量販店が消えるのは時間の問題?ネットに負けないこんな戦略で勝負

この不況だけに、手数料は少しでも安くしたいし、できれば払いたくないというのはどの国も同じ。ネットなら簡単にお目当ての品の最安値を検索して注文できるし、オフラインで買うよりも断然安い。日本でも通販の取引額が2008年12月過去最高を記録したというニュースがあったが、韓国では既に数年前からネット販売と量販店の立場が逆転、家電やパソコン、携帯電話など電化製品も値段の安いネットショッピングで済ませてしまうことから、量販店の閉店がどんどん続いている。今や経営が成り立つ量販店なんてあるの?というぐらいの岐路に立たされている。

 電気街として栄えていたソウルの秋葉原「龍山(ヨンサン)」も、量販店や小さいパーツショップが姿を消し、デパートやおしゃれなオフィスビルが立ち並ぶ普通の街になってしまった。駅ビルに残っている電化製品売り場も週末でさえがらんとしていて、たまに来るお客さんも、売り場で実物を見て買うのはネットというから力が抜けてしまう。


 ポイントカードを導入しても、値段を比較するとネットの方が安いので、オフラインの売り場はショールームの役割に転落してしまった。不況に雇用難で物が売れない時代になってきたこともあるが、一生懸命、商品の案内をしても、「ネットの方が安いから」、「ネットでは○○円で売っているのにここは高い」といって帰ってしまう客ばかり続くのが現状である。


 量販店では苦肉の策として、お客さんの目の前でネットの最安値を検索し、同じ値段に値下げするセールをしている。「利益幅がかなり減って店の電気代を払えないほどだけど、何も売れないよりはマシだから」という理由で、ネットとの最安値競争に乗り出している。今まで大手量販店や代理店が、近くのショップよりは安くします、という価格競争はしてきたが、ネットの最安値と同じく値下げするというのは初めてのこと。さらに、小さなお店ではクレジットカードで決済しようとすると、手数料を顧客に負担させることもあったが、それもなくなった。ネットのおかげで透明なやりとりができるようになったともいえる。

龍山電気街にあるお店のほぼ全てがポータルサイトの価格比較コーナーに参加し、安く売っていることを積極的にアピールしている。もちろん、ネットにも出店している。客と一緒にネット最安値を検索して、その値段に合わせて値下げをする戦略は効果を挙げている。龍山で12年近くカメラを販売しているという店長の話だと、「ネットの最安値を確認させて、同じ値段にしますというとほぼ8割の顧客が買ってくれる。利益はすごく減ったけど、販売台数は伸び続けているから薄利多売でいくしかない」という。


 韓国のネットショッピング規模はここ5年間で3.5倍増加し、2008年にはデパートの売上を超えた。IPTVの商用化が始まったことから、テレビとリモコンでショッピングを楽しむ人口が増え、高齢者のネットショッピングも利用が増加するとみられている。簡単に注文できて当日配達されるネットスーパーの利用も珍しいことではなくなった。普通の主婦たちが雨の日やちょっと忙しくて買い物にいけない日に利用する身近な存在となった。


 韓国のネットショッピング市場の特徴はオークションサイトの売上が8割を占めていること。オークションは手数料さえ払えば誰でも出店できることから、トラブルも後を絶たない。その点、量販店やオフラインショップは誰が販売しているのかはっきり見えるので、返品交換といったことにもすぐ対応してもらえる安心感はある。


 ネットショッピングが人気の理由は何よりも値段が安いこと、その次が手軽に注文できることにある。最安値競争で顧客を捕まえることはできても、まずお店までやってこない限りは何も始まらない。どうやったらお店まで来てもらえるのか、そこも課題であろう。


 ネットショッピングの利用が増えたおかげで、宅配便業界は不況を知らないといわれるほど大繁盛している。この際、量販店やめて宅配便の代理店をやった方が儲かるかもね・・・。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年2月4日

-Original column

http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090204/1011929/

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