韓国から見るモバイル展示会「MWC」は“サムスン一色” [2013年3月1日]

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スペインで開催した世界最大のモバイル展示会「Mobile World Congress 2013」は、やっぱりサムスン電子の新製品で盛り上がった。去年もMWCでいろいろな賞を受賞した同社は、今年のMWCのGlobal Mobile Awardsで歴代最多、5つの分野で賞を受賞した。

 2年連続で最高スマートフォン賞(Best Smartphone)と、今年最高の携帯電話メーカー賞(Device Manufacturer of the Year)を受賞した。最高のスマートフォン賞は、GALAXY SIII、GALAXY NoteIIのほかにiPhone 5、ノキアのルミア920、HTCのドロイドDNAも候補に挙がっていた。韓国ではGALAXY III、GALAXY NoteII、iPhone 5の3機種が最も人気がある。


 新しく、2012年の話題商品GALAXYカメラが最高モバイル基盤消費者電子デバイス賞(Best Mobile Enabled Consumer Electronics Device)を、スマートLTEネットワークが最高モバイル装備賞(Best Mobile Infrastructure)とCTO選定モバイル技術賞(Outstanding Overall Mobile Technology The CTO’s choice)を受賞した。


 サムスン電子側は、GALAXYカメラが受賞するとは思ってもいなかったというコメントを発表したほど、うれしそうだった。GALAXYカメラは韓国で初めてキャリアの代理店で販売するデジタルカメラとして話題を集めた。1630万画素CMOSのコンパクト一眼カメラで、3G/LTE/Wi-Fiを経由して写真をWebに保存・共有できる。「コネクティドカメラ」という新しいジャンルの商品であるとサムスンは宣伝していた。


 韓国のマスコミもネットユーザーも、2013年のMWCの目玉は、各メーカーの5型以上の大画面スマートフォンと、サムスン電子の8型タブレットPC「GALAXY Note 8.0」であると見ている。


 





サムスン電子の目玉展示品だった8型タブレットPC「GALAXY Note 8.0」



 電子ペンのSペンが特徴のサムスン電子のGALAXY Noteシリーズは、5.3型と5.5型のスマートフォンと10.1型のタブレットPCがある。これに続けてGALAXY Note 8.0が新しく登場したわけだ。8型と画面が小さくなっただけでなく、重さも10.1型に比べて半分ほどの338gになった。厚さも1mm薄くなった7.95mm。軽くて小さいだけではない。スペックもアップグレードした。CPUは1.4GHzクアッドコアから1.6GHzクアッドコアに、OSはAndroid 4.0から4.1.2になった。


 これはアップルのiPad miniに対抗する端末であり、5型より大きい大画面スマートフォンが普及しているため、タブレットPCの必要性が分からないというユーザーでも、8型は買ってみたいという人が結構いる。サムスン電子もGALAXY Note 8.0は自信作だそうで、2013年からは本格的にタブレットPC市場を攻めて、タブレットPC販売台数でもアップルを追い越す!という意気込みを見せている。


 LG電子はスマートフォンOptimusGを先頭にOptimusシリーズ9つのモデルを展示した。韓国のスマホユーザーの間では、「画質がすごい」と好評だが、韓国よりも欧米でもっと高く評価されているようだ。


 韓国の最大手キャリアのKTとSKテレコムもMWCに参加した。SKテレコムはLTEよりさらに2倍速い150Mbps のLTE Advancedを実際にスマートフォンから利用できるところを世界初公開して、LTE貢献賞を受賞した。2013年下半期からLTE Advancedを商用化するため、MWCの会場でエリクソンと提携を結んだ。
 






キャリアのSKテレコムは今より2倍速い150MbpsのLTE-Advancedを公開



 サムスン電子がスポンサーになってMWCに招待した韓国のブロガー記者の間では、ソニーのXperiaの評判が高かった。タブレットPCの方はWi-Fiモデルが韓国で発売されたが、「スマートフォンもタブレットPCも、とてもスタイリッシュなデザインなので、キャリアから3G・4G対応で発売されればもっと売れるはずなのに残念」という評価だった。


 今回のMWCでは、欧米のキャリアから韓国のキャリアCEOに会いたいとミーティング依頼が殺到したという。韓国が先に経験したモバイルネットワーク「フリーライド」議論が、最近になって欧米でも問題になっているようだ。無料通話アプリによってキャリアのネットワークに負荷がかかり、アプリ会社もネットワーク投資額の一部を負担すべきではないか、という議論である。MWCでは、サムスン電子にスマートTVをサービスしたければネットワーク使用料を払えと訴訟を起こしたKTに学べと、欧米キャリアのCEOが集まりKTのCEOを囲んでパネル討論をした。


 訴訟を経験してから慎重になったのか、KTはキャリアとアプリ会社の関係が悪くなるのはどっちも損だとして、「(大量のトラフィックを発生させる)アプリはこれからもどんどん出てくる。アプリ会社を敵対視するより、世界のキャリアが力を合わせてより良いサービスを作る方がいい」と発言した。


 大げさかもしれないが、韓国のマスコミは、サムスン電子が出展しないとなるとMWCの展示ブースはもう運営されなくなるだろうとまで書いている。サムスン電子もそうだが、大手メーカーはだんだん本当の新製品を展示しなくなったからだ。MWCの目的も、新製品の展示を見てトレンドを探るというより、全世界のモバイル関連企業担当者に会えるビジネスミーティングの場に変わりつつある。グーグルも展示なしでミーティングだけした。


 MWCであっと驚くようなスマートフォン新機種の展示がなかったせいか、韓国では早くも次のイベントを待っている。3月14日に米ニューヨークのアップルストアの近くにあるラジオシティミュージックホールで公開予定のサムスン電子のGALAXY S?のことである。アップルストアの近くで新機種公開というところがいいね! どんなすごいスマートフォンに仕上がっているか楽しみである。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130301/1081874/

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