“第4のキャリア誕生”でお得なスマホ料金プランに大きな期待

.


 韓国最大手ケーブルTV会社「CJハロービジョン」がKTと提携し、2012年1月から本格的にMVNO(mobile virtual network operator、通信業者から無線通信ネットワークを買い、自社ブランドの通信サービスを提供する業者)サービスを始める。既存の移動通信キャリアよりも30~50%ほど料金を安くすると宣伝していることから、移動通信料金の値下げ競争幕開けとなるか、ユーザーの期待は高まっている。


 CJハロービジョンはケーブルTV会社としてインターネット+インターネット電話+ケーブルTVのトリプルサービスを提供していただけに、MVNOで携帯電話サービスを追加し、同じ会社の複数のサービスを利用すると基本料金を割引するバンドル割引でユーザーを集める戦略を追求するという。MVNOとして音声通話だけ提供するのではなく、ショートメッセージやモバイル向け放送サービスとも連携して多様なサービスを繰り広げる計画である。







CJハロービジョンのWebサイト


 さらにCJはグループ会社内に食品製造、オンラインゲーム、映画館、レストラン、インターネットショッピングモールなど幅広いジャンルの会社を持っているため、料金が安いということだけでなくこれらグループ会社同士のシナジー効果を高められる割引制度でMVNOの加入者を増やしていくとしている。


 例えば、スマートフォンユーザーの平均携帯電話利用料金である月4000円ほどを払えば、ケーブルTV・ブロードバンド・インターネット電話・携帯電話音声通話とショートメッセージが全て無料、映画館とレストランも月何回か安く利用できる破格的な料金制度を提供するといった具合である。CJグループの長所を生かした付加価値のある料金制度はユーザーの好みに応じて割引サービスを追加したり外したりするオーダーメイド型になるもよう。


 大企業であるCJのMVNO参加は、韓国では第4の移動通信キャリアが誕生したのと同じほどインパクトがある。CJハロービジョンのケーブルTV加入者は9月末時点で約340万人、携帯電話キャリア3位のLGU+の加入者が約922万人なので、大幅なバンドル割引が順調にいけばCJハロービジョンとLGU+との差が縮まることも考えられる。



 韓国では2010年からMVNOサービスが始まっているが、中小企業ばかりでブランド効果がない、電話料金が安くてもプリペイド式なので不便、使える端末があまりないことから加入者はまだ30万人ほどに過ぎない。料金は安くても端末の選択の余地がないのでMVNOを使いたくないというユーザーも多かったことから、CJハロービジョンでは、KTから提供されるMVNO用の端末のほかに、同社が直接端末を調達するという。


 MVNOの料金は最も安いところで月額基本料4500ウォン(約300円)、通話料は1秒当たり2ウォン(約0.13円)である。月1万ウォン(約666円)で基本料なし、音声通話100分無料という料金制もある。(KTの最も安い料金制は基本料1万2000ウォン(約800円)、通話料1秒1.8ウォン(約0.12円)である)携帯電話加入者が5000万人を超えているので、MVNOはまだまだこれからという段階であった。CJハロービジョンが登場したことで、韓国では一気にMVNO市場が注目されるようになった。


 韓国政府は2008年からキャリアに対して通信料金の値下げを要求してきた。KTとSKテレコムも基本料を1000ウォン(約67円)に、ショートメッセージの料金を1件80バイト30ウォン(約2円)から20ウォン(約1.33円)に値下げしたが、CJは他のキャリアより最大50%引きをうたっている。携帯電話の料金を安くしても、バンドル割引で他のサービスまで安く利用できるようになれば、逆に消費が刺激されグループ全体としては利益になるかもしれない。


 2012年にはKTのWibro(モバイルWiMAX)のネットワークをレンタルして安く再販売するデータ通信専門キャリアも登場すると見られている。キャリア3社の市場シェアが固着して、KTとSKテレコム2社の独占に近い状態になっていることから、新しい事業者が風を吹き込んでくれることをユーザーも願っている。




趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
  [2011年10月21日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20111021/1037885/

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *