韓国で「歩きスマホ」原因の交通事故2倍近く増加、危なくてもやめられないのは“中毒”のせい? [2014年1月24日]

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日本では最近、「歩きスマホ」「ながらスマホ」をやめようというキャンペーン広告をテレビで流しているようだ。日本のスマートフォン普及率(
関連記事:スマホ契約者は全体の44.5%で増加の勢いに陰り、MM総研調査)に比べて韓国の普及率は高く、8割を超えている。それだけに、問題も深刻になっている。

 韓国では常にスマートフォンを握りしめていないと不安になる“中毒”状態の人が少なくない。LINE(ライン)やKakao Talk(カカオトーク)などでチャットをしながら歩くのは当たり前。スマートフォンにメッセージが届くと自動車運転中でもつい確認してしまうという人が実に多い。

 満員電車の中でもみんな手にスマートフォンを持っている。スマートフォンの角で背中を押されたり、頭にぶつけられたりして嫌な気分になることもある。さらにはスマートフォンで動画を観ながら歩く人までいる。耳はイヤホンでふさがり目はスマートフォンに釘づけ。これでは事故が起きない方がおかしい。

成人の95.7%が「歩きスマホ」経験

 韓国のあるテレビニュースでは、横断歩道で左右確認せずスマートフォンを見ながら歩いていた人が車とぶつかり飛ばされる映像を流した。「これでも歩きスマホしますか?」と訴えかけた映像は、視聴者に衝撃を与えた。筆者の場合、この映像を見て歩きながらスマートフォンで時間を確認することすら怖くてびくびくするようになったほどだ。

 韓国現代海上火災保険社と韓国交通安全公団が2014年1月公開した報告書によると、携帯電話・スマートフォンの使用が原因の交通事故は2009年437件から2012年848件と1.9倍に増加した。歩行者の「歩きスマホ」による交通事故は午前10時から午後6時の間に発生したケースが58.7%、運転者の「ながらスマホ」による交通事故は午後6時から深夜0時の間に発生したケースが38.6%と最も多かった。

 成人300人を対象にしたアンケート調査では、95.7%が「歩行中にスマートフォンを使ったことが1回以上ある」と答えた。その内21.7%は「歩行中のスマートフォン使用によって事故になりかけたことがある」と答えた。

2.5m前の自転車にしか気づけない

 韓国交通安全公団は最も事故が多い首都圏の横断歩道10カ所で2011年から3年間観察調査を行った。歩行者の4.3%が横断歩道でもスマートフォンを見つめたまま、2.4%は通話しながら横断していて、周りを確認しないまま横断していることが分かった。

 韓国交通安全公団は、歩きながらスマートフォンを使用することがどれほど危険なのかについても実験した。前方から自転車のベルが鳴ると、何も利用していない時は15m前で気付く。一方でスマートフォンを利用しながら歩くと、20代は10メートル前、40代は7.5m前で気付き、50代は2.5mとほぼ目の前に自転車が近づかないと気が付かなかった。また、何もせず歩く時、人間の目の視野角は120度だが、歩きながらスマートフォンをすると視野角は10度まで狭くなった。

 韓国では「歩きスマホ」の規制論が広がっている。米ニュージャージ州やユタ州のように歩きながらスマートフォンでメールを書くと罰金を科したり、日本のNTTドコモのように「歩きスマホ防止機能」を提供したりするべきだという意見もある。

学校や公的機関による“中毒”対策も

 また、歩きながらのスマートフォンをやめられないのは“中毒”であるとして、自治体とキャリアはスマートフォン中毒予防活動に力を入れている。ソウル市内の小学校では、登校・下校時に歩きながらスマートフォンを使わないよう指導。保護者らがボランティアで学校近くの横断歩道に立って指導している。

 ソウル市が運営する「インターネット中毒予防相談センター」では、スマートフォン中毒の予防と治療にも取り組んでいる。相談センターによると、スマートフォン中毒はSNS中毒でもあり、男性よりも女性がかかりやすいという。「SNSでメッセージが届いたらすぐ返事をしないといけない」という強迫観念を持つ人が多い。中毒治療は自分の行動を自覚させることから始めるという。

大手キャリアは“自制用”アプリ提供

 大手通信事業者(キャリア)のSKテレコムは「スマートセルフコーチ」というアプリを無料提供している。スマートフォンとアプリを1日何時間使用したのかをリポートし、何時から何時まではスマートフォンが機能しないように自らセットして、使用を自制できるようにする機能がある。自ら1日何時間スマートフォンを使ったのかを確認し、「使いすぎではないか」と自覚させるのが目的だ。


スマートフォン利用時間を自ら制限できるアプリ「スマートセルフコーチ」。SKテレコムが提供

 今やスマートフォンは仕事の必需品でもあり、会社からの連絡などに歩きながらついつい返事をすることもある。くれぐれも事故にならないよう、横断歩道や駅のホームでの歩きスマホは注意しよう。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20140124/1119023/

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