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この頃朝鮮日報、キョンヒャン新聞など主な新聞に、毎日のようにサムスン電子をはじめ大手IT企業のリストラ話が掲載される。
韓国を代表するサムスングループの場合、金融監督院(政府機関)に届け出た企業現況をみると、2014年末から2015年末の間の1年間で主な系列会社の社員が7961人減った。サムスン電子だけで2484人の減少だ。韓国メディアが金融監督院のデータを元に分析してみると、男性よりは女性、正規職よりは非正規職の方がリストラの対象になっていた。
GALAXYS7の好調で、サムスン電子の営業利益は増えている。その一方で、次々に研究所を廃止し、今すぐ利益につながらない研究開発の予算は減らす、という経営方針は気になる。サムスン電子を追い越す勢いの中国勢は、研究開発に莫大な資金を注ぎ込んでいるからだ。
サムスングループは、海外の現地法人も、韓国本社から派遣する駐在員は置かず、現地採用で費用を節約している。韓国から駐在員を派遣すると給料の他に住宅費、生活費、子供の教育費なども会社が負担しないといけないが、現地採用なら現地の物価に合わせた給料だけ支払えばいいからだ。
韓国では、サムスングループに勤める人を「サムスンマン」と呼び、とても優秀で仕事一筋のタフな人というイメージが強い。入社するのも大変で、大学生を対象にしたサムスン入社準備専門予備校もあるほどだ。厳しい入社競争を終えても数年後はリストラ、となれば仕事に身が入らないのはないだろうか。
実際に、韓国の若者も考えが変わったようだ。いつリストラされるか分からない不安な韓国企業に就職するより、長く勤められ安定した海外企業で就職しようとする若者が増えている。韓国の就職情報サイト「サラムイン」が会員1655人を対象にアンケート調査を行ったところ、78.6%もが海外で就職したいと答えた。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
2016.6.7
-Original column
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/549762/060700093/