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韓国で人気のオンラインゲーム。スマートフォンが普及してから、ゲームもすっかりモバイルが主流になったと思ったら、まだまだ根強い人気を誇るパソコン用オンラインゲームがあった。「League of Legends」、略してLOL(ロール)と呼ばれるゲームである。
米ゲーム会社Riot Games社が2009年に開発したLOLは、世界145カ国の7000万人以上のユーザーが利用している。ゲームサーバーにアクセスする人は1日平均1200万人、同時接続者数は300万人超という数を誇る。ユーザーのゲーム時間を足すと、月1億時間を超えるというからこれまたすごい。
LOLのやり方は、簡単にいうと3対3または5対5で、相手の「Nexus」という本部を先に破壊できるかどうかを競うネットワーク対戦型ゲームである。それぞれ使える技が違う100以上あるチャンピオン(キャラクター)から選択し、知らない人と一緒にチームになって対戦する。
各国の選抜を勝ち抜いた「プロゲーム団」が競う
LOLは韓国でも大人気だ。自分でプレイするのはもちろん、観戦して楽しむオンラインゲームとしても人気がある。「プロゲーマー」が参加する世界大会まである。Riot Gamesが主催する「League of Legends Championship Series」の世界王者を決めるワールドチャンピオンシップの賞金総額はなんと200万ドル、2億円近い。優勝すると100万ドル、2位は25万ドル、3位は15万ドルと上位14チームまで賞金がもらえる。
Riot Gamesによると、2013年9月から10月かけて開催されたワールドチャンピオンシップは、ケーブルテレビ中継とネット中継合わせて全世界1000万人以上が視聴したほど人気だという。米ロサンゼルスにあるStaples Centerで行われた決勝戦には1万1000人の観客が集まった。Staples CenterといえばプロバスケットボールNBAの試合やグラミー賞の授賞式が行われる有名な大型室内体育館である。
チャンピオンシップに参加したのは、各国の選抜大会を勝ち抜いた代表たち。決勝では韓国と中国のプロゲーマーが戦い、韓国のチーム「T1」が優勝した。
韓国大手キャリアが支援する「T1」
LOLチャンピオンシップで優勝した「T1」は、韓国の大手通信事業者(キャリア)であるSKテレコムがサポートする「プロゲーム団」である。世界1000万人が視聴するワールドチャンピオンシップで優勝したことで、SKテレコムが得た広告効果は相当なものである。
T1に所属するプロゲーマーたちは1994~1996年生まれで、ゲーマーを養成するコーチも1984年生まれという、とても若いチームである。SKテレコムは「トレンディー」「若い」「楽しい」というブランドイメージを高めるために、プロゲーム団をサポートしているという。
韓国では大手IT企業の多くがプロ野球の球団、バスケットボールの球団を運営するように、プロゲーム団のスポンサーになっている。League of Legendsの場合、キャリアのSKテレコムとKT、サムスン電子、航空会社のJINAir、大手メディアのCJ、建物管理業者のナジン産業がそれぞれLOLのプロゲーム団を抱えている。
韓国や台湾などアジアで人気のオンラインゲーム対戦は、「eスポーツ」として世界に広がり、スポーツ競技種目の1種ととらえられるほどになった。「シーズン3」ワールドチャンピオンシップではT1が優勝、ナジンが3位、サムスンが9位に入賞し、韓国チームが合計119万5000ドルの賞金を獲得した。韓国のプロゲーマーは元祖eスポーツともいえる、スタークラフトのリーグ戦でも毎回優勝しているが、LOLでも頭角を現している。
米国でも普及する「eスポーツ」
米政府はLOLのチャンピオンシップに参加するプロゲーマーをスポーツ選手として認めている。米国のLOLプロチームに所属することになった韓国人プロゲーマー5人は、スポーツ選手用の「P1-Aビザ」を与えられている。
ここまでLOL市場が大きくなると、プロゲーマーのスポンサーになる企業も増える。米コカ・コーラはLOLワールドチャンピオンシップのスポンサーになった。日本企業では日産自動車が北米のチーム「Curse Gaming」のスポンサーになっている。
LOLは2013年からサムスンがメインスポンサーを務める「World Cyber Games(WCG)」の競技種目になった。WCGとは、2000年から開催されているオンラインゲームプロゲーマーの世界王者を決める「eスポーツ大会」である。2013年10月に世界各国で代表選抜予選が行われ、11月28日に中国・上海に近い江蘇省崑山でWCG2013 Grand Finalが開催される予定だ。WCGには日本代表も参加することになっている。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20131025/1109963/