世界で利用が急増し、つぶやきで情報が駆け巡るミニブログ「Twitter(ツイッター)」現象は韓国でも例外ではない。2月9日午後6時に首都圏で起きた震度3の地震も、テレビやネットのニュースより先にTwitterで情報が広がった。(趙章恩)
地震観測が始まった1978年以降、ソウルを中心とする韓国首都圏で揺れが感知されたのは3度しかない。震度3は初めてのことで、「これは本当に地震なのか?寝ぼけているのか?」といったTwitterの書き込みが約10分間で2000件ほどに達した。その後テレビのニュース速報で地震が報道された。
日本でもニセ首相が登場したように、韓国でもTwitter上にニセ大統領が出現した。韓国企業が運営するウェブサイトは住民登録番号の入力が必要でなりすましは罰金刑になるが、Twitterは海外サービスであるため処罰の対象にならない。ニセ大統領もハプニングとして終わった。ネット実名制の枠外でコミュニケーションができるのもTwitter人気の一つの側面である。
韓国でTwitterが知られるようになったのは、フィギュアスケートのキム・ヨナ選手が使い始めた2009年5月だった。09年1月にはまだ1万人ほどだったユーザー数が、5月には58万人に増えたほどだ。頻繁に更新しているわけではないが、キム・ヨナ選手のフォロワーになるため加入が急増し、10年2月下旬時点で9万3279人のフォロワーが登録されている。ファンたちは彼女が残す「この週末は食べ過ぎてしまった~~」といった日常の一言に熱狂したり大騒ぎしたりしている。
2月24日、バンクーバー冬季五輪フィギュア女子ショートプログラム(SP)の競技中は、芸能人や国会議員までが「演技に感動」「泣いた」といった感想をつぶやき、実況中継のようににぎわった。
■「海外サービスの墓場」で異例の成長
韓国では「Cyworld」というソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)がもっとも人気だったが、04年を境に衰退していった。写真を載せてアバターをドレスアップし、友人に毎日挨拶しなくてはならないといった付き合いに疲れてしまったからだ。
米国などのSNSも流行っていない。韓国は「海外ネットサービスの墓場」と言われるほど、国内ネット企業が強い。GoogleもMyspaceもFacebookも利用が伸びず、Myspaceは結局韓国から撤退した。ところが、Twitterだけは特別で、韓国向けに特別なサービスをしているわけでもないのに、ユーザーは増え続けている。
通信事業者をはじめ企業も広報活動の一つとしてTwitterでユーザーの不満や質問を受け付けている。企業にもTwitterは特別という意識があるようで、通常のコールセンターや窓口では相手にされないような些細なことでも、Twitterに書き込めば素早く対応してくれると好評だ。
選挙管理委員会のサイト画面
韓国では今年6月に地方選挙が行われる。政治家にとってもTwitterはブログと並ぶ必須アイテムで、日ごろからネットユーザーを味方につけようと必死になっている。ところが、選挙管理委員会は、Twitterを選挙の事前活動に利用してはならないとの告知を出した。Twitterは電子メールと同様、書き込んだ内容がフォロワーに送信されるため事前選挙運動に当たるという理由で、「候補者として登録した者であり、選挙運動期間中であれば自由にTwitterに書き込んでフォロワーに送信できるが、フォロワーはそれを他のユーザーに再送信してはならない」という。
選挙管理委員会の判断は電子的手段を使った事前選挙運動全般に当てはまるもので、「Twitterだからダメ」というものではない。しかし、Twitterに熱心な野党議員らは反発し、「Twitter自由法」というものを主張し始めた。野党側は、07年の大統領選で動画投稿サイトを使った選挙運動が規制されたことなども引き合いに出し、「選挙管理委員会は社会の流れを理解していない」と主張している。
韓国でも地方選は投票率が低迷する傾向にある。「若い世代の選挙への関心を高めるのにTwitterは有効」という野党の意見にも一理はあるが、Twitterだけを特別扱いするのは難しい。そもそも「ネットだから特別」「過去にないサービスだから特別」といった考えがもう古いのではないか。表現の自由や選挙の公正といった原点に返って、冷静な議論を望みたい。
– 趙 章恩
NIKKEI NET
インターネット:連載・コラム
[2010年3月2日]
Original Source (NIKKEI NET)
http://it.nikkei.co.jp/internet/column/korea.aspx?n=MMIT13000001032010