最大手の通信キャリアーであるSKテレコムの子会社、SKコミュニケーションズは、相手の携帯電話の番号さえ知っていれば、その人に「品物」をプレゼントできるSMS(ショートメッセージサービス)を利用した「ギフティコン」というサービスを提供している。
ギフティコンとは、「ギフト」と「イモティコン(emoticon、笑ったり泣いたり感情を表現するアイコン)」の造語で、携帯電話へSMSでイモティコンと一緒に送信されるプレゼント引換券を指している。携帯電話の番号さえ知っていれば相手に商品をプレゼントできるというサービスだ。
プレゼントを贈る人は、贈りたいプレゼントを選択し、その引換券をSMSで相手に送信する。プレゼント料金は自分の携帯電話料金に合算請求するかクレジットカードで決済するかを選べる。合算請求だと月に20万ウォン(約2万5000円)まで使える。SKテレコムだけでなく他の通信キャリアーの加入者でも24時間利用できる。
プレゼントをもらう人は、SMSのメッセージを確認し、引換券をダウンロードすると、バーコード付の画面が登場する。その画面を店舗で見せるだけで商品がもらえる。ダウンロードのためのデータ通信料は無料だ。引換券付きのSMSを間違えて削除してしまっても、まだ商品に引き換えていなければ、3回までSMSを再送信してもらえる。引換券の有効期限はSMSを受信してから60日だ。携帯電話が古い機種で引換券をダウンロードできない場合は、SMSで引換券の番号と有効期限を送信してくれる。
ギフティコンはいわゆるモバイル電子商品券の一種だが、500円、1000円という具合に使える金額が決まっているよくある商品券ではなく、「セブンイレブンのおにぎり1個」「スターバックスの、今日のコーヒーのショートサイズとチーズケーキ」といった引換券になる。日本でも、日本テレビとNTTドコモがワンセグのデータ放送波に電子商品引換券を流すマーケティングツールを紹介しているし、高級チョコレートのゴディバもモバイルサイトで配布するクーポンと引き換えにチョコを無料でプレゼントするキャンペーンを実施したことがある。同様に、ギフティコンを韓国の業者がマーケティングのためクーポンのように無料でばらまくために使うこともあるが、それよりも個人間のプレゼント用のツールとして広く使われている。
プレゼントできる商品は2007年末の時点で約70個あまり。スターバックスやセブンイレブン、ハーゲンダッツ、ロッテ製菓、サーティーワンアイスクリーム、バーガーキング、MAXムービー(映画館チケット予約)、エチュード(化粧品)、STCO(衣類)などの商品がある。SKコミュニケーションズによると、「日本円にして600~700円前後のものがよく売れているが、年末にかけてネクタイや化粧品、花束引換券のように高額の商品もかなり売れた。コンビニやお店で買うより20%ほど安く購入できるように設定しているため、自分用にギフティコンを購入するユーザーも増えている」そうだ。
メッセンジャーでチャットしながら「残業ご苦労様、夜食プレゼントします」とピザをギフティコンで送信したり、遠距離恋愛のカップルは「今からコーヒー飲みに行くけど一緒に飲まない?」とコーヒーをギフティコンで送信したりと、使い方は色々だ。出会い系チャットサイトでも気に入った相手にちょっとしたギフティコンを贈ったり、忙しくてなかなかデートできないカップルが離れていながらも思い立った時にプレゼントができるので喜ばれている。宅配は最低でも1日かかってしまうが、ギフティコンなら遠くにいる相手にも今すぐプレゼントを渡せるところが人気の秘訣とも言える。
2006年12月SKコミュニケーションズが運営するポータルサイト「NATE.com」のインスタントメッセンジャー向けサービスとして初めて登場したギフティコンは、「子供だましじゃあるまいし……」と、ビジネスになるかが懐疑的に見られていたりもしていた。実際、2007年1月の売り上げは5000万ウォンに過ぎなかったのだが、プレゼントする側にももらう側にも負担が少ないためか利用が急増。2007年8月の売り上げは6億ウォン(約7500万円)、9月の売り上げは9億5000万ウォン(約1億2000万円)と右肩上がりだ。利用顧客は20代が40%と圧倒的に多く、30代が17%、40代が8%、10代が2%の順となっている。ちなみに、最も売れている商品はスターバックスのコーヒーだそうだ。
ちょっと前までは、メッセンジャーやネットで知り合った友達にはアバターの着せ替え洋服やHOMPY(SNSの一種、個人用ホームページ)をかわいく作るための壁紙・BGM・ポップアップアイコンなどやオンラインゲームでキャラクターを強くさせるためのアイテムといった仮想的なアイテムをプレゼントするのが流行っていた。最近は現実に戻ってきたというか、お茶やおにぎりなど現実社会で楽しめる、ちょっとした商品をプレゼントするのが主流だ。
ギフティコンのキャッチフレーズは「愛してるって、言葉だけじゃ伝わらない」。これって物質万能主義に聞こえて個人的には気に入らないが、ビジネスモデル的には面白い。相手にこれを買ってほしいとねだれる機能もあり、ちょっとした感謝の気持ちや謝りたいことがあると、コミュニケーションの一つとしてギフティコンを贈ると場が和むためか人気を集めている。
お歳暮やお中元という文化は韓国にもあるし、出張帰りにお土産を買ってきたり、義理チョコが“義務チョコ”になっていたりするのは日本と韓国にしかない文化かもしれないが、このようなちょっとしたプレゼントを贈りたいときに、便利に利用できるニッチマーケットとしてギフティコンはこれからも成長が予想されている。
(趙 章恩=ITジャーナリスト)
日経パソコン
2008年1月9日
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20080108/290667/