていたという男性にも出会う。離婚は不幸の始まりではなく、妻にとっても新しい恋愛の始まり、という展開になっているから面白い。「私の人生から夫を退場させ、私を好きと言ってくれる格好よく経済的余裕もある年下彼と子供と一緒に第2の人生を歩む」、これって夫婦喧嘩の後に一度は夢見る主婦のファンタジーではないだろうか。

 韓国で不倫ドラマが人気なのは、このように糟糠の妻が負け犬ではなく、離婚を契機に悪戦しながらも新しい人生にチャレンジして生まれ変わるという成功ストーリーになっているからだ。

 2000年に大人気だったドラマ「アジュンマ(おばちゃん)」や2004年の「2度目のプロポーズ」はまさにその典型。離婚した専業主婦の妻たちは、子供を養うために手探りでお店や会社を興し、周囲に助けられてとんとん拍子で成功していく。これはまさに現実離れしたファンタジーなのだけど、「私もそうなるかも?」と感情移入してしまうのは仕方ない。

 韓国の離婚率は3組に1組というほど高い。筆者の周りも出戻り組、ドルシン(ドラオンシングル、戻ってきたシングル)が増えているし、子連れ再婚カップルも増えている。だがテレビのドキュメンタリー番組などを観ると、離婚して子供を抱え、養育費ももらえず貧困に苦しむ母子家庭は少なくない。韓国では、離婚後養育費を払うよう強制はできない。物価は日本と変わらないのにパートの時給は1時間400円~700円、失業率の高いこの国で主婦が再就職するのは至難の業だ。なので、やっぱり離婚だけは躊躇する奥さんも多い。

 もっと面白いのは、SBS「私の男の女」では、不倫の末に結ばれた男女が日常を一緒に送ることにより、またお互いに飽きてしまうという内容に差し掛かっていること。女は男とままごとのような新婚生活を楽しみたかった、だが男は「蒸したじゃがいもが何でこんなにおいしくないんだ」「掃除はしないのか」と些細なことも元妻と比較し、肉体的関係以外の日常的な生活は噛み合わなくなる。まさに「ざま~みろ~」とも言うべきシーンが続く。不倫のその後を描いた物語りについては、あまりドラマの素材になることがなかったせいか、かなり新鮮だ。

●いよいよヨン様の出番となるか!?

 韓国のドラマはご存じのとおり、“通事故”“記憶喪失”“異母兄弟の恋”“アメリカ留学”“偶然の再会”という基本的なルールに沿わないと視聴率を取れない。不倫ドラマもこれに負けず「またかよ!!」という場面が多発する。でもストーリは関係ない。セカンドライフじゃないけど第2の自分というか、多くの主婦が自分の喜怒哀楽を投影できるキャラクターがいるドラマはヒットする。ドラマを観ながら、同時に視聴者掲示板に主人公になりきり意見を書き込む廃人の中に主婦が多いのも頷ける。

 ヨン様の「太王四神記」が放映延期となり、その埋め合わせとしてMBCで放送されるドラマ「賢母良妻」もタイトルとは裏腹に不倫物だ。主婦向けファンタジーである不倫ドラマを観ながら本物のファンタジー大作ドラマを待つというのも悪くないね。6月こそはヨン様の出番となることを祈りたい。

By-
RBB TODAY : 趙章恩の現地直送「韓ドラ事情 
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