韓国、携帯電話鎖国がついに終焉

この3月より、韓国では海外メーカーの携帯電話端末が多数販売されるようになった。韓国が国策として開発した「WIPI」というモバイルインターネットミドルウェアの搭載義務が4月から廃止され、スマートフォンの場合は既にWIPIを搭載しなくても韓国内で販売できるようになった。ついに携帯電話市場の鎖国が解けたのだ。

 カシオと米モトローラに続いて、ノキアと台湾HTC、英ソニーエリクソンも韓国にやってきた。モトローラとソニーエリクソンはテレビCMも頻繁に流している。小栗旬が色んなキャラクターに変身するソニーエリクソンのCMを見て驚いたことがあるが、韓国版CMは地味に端末だけが登場する。


 ソニーエリクソンはソウル市内で記者懇談会を開催し、韓国で販売する「エクスペリアX1」をビジネスマン向けと紹介した。キーパッド付きでインターネットも使いやすく、便利な機能が揃っていて海外出張が多いビジネスマンにぴったりです!と熱烈に説明した。


 しかし、その後、B-BOYが舞台に登場して携帯電話片手に踊ったり、バック転したり。あまりにもビジネスマンを強調するのでシックでゴージャスなイメージでいくのかと思ったら、突然ヒップホップ?何のパフォーマンスかよくわからなかった。でもソニーエリクソンの登場で端末の選択筋がまた一つ増えたことは嬉しい。


 韓国の携帯電話代理店をいくつかヒアリングしてみると、スマートフォン=ビジネスマンでもないらしい。独身の会社員や役員クラスの「ビジネスマン」の人がスマートフォンやハイエンド端末を使っているのはよく見るが、モバイルインターネットの主なユーザー層が高校生~20代なので、自然と最新のハイエンド端末やスマートフォンも高校生や大学生がコアなユーザー層だという。


 子供がほしがるものは何でも買ってあげたい、子供にはいいものを持たせてあげたい親の心理から、ハイエンド端末は子供が使い、半年ほど過ぎて飽きてくると子供はまた別の新しいハイエンド端末に機種変更をし、親は子供のお下がりを使うというのだ。もちろん、子から親への端末引き継ぎは、不景気だから節約のためという側面もあるだろう。


 「値段が高すぎる」と散々文句を言われながらも、韓国で最も売れているのはサムスン電子の携帯電話「Anycall」である。景気を反映してか、ただし、この頃は価格が高いハイエンド機ではなく、既存端末より機能をシンプルにして値段を安くしたタッチフォンで人気を集めている。

サムスン電子やLG電子の最新携帯電話は10代~20代をターゲットにしていて、機能やデザインを面白く紹介している。一時期、人は登場しない端末だけのCMを流したこともあったが、反応がよろしくなかったのか、また元通りのコミカルでおしゃれなCMに戻った。


 サムスン電子が今売り出しているタッチフォンの「HAPTIC POP」のCMは、親指族と呼ばれる10~20代に向けて「人差し指を立てろ!」とアピールしている。日本の漫画を原作にして、台湾・日本に続いてドラマ化された「花より男子」に出演するF4の3人が登場し、人差し指で腕立て伏せをしたり、人差し指だけでピアノを弾いたり、人差し指を強調する。


 韓国ではSMSがメール代わり。携帯電話番号さえ知っていれば、キャリアを跨いでメッセージを送信できる。学校でも地下鉄の中でも家でも、一日中親指を動かしてSMSを送る若い世代を親指族と呼ぶ。これからはタッチ式スマートフォンが主流なので親指ではなく人差し指の出番だという意味である。


 韓国ではパソコンから携帯電話へSMSを送信するサービスがメッセンジャーの目玉機能にもなっているほど、日本のケータイメールと同じく、SMSは生活必需品である。最初の頃、タッチフォンは文字入力が不便でSMSを利用する際にいらいらするという意見もあったが、最近はタッチ方式やグリップ感が改善された。つなげたり外したりできるキーパッドもあるし。


 LG電子は携帯電話端末にかわいいニックネームをつけている。


 17~23歳をターゲットにした「ロリーポップフォン」は新人アイドルグループのデジタルシングルデビュー曲のタイトルでもあり、ミュージックビデオ兼CMとして話題になった。ネット検索キーワード5位内にずっとランクしている。


 ウィジェットでお気に入りメニューをすぐ使えて、タッチフォン向けゲームを無料でダウンロードできる「クッキーフォン」のCMでは、フォーチュンクッキーを半分に折ると中からウィジェットがどんどん出てくるシーンが印象的で、欲張りな人にぴったりの端末であることをアピールしている。


 「アイスクリームフォン」はアイスクリームのように食べたくなるカラーが揃っているという理由で名付けられ、「アイスクリームください」というフレーズが登場する歌を歌うミュージカル風CMが印象的だった。どのCMもハイエンド端末ほど高校生から大学生ぐらいをターゲットにしているという点は共通している。


 海外メーカーの端末もニッチマーケットを狙わず、もっと韓国のコアなユーザー層を攻めてほしい。若い世代をターゲットにすることで、若くなりたい大人までもカバーできるからだ。いつまでも心は20代のまま!ビジネスマン向け・業務環境改善という広告コピーより「アイスクリームフォン」に惹かれるのは私だけだろうか。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年3月26日

-Original column

http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090326/1013631/

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