電気代が日本の半額以下の韓国・釜山、マイクロソフトが1兆円規模の大型データセンター建設 [2014年2月21日]

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マイクロソフトは韓国南部の釜山地域に10兆ウォン(約1兆円)以上を投資し、2016年に敷地面積33万平方メートルのインターネットデータセンターを建設する計画だという。複数の韓国メディアが報じた。建設に関する指揮は米マイクロソフト本社が、投資はマイクロソフト中国法人が担当するという。

 マイクロソフトが韓国にデータセンターを置くのは、何といっても電気代が安いからだ。2012年時点でのOECD加盟国の産業用電気代比較を見ると(国際エネルギー機構調査)、米国67ドル/MWh、カナダ69.9ドル/MWh、オーストラリア60.9ドル/MWh、日本194.3ドル/MWh、韓国は82.4ドル/MWhだった。韓国の電気代は米・カナダ・オーストラリアよりは高いが、日本の半額以下である。

東南アジア域内でも韓国の電気代は格安

 韓国電力の調査では、韓国の産業用電気代は台湾やマレーシアよりも安かった。さらに、韓国ではソウル首都圏以外の地方都市にあるデータセンターには「知識サービス産業特例料金」を適用し、電気代を3%割引する制度がある。他国にデータセンターを置くより断然費用を節約できる。

 それに釜山地域は韓国第2の大都市なのでIT系の人材を雇いやすい。ソウル首都圏より地価が安いので大規模なデータセンターを建てても地代を抑えられる。

 マイクロソフトはすでに香港とシンガポールにデータセンターを持っている。「中国向けサービスを強化するために、電気代が安く地理的に中国と近く、規制もあまりない韓国にデータセンターを新設するようだ」と韓国メディアは分析している。米Facebookも、電気代の安さからアジア向けサービスを担当するデータセンターを韓国に建設することを検討しているという報道がある。


ソフトバンク進出で脚光浴びる

 釜山という立地は2011年12月ソフトバンクテレコムが韓国の大手通信事業者KTと合弁でデータセンターを置いたことで有名になった(関連記事)。当時のソフトバンクテレコムのプレスリリースには「日本と同等の高い品質のデータセンターサービスを日本の提供価格よりも約50%安価な価格設定で提供する」とある。

 釜山には32万平方メートルの広さで韓国最大規模の「釜山グローバルクラウドデータセンター」もある。2013年1月からLGCNS社が運営していて、7万2000台のサーバーを同時に運用できる。韓国は地震が少ない国ではあるが、万が一のため大地震にも耐えられる免震設備を用意し、津波や洪水被害を受けないように6mの高台の上に建てられた。

 韓国では企業がソウル一極集中しているため、地方都市は公務員か自営業ぐらいしか仕事がない。大規模データセンターが新しくできるとIT設備関連会社もデータセンター周辺にやってくるので、雇用が増える効果も期待される。

五輪開催地付近にもデータセンター誘致計画

 電気代の安さを売りに外資系データセンターを誘致しようと動き出した自治体もある。ソチ五輪の次の2018年平昌(ピョンチャン)五輪を開催する江原道庁(道は日本の県相当)はデータセンターを道内5カ所に建設し、データセンターとIT企業を集めたクラスターを作ると発表した。江原道には経済自由区域があり、法人税を減免してもらえる。江原道の経済自由区域にインターネットデータセンターを作れば、法人税減免と電気代3%追加割引の特典がある。

 江原道は韓国の北東部にありソウルに比べて平均気温が低い。年平均水温が5~6度と低い川もある。この川を冷却装置として活用することで電気代をさらに節約できると宣伝している。

 データセンターのエネルギー効率はPUE(Power Usage Effectiveness)という数値で表すが、これが1に近いほどエネルギー効率が高いとされる。韓国にあるデータセンターの平均PUEは2.3である。江原道は気候条件を生かしてPUEを限りなく1に近づけられるとして、データセンター誘致に積極的だ。釜山もアジアのデータセンターハブを目指しているので、韓国内での誘致競争が激しさを増しそうだ。



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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