[日本と韓国の交差点] 長い梅雨のため農産物価格が高騰、食料需給に不安

韓国は日本と同じく四季があって、6月から7月にかけて梅雨がある。四季の楽しみ方も日本と韓国は非常に似ている。春は梅や桜の花見をしたり、子供を連れてイチゴ狩りに行ったりする。夏は海水浴、渓谷で避暑。秋は紅葉狩り。農園に行って、りんご狩りや梨狩りを体験。冬は雪まつりやスキーを楽しむ。1月1日は山に登って日の出を迎える。おいしいものを食べて、農産物をお土産にもらえる日帰りバスツアーが人気なのも同じだ。

 韓国で雨が降ると、スーパーには小麦粉とネギ、サラダ油の特設コーナーができる。雨の日は油っこいブチンゲが食べたくなるのだ。ポータルサイトで「雨」と入力して検索したら「雨の日はブチンゲ」と出てくるほど、韓国人にとって「雨=ブチンゲ」なのだ。雨の日は家に早く帰って、ブチンゲとマッコリで家族団らんという場面が、韓国ドラマでよく登場する。



雨の日はブチンゲ

 ブチンゲは日本ではチジミと呼ばれている、韓国のお好み焼きのようなものである。「チジミ」は釜山地方の方言で、標準語ではジョン、またはブチンゲという。ジョンは一般に、丸くて、ちょっと分厚くて、材料がたくさん入っている。一方のブチンゲはシンプルに具は一つ。形も色々だ。


 ネギが入ったチジミはパジョン(ネギ=パ)。ネギの上にイカや牡蠣をのせたチジミはヘムルパジョン(海鮮物=ヘムル)。その他にも、シンプルに小麦粉をまぶして白菜を焼いたベチュブチンゲ(ベチュ=白菜)。ニラを材料にしたブチュブチンゲ(ブチュ=にら)。ミナリという独特の香りがするナムルが入ったミナリブチンゲ。生のじゃがいもをすりつぶして小麦粉と混ぜて焼いたガムジャジョン(ガムジャ=じゃがいも)。緑豆をすりつぶして作るビンデトッ。5センチほどの長さに揃えたカニカマ・ハム・肉・ネギを楊枝に刺して、小麦粉をふって卵をまぶして焼くサンジョクなどがある。


 ジョンもブチンゲも、種類は数えきれないほどある。地域や家庭ごとに、好きなものを焼くのだから。


 ブチンゲは法事料理でもある。このため年に何度も作る。油っこくて太るから法事の時は食べたくないのに、雨の日になるとすごく食べたくなる。なぜだろう。


 Twitterやポータルサイトの知識検索(ユーザー同士で質問に答えあう)でも、「なぜ雨の日はパジョンやブチンゲが食べたくなるのか」と質問する人が多い。「パジョンを油で焼くときのジュージューする音が雨の音に似ているから食べたくなる」「湿気の多い雨の日は自然と血糖値が落ちるので、小麦粉と油っこいものを体が欲しがる」などなどいろんな説があった。


 ソウル市の明洞や鐘路には昔ながらのパジョンを売る食堂がある。クァンジャン市場にはブチンゲをテイクアウトできる有名な屋台がある。雨の日にソウルを訪れたら、ぜひブチンゲに挑戦していただきたいものだ。



長引く梅雨のため食品価格がウナギ登り

 ところが、梅雨の影響で、ブチンゲの材料になる農水産物の価格が高くなるばかりだ。庶民の食べ物ではなくなってしまうかもしれない。日本の梅雨は今年、晴れた日が多く、例年より早く終わったと聞く。ところが、韓国の梅雨はいつもより長く、異常気象とはこういうことなのかと怖くなるほど大量の雨が降った。降水量は平年の4倍近かったという。まるで東南アジアの雨季を思わせるような激しい雨の降りようだった。
 



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By 趙 章恩

2011年7月22


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110720/221569/

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