米アップルのスマートフォン「iPhone」を通信キャリアのKTが独占していた時代は終わった。iPhone 4SからKTとSKテレコム2社が同時発売できるようになった。iPhone 4Sは2011年11月4日から予約販売が開始され、11月11日、正式に発売された。予約販売の際にはKTだけで開始6時間で10万台を突破した。予約サイトに接続する人数が多すぎてサイトが開かなくなる騒動まであった。
iPhone 4Sの予約販売サイト(左はKT、右はSKテレコム)
iPhone 4Sがスティーブ・ジョブスの「遺作」であるとして興味を持つユーザーも多いが、キャリア2社が同時発売することで、端末価格割引競争に火がついたのも影響している。KTとSKテレコムのどちらがよりiPhone 4Sユーザーをたくさん集められるか、先に国内第1号を確保できるのか、マーケティング競争が激しくなっている。
実はiPhone 4S韓国国内ユーザー第1号は既にSKテレコムから登場している。携帯電話専門ブロガーとして活躍するアーリーアダプター(新製品を誰よりも早く使いたがるユーザー)の男性で、英国に住んでいる友人にiPhone 4Sの端末を買ってDHLで送ってもらい、韓国の正式発売日より1カ月早い2011年10月17日SKテレコムから開通手続きをした。
正式販売されたiPhone 4S第1号もSKテレコムから誕生しそうだ。SKテレコムは少しでも早くiPhone 4Sをユーザーに渡すため、11月10日夜10時からソウルの本社前でiPhone 4S開通記念イベントを行い、夜12時、11日が明けると同時に抽選で選ばれた100人にiPhone 4Sを開通して端末を渡した。しかしキャリアを乗り換える場合は他のキャリアが営業を始める翌日の朝9時に開通となった。開通イベントはアップルとSKテレコムの「Perfect Match」をテーマにした人気歌手のコンサートも行われるそうで、大規模なパーティーを企画している。KTは11日の朝8時から予約加入した順にiPhone 4Sの販売を始めた。
SKテレコムの4S開通記念イベント会場(提供:SKテレコム)
iPhone 4S の端末価格を比較してみると、24カ月約定、毎月5万4000ウォン(約3710円)のスマートフォン料金に加入することを条件に、SKテレコムは16GBの端末を23万800ウォン(約1万5850円)、32GBを36万2800ウォン(約2万4900円)、64GBを49万4800ウォン(約3万4000円)で販売する。KTは同じ条件で16GBが21万2000ウォン(約1万4600円)、32GBが34万4000ウォン(約2万3630円)、64GBが47万6000ウォン(約3万2700円)。
iPhoneが韓国で初めて販売されたのは2009年11月。24カ月の契約期間を終えたKTのiPhoneユーザーがSKテレコムに乗り換える可能性も高い。
移動通信だけでみるとSKテレコムは韓国初の移動通信キャリアで、加入者の51%を占める最大手である。よりよい通話品質を求めてSKテレコムに乗り換えたいとブログやTwitterで公言するユーザーも多かった。
KTは既存iPhoneユーザーをSKテレコムに取られないよう、長期加入者割引制度をアピールしている。キャリアを変えると事務手数料もかかり、長期加入割引もないので2年間の費用をトータルで考えるとKTが安いとしている。KTのiPhone 3GSユーザーが4Sに機種変更した場合は、端末価格を返納すると端末の状態に応じて4万~10万ウォン(約2750~6870円)割引するとしている。
SKテレコムの狙いはやはりKTのiPhoneユーザーである。KTに取られたスマートフォンユーザーを取り戻すため、使っていた端末を返納すると、機器の状態に応じて4万ウォン(約2750円)から最大34万ウォン(約2万3350円)を割引するプロモーションを行なっている。予約販売の先着2名には1年間利用料金を免除するイベントも行った。
iPhoneがキャリア2社から販売されるようになってから、月々のスマートフォン専用料金も1000ウォン(約70円)安くなり、端末価格も中古端末補償制度を利用すれば負担なく買える程度になった。韓国では国をあげて、近距離無線通信規格(NFC)を利用したスマートフォン向けのモバイル決済の普及や、アプリケーション制作を支援しているので、スマートフォンユーザーも、スマートフォンの楽しみ方もさらに増えそうだ。
趙 章恩=ITジャーナリスト)
日経パソコン
[2011年11月11日]
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20111111/1038891/